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頬笑
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ほほえ
ふりがな文庫
“
頬笑
(
ほほえ
)” の例文
思いながら、彼は奇妙な
頬笑
(
ほほえ
)
ましさと同時に、二人がひどく愛という言葉に
拘泥
(
こうでい
)
しているのに、ちょっと意外なものをかんじていた。
赤い手帖
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
それから——
遠目
(
とおめ
)
にも愛くるしい顔に疑う余地のない
頬笑
(
ほほえ
)
みを浮かべた? が、それは
掛
(
か
)
け
価
(
ね
)
のない一二秒の間の出来ごとである。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ふさわしい愛の巣だ——庸三は
頬笑
(
ほほえ
)
ましげにも感じて、荷物の持ちこまれる露路を入って行った。花屋の勝手口がそこにあった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「大丈夫ですとも」気丈なあやは明るく
頬笑
(
ほほえ
)
んだ、「湯をかぶっただけですもの、そんなにおおげさに
仰
(
おっ
)
しゃらないで下さい」
十八条乙
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こちらは、
莫迦
(
ばか
)
みたいに、
頬笑
(
ほほえ
)
んで、瞰下していると、あなたは、
直
(
す
)
ぐ気づき、上をむいて、にっこりした。
隣
(
となり
)
のお嬢さんも、おなじく見上げる。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
▼ もっと見る
死者はその墓を出でて、母の胎内に眠ってる子供のように、彼らの思い出が
息
(
やす
)
らっている胸を持つ愛人へ、愛する者へ、色
褪
(
あ
)
せた
唇
(
くちびる
)
で
頬笑
(
ほほえ
)
みかける。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして、さもしとやかに一礼すると、愛くるしい
靨
(
えくぼ
)
を見せて、恰好のよいルージュの唇で、
嫣然
(
えんぜん
)
と
頬笑
(
ほほえ
)
むのであった。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妻は
頬笑
(
ほほえ
)
みながら「そんなに侘しいのなら、勤めなきゃいいでしょう」と
労
(
いた
)
わるように云った。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と一郎は笑ったが、ジュリアの方はどうしたのか笑いもせず、夢見るような瞳をジッと一郎の
面
(
おもて
)
の上に
濺
(
そそ
)
いでいたが、暫くしてハッと吾れに帰ったらしく、始めてニッコリと
頬笑
(
ほほえ
)
んだ。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私をカン誘したこと、何となく
頬笑
(
ほほえ
)
まれます。その人の心持が映っていて。私は十年の間五十円ずつ月賦はらって、渋谷の奥に自分の家というようなもの持つ心は、ちっとも湧きません。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
気づいたのか、彼女もおどろいたような顔で、彼に
頬笑
(
ほほえ
)
みを送ってくる。……だが、二人の距離は、一向に縮まることがなかった。
ジャンの新盆
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
ここまでは、五郎さんの運命は
頬笑
(
ほほえ
)
んでいた。彼自身は高等小学校しか出ていないのに、花嫁は東京の女学校を卒業していた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
窓から顔を出している瑠美子が目の前へ来た時、子供は
頬笑
(
ほほえ
)
ましげに叫んだのだったが、庸三は何か冒険に狩り立てられるような不安を
抱
(
いだ
)
いた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
譚はこう言う通訳をした
後
(
のち
)
、もう一度含芳へ話しかけた。が、彼女は
頬笑
(
ほほえ
)
んだきり、子供のようにいやいやをしていた。
湖南の扇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
悪戯
(
いたずら
)
ッ
児
(
こ
)
のように、くるくる動く
黒眼勝
(
くろめがち
)
の、
睫
(
まつげ
)
の長い
瞳
(
ひとみ
)
を、輝かせ、
靨
(
えくぼ
)
をよせて
頬笑
(
ほほえ
)
むと、
袂
(
たもと
)
を
翻
(
ひるが
)
えし
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
煙の中の明智の頭には、今、あの古城のような
赤煉瓦
(
あかれんが
)
の建物が浮かんでいた。その奇妙な建物を背景にして、女のように美しい青年の顔が、二重写しになって
頬笑
(
ほほえ
)
んでいた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「これはやや出来がよかった」別府将軍は、始めて
莞爾
(
にっこり
)
と、
頬笑
(
ほほえ
)
んだ。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「それでもたった一度だけ、側へよって口をきいたことがあるだよ」幸山船長は舵輪に
凭
(
もた
)
れかかり、そっと
頬笑
(
ほほえ
)
んでいるような調子で続けた
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
生来
薄手
(
うすで
)
に出来た顔が一層今日は
窶
(
やつ
)
れたようだった。が、洋一の差し
