ばん)” の例文
「やさしい、酒屋さかや小僧こぞうさんが、途方とほうにくれていますから、水先案内みずさきあんないをしてやります。」と、ばんは、かわいらしいげて太陽たいようました。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私はタバコをふかしながら、その芦の茂みからばんの飛び立つのを認めた。鷭という鳥は、私の家でもよく見ることができた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大草原パンパスしぎばんでも撃って、保養してこようではないかと二人で話し合って、御覧のごとく、猟装で銃なぞを携えてまいった次第であります。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ばんも小鴨も、田鷸たしぎも、うづらも色々たんと棲んでゐる世の中だ。何か土産がありさうなものぢやないかと訊くと、菊五郎は子供のやうにつらふくらませて
古池の方からはばんの啼くが、思い出したように聞えて来る。そして空には、碧玉エメロードのような、大きな星が瞬いている。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしそれにしても、あの妙な音は何だろう。それを船頭にただしてみると、船頭は事もなげに、あああれだっか、あれはばんどす、鷭が目をさましよる、と言った。
巨椋池の蓮 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
例の紺の筒袖つつッぽに、しりからすぽんと巻いた前垂まえだれで、雪のしのぎに鳥打帽をかぶったのは、いやしくも料理番が水中の鯉を覗くとは見えない。大きなばんが沼のどじょうねらっている形である。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
凋落てうらくくぐひか、ばんか。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ばんたいらには?」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はタバコをふかしながら、その芦の茂みからばんの飛び立つのを認めた。鷭という鳥は、私の家でもよく見ることができた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
暁近い深い睡眠ねむりに未だ湖水は睡っていた。時々岸のあしの間でバタバタと羽音を立てるのは寝惚ねぼけたばんに違いない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ばんは、くびかたむけてかんがえていましたが、やがて、ながれをまっすぐにあちらへ横切よこぎってゆきました。ながれには、さんらんとして、さざなみがあめれた夕空ゆうぞらしたしょうじました。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大草原パンパスに程近きボカス・デルトーロの村へ招かれたのを幸い、しぎばんでも撃つつもりであったとみえて、これも州当局によって招かれた同じく交換教授として来朝中の海洋学の権威
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
芋莄ずいきなびく様子から、枝豆の実る処、ちと稗蒔ひえまき染みた考えで、深山大沢しんざんだいたくでない処は卑怯ひきょうだけれど、くじらより小鮒こぶなです、白鷺しらさぎうずらばん鶺鴒せきれいみんな我々と知己ちかづきのようで、閑古鳥よりは可懐なつかしい。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
林を縫って細流が蛇行し、板塀いたべいの外へと流れ出ている。板塀の外は「沼」と呼ばれる湿地で、蘆荻ろてきがまが密生してい、冬になるとかもがんしぎばんなどが集まって来る。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
屋敷の構内に古池でもあって、そこにばんでも住んでいるのだろう、その啼声と羽搏きとが聞こえた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おぶってくれて、乗るとぎ出すのを、水にまだ、足を浸したまま、ばんのような姿で立って、腰のふたつげの煙草入たばこいれを抜いて、煙管きせると一所に手に持って、火皿をうつむけにして吹きながら
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このとき、どこからか、青々あおあおとした、うえんで、すがすがしい空気くうきに、羽音はおとをたてる一くろ水鳥みずどりがあったかとおもうと、小川おがわふちりました。それは、くちばしの黄色きいろばんだったのです。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もはや、しぎばんどころではありませぬ。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
さぎかもばん、しぎ、雁などもいるそうである。小鳥にも珍しいのがいると、姐さんが話していた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
息休めの煙草たばこの火と、暗い町のが、うろつく湯気に、ふわふわ消えかかる狐火で、心細く、何処か、自動車、俥宿くるまやどはあるまいかと、また降出ふりだした中を、沼を拾うさぎの次第——古外套はばんですか。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手近でばんの羽音がした。
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
羽色は鶺鴒せきれいとも見えるし、脚の長いところはばんのようでもあり、くちばしは宛然としてさぎに類する……久馬は少年の頃、伊兵衛とともにこの屏風を見るたびにそれを指さしては笑ったものであった。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はあ、鴫も鴨も居ますんですが、おもにばんをお撃ちになります。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)