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すこぶる
ふりがな文庫
“
頗
(
すこぶる
)” の例文
この両者は其外見
頗
(
すこぶる
)
異る所があるが、その一たび警吏に追跡せらるるや、危難のその身に達することには何の差別もないのであろう。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
且つ大樹の為に昼尚暗く、漸く案内者の跡を慕うのみ。
頗
(
すこぶる
)
困苦するも、先ず無事に亦河を渡り、平坦の原野に出でたるも、また密林あり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
榛軒は門人を待つこと
頗
(
すこぶる
)
厚かつた。曾能子刀自はかう云ふことを記憶してゐる。或日榛軒は塾生の食器の汚れてゐたのを見て妻に謂つた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
技巧
頗
(
すこぶる
)
幼稚なれども、亦
掬
(
きく
)
す可き趣致なしとせず。下巻も扉に「五月中旬鏤刻也」の句あるを除いては、全く上巻と異同なし。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
家隆・定家の作物の如きも、習作集は極めて平凡で、選集には、
頗
(
すこぶる
)
、特色を見せてゐるのは、そこに原因があるのであつた。
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
▼ もっと見る
関翁は過日来
足痛
(
そくつう
)
で
頗
(
すこぶる
)
行歩
(
ぎょうぶ
)
に
悩
(
なや
)
んで居られると云うことをあとで聞いた。それに少しも其様な
容子
(
ようす
)
も見せず、若い者
並
(
なみ
)
に四里の往復は全く恐れ入った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
少女あり。向ひの家なる友と、窓より窓へ
毬
(
まり
)
投げつゝ戲れ居たり。そが一人は
頗
(
すこぶる
)
美しと覺えき。吾友の戀人はもしこれにはあらずや。我は圖らず帽を脱したり。嗚呼、おろかなる振舞せしことよ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
応物
(
おうぶつ
)
は
趣
(
おもむき
)
頗
(
すこぶる
)
合
(
がっ
)
し
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
城下は
岩船郡
(
いはふねこほり
)
に
村
(
むら
)
上(内藤侯五万九千石ヨ)
蒲原
(
かんばら
)
郡に
柴田
(
しばた
)
(溝口侯五万石)
黒川
(
くろかは
)
(柳沢侯一万石陣営)三日市(柳沢弾正侯一万石陣営)三嶋郡に
与板
(
よいた
)
(井伊侯二万石)
刈羽
(
かりは
)
郡に
椎谷
(
しひや
)
(堀侯一万石陣営)古志郡に
長岡
(
ながをか
)
(牧野侯七万四千石ヨ)
頸城
(
くびき
)
郡に
高田
(
たかた
)
(榊原侯十五万石)
糸魚川
(
いといかは
)
(松平日向侯一万石陣営)以上城下の
外
(
ほか
)
頗
(
すこぶる
)
豊饒
(
ぶねう
)
を
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
其の庭園の向ヶ岡の阻崖に面して
頗
(
すこぶる
)
幽邃
(
ゆうすい
)
の趣をなしていたので、娼楼の建物をその儘に之を温泉旅館となして営業をなすものがあった。
上野
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
霞亭は初期は
竹里
(
ちくり
)
に、中期は
任有亭
(
にんいうてい
)
に、後期は
梅陽軒
(
ばいやうけん
)
に居つた。僧月江撰の嵯峨樵歌の跋は此の三期を列記して
頗
(
すこぶる
)
明晰である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
見かけは
頗
(
すこぶる
)
単純な様でも、其効力は、四方八方に及ぶのが、呪詞発想法の特色であつて、此意味に於て、私は祝詞ほど、暗示の豊かな文章はないと思ふ。
神道に現れた民族論理
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
が、その自分も無暗に音楽会を聞いて歩いただけで、鑑賞は元より、了解する事も
頗
(
すこぶる
)
怪しかつた。
先
(
まづ
)
一番よくわかるものは、リストに止めをさしてゐた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
中に尤も東北の方に寄って
一峯
(
いっぽう
)
特立
(
とくりつ
)
頗
(
すこぶる
)
異彩
(
いさい
)
ある山が見える。地理を案ずるに、キトウス山ではあるまいか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
城下は
岩船郡
(
いはふねこほり
)
に
村
(
むら
)
上(内藤侯五万九千石ヨ)
蒲原
(
かんばら
)
郡に
柴田
(
しばた
)
(溝口侯五万石)
黒川
(
くろかは
)
(柳沢侯一万石陣営)三日市(柳沢弾正侯一万石陣営)三嶋郡に
与板
(
よいた
)
(井伊侯二万石)
刈羽
(
かりは
)
郡に
椎谷
(
しひや
)
(堀侯一万石陣営)古志郡に
長岡
(
ながをか
)
(牧野侯七万四千石ヨ)
頸城
(
くびき
)
郡に
高田
(
たかた
)
(榊原侯十五万石)
糸魚川
(
いといかは
)
(松平日向侯一万石陣営)以上城下の
外
(
ほか
)
頗
(
すこぶる
)
豊饒
(
ぶねう
)
を
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
繁殖を目的とせざる繁殖の行為には徴税がない。人生徒事の多きが中に、避姙と読書との二事は、飲酒と喫烟とに比して
頗
(
すこぶる
)
廉価
(
れんか
)
である。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
蘭軒は此年文政十年十二月三日に影抄元板千金翼方に跋して、
偶
(
たま/\
)
書の
銓択
(
せんたく
)
に論及した。其
言
(
こと
)
頗
(
すこぶる
)
傾聴するに堪へたるものがある。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
おなじく感染力を利用するが、結果は
頗
(
すこぶる
)
交錯して現れる所の、今一つ別の原因がある。言語精霊の考へである。
国文学の発生(第二稿)
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
更に又春葉は書籍に
西遊記
(
さいいうき
)
を挙げ、風葉は「あらゆる字引類」を挙げ、紅葉はエンサイクロピデイアを挙ぐ。紅葉の好み、
諸弟子
(
しよでし
)
に比ぶれば、
頗
(
すこぶる
)
西洋かぶれの気味あり。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
十一時
雑煮
(
ぞうに
)
。東京仕入の
種物
(
たねもの
)
沢山で、
頗
(
すこぶる
)
うまい。
長者気
(
ちょうじゃき
)
どりで三碗
代
(
か
)
える。尤も
餅
(
もち
)
は唯三個。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
さうか。震災前のはなしだから君達は知らないだらうが、画家竹久夢二の細君が
頗
(
すこぶる
)
つきの美人で、呉服橋外に絵葉書屋の店を
来訪者
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
エワレツトと早稻田黨との彼と此とを分てるはまことにさることながら、そのかなたを私情なりとし、こなたを公情なりとするは
頗
(
すこぶる
)
妥
(
おだやか
)
ならず。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
此は一見
頗
(
すこぶる
)
結構な事に似て、実は困った話なのである。文学の絶えざる源泉は古典である。だからどんな方法ででも、古典に近づく事は、文学者としてはわるい態度ではない。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
一体大学の純文学科などと云ふものは、
頗
(
すこぶる
)
怪しげな
代物
(
しろもの
)
だよ。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
凡
(
およそ
)
江戸時代の詩文集には
必
(
かならず
)
数人の序跋題辞等が掲げてあるのに、独り枕山の集のみこれを見ないのは
頗
(
すこぶる
)
異例とすべきである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「ロマン」の字に代ふるに「エチユウド」の字を以てせば
頗
(
すこぶる
)
妥
(
おだやか
)
ならむ。さて試驗の結果は事實なり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
さうなり行くべき運命を持ち乍ら、併し
頗
(
すこぶる
)
はかない詞章、表出として長く保持せられて来たに過ぎなかつた。其が次第に固定し、又飛躍して文学芸術らしい姿を整へて行つたのである。
日本文学における一つの象徴
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
孤身
飄然
(
ひょうぜん
)
、異郷にあって更に孤客となるの
怨
(
うらみ
)
なく、到る処の
青山
(
せいざん
)
これ
墳墓地
(
ふんぼのち
)
ともいいたいほど意気
頗
(
すこぶる
)
豪なるところがあったが今その十年の昔と
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今は家業の振わぬ店の隠居で、昔の友にも
往来
(
ゆきき
)
するものが少かった。この頃新堀に後藤進一と云うものがあって、新堀小僧の
綽名
(
あだな
)
を花柳の
巷
(
ちまた
)
に歌われ、
頗
(
すこぶる
)
豪遊に誇っていた。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
其が悪事とは、考へられてゐなかつたのである。我々の国の乏しい文献は、家庭生活に対して
頗
(
すこぶる
)
冷淡であつた。戦国以前に、どうした