覗
(
のぞ
)
いた顔へそっと熱のある眼をあけると、ふだんの通りかすかに
頬笑
(
ほほえ
)
んで見せた。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すっかり
支度
(
したく
)
のできた博士が、駄々ッ児の子供をでも見るような、
頬笑
(
ほほえ
)
みをたたえて手術台に寄って行くと、メスの冷たい
閃光
(
せんこう
)
でも感じたらしい葉子は
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
きっと、
誰
(
だれ
)
かを待っているのだ。……なんとなく、彼はすてきな青年が呼吸をきらし、走り寄ってくるさまを空想した。それは、見事な、
頬笑
(
ほほえ
)
ましい「愛」の風景に違いなかった。
待っている女
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
厚味のある
唇
(
くちびる
)
、唇の両脇で二段になった
豊頬
(
ほうきょう
)
、物いいたげにパッチリ開いた
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
、その上に
大様
(
おおよう
)
に
頬笑
(
ほほえ
)
んでいる濃い
眉
(
まゆ
)
、そして何よりも不思議なのは、
羽二重
(
はぶたえ
)
で
紅綿
(
べにわた
)
を包んだ様に
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もしもそうなったらの話ですと云って、安宅は彼女の詰問をそらすように
頬笑
(
ほほえ
)
み、立ちあがってその部屋から出た。
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もし通用さえするならば、たとえば、「彼女の
頬笑
(
ほほえ
)
みは門前雀羅を張るようだった」と形容しても好い
筈
(
はず
)
である。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこには、蘭子の生前の写真が、さまざまのポーズでもって
頬笑
(
ほほえ
)
んでいるのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼女は
頬笑
(
ほほえ
)
みながら、うっとりとしたようにその青年をみつめた。
愛の終り
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
僕はその指環を手にとって見、内側に
雕
(
ほ
)
ってある「
桃子
(
ももこ
)
へ」と云う字に
頬笑
(
ほほえ
)
まない
訣
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かなかった。
彼 第二
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
直衛は
頬笑
(
ほほえ
)
んだ。彫って
磨
(
みが
)
きをかけたような、はっきりした頬笑みかたであった。
改訂御定法
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
不治の病を負ったレオパルディさえ、時には
蒼
(
あお
)
ざめた
薔薇
(
ばら
)
の花に寂しい
頬笑
(
ほほえ
)
みを浮べている。……
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
どこか悪いのではないかとたずねると、そんなことはないと答えてさびしげに
頬笑
(
ほほえ
)
むだけだった。それである夜、そっと妻の部屋へいってみると、加代は灯のかげで、歌稿を裂き捨てていた。
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
三重子はその写真の中に大きいピアノを後ろにしながら、男女三人の子供と一しょにいずれも幸福そうに
頬笑
(
ほほえ
)
んでいる。
容色
(
ようしょく
)
はまだ十年前と大した変りも見えないのであろう。
早春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「持って来るわ」女は
媚
(
こ
)
びた表情で
頬笑
(
ほほえ
)
みかけた、「寝ないでね」
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
僕はふと彼女の鼻に
蓄膿症
(
ちくのうしょう
)
のあることを感じ、何か
頬笑
(
ほほえ
)
まずにはいられなかった。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ふじはべそをかくように
頬笑
(
ほほえ
)
み、うれしそうに枕の上で
頷
(
うなず
)
いた。
醜聞
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
目金
(
めがね
)
屋の店の飾り窓。
近眼鏡
(
きんがんきょう
)
、
遠眼鏡
(
えんがんきょう
)
、
双眼鏡
(
そうがんきょう
)
、
廓大鏡
(
かくだいきょう
)
、
顕微鏡
(
けんびきょう
)
、
塵除
(
ちりよ
)
け
目金
(
めがね
)
などの並んだ中に西洋人の
人形
(
にんぎょう
)
の首が一つ、目金をかけて
頬笑
(
ほほえ
)
んでいる。その窓の前に
佇
(
たたず
)
んだ少年の
後姿
(
うしろすがた
)
。
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
文子は
頬笑
(
ほほえ
)
みながら兄の手を握った。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いずれも宣教師の
哄笑
(
こうしょう
)
の意味をはっきり理解した
頬笑
(
ほほえ
)
みである。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
頬
部首:⾴
15画
笑
常用漢字
小4
部首:⽵
10画
“頬”で始まる語句
頬
頬杖
頬冠
頬張
頬被
頬辺
頬骨
頬白
頬髯
頬桁