高慢こうまん)” の例文
こういいおわると、まま母はくるりとむこうをむいて、高慢こうまんちきなふたりのむすめをつれて、さっさといってしまいました。
かれには一体いったいどうしていいのかわからなかったのです。ただ、こう幸福こうふく気持きもちでいっぱいで、けれども、高慢こうまんこころなどはちりほどもおこしませんでした。
晴明せいめいはそれをいて、「ふん。」とこころの中であざわらいました。そしてすこしいたずらをして、高慢こうまんらしい道満どうまんはなをあかせてやりたいとおもいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
美人ではないが、よく見ると、可愛い顔をしている。なによりも、高慢こうまんらしい感じがしないのがいい。眼がいいのだ。メリーの眼は、ほんとにいい。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
わたしはひじょうに高慢こうまんな先生であった。だから生徒せいとの質問に答えることができないのがなさけなかった。しかもかれはけっしてわたしを容赦ようしゃしはしなかった。
諸君、ぼくは高慢こうまんなアメリカ人、伝統でんとうのないアメリカ人、礼儀れいぎも知らず道義も知らず物質万能ぶっしつばんのうのアメリカ人、とこういったなら米国人はどんな気持ちがするだろう。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
お前はくために書いたんだ。えら音楽家おんがくかになりたくて、人にほめられたくて、書いたんだ。お前は高慢こうまんだった、お前はうそつきだった、それでばつをうけた……そこだ。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
めて来なければ芸道の真諦しんたい悟入ごにゅうすることはむずかしい彼女は従来甘やかされて来た他人に求むるところはこくで自分は苦労も屈辱くつじょくも知らなかった誰も彼女の高慢こうまんの鼻を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
父母ちゝはゝそろひていゑうちこもにてもむべきむすめが、人目ひとめつほど才女さいじよなどばるゝは大方おほかたきやんびあがりの、あまやかされのわがまゝの、つゝしみなき高慢こうまんよりなるべく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なんだか高慢こうまんちきな娘だこと」と、母はあくる日そう言った。——「よく考えてみるがいいわ——何を高慢ぶることがあるんだろう——あんなグリゼットみたいな顔をしてさアヴェク・サ・ミーヌ・ド・グリゼット!」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
命をしても此帷幕の隙見すきみをす可く努力せずに居られぬ人をわらうは吾儕われらどん高慢こうまんであろうが、同じ生類しょうるいの進むにも、鳥の道、魚の道、むしの道、またけものの道もあることを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そんならどうしたの? 誰か高慢こうまんチキな意地悪と喧嘩けんかでもしたの。」
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大方高慢こうまんちきな釣道楽で、自分の釣るところをおれに見せびらかすつもりかなんかでさそったに違いない。そんな事で見せびらかされるおれじゃない。まぐろの二匹や三匹釣ったって、びくともするもんか。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くれぐれも高慢こうまんな心を起こさないようにね、ケメトスや
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ふたりがあんまりはらいっぱい食べすぎたせいか、それとも、高慢こうまんちきになってしまったためか、そのへんのところはよくわかりませんけど、とにかく
音楽では、高慢こうまんになってうそをつけば、きっとばちがあたる。音楽は謙遜けんそん誠実せいじつでなくてはならない。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
伯母おば高慢こうまんがほはつく/″\とやなれども、あの高慢こうまんにあの温順すなほなるにてことなくつかへんとする氣苦勞きぐろうおもひやれば、せめてはそばちかくにこゝろぞへをもし、なぐさめにもりてやりたし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ぼくは一座いちざの親方だよ」とわたしは高慢こうまんらしく言った。
と、高慢こうまんかおをしておこたもうげました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
けれども、お姫さまの高慢こうまんちきな気持ちはこれでもまだおさまらず、こんどはこんなことをいいだしました。
「ちょいと、この高慢こうまんちきなおひめさまをごらんよ。ずいぶんおめかししたこと。」
「見てやってよ、あの高慢こうまんちきを。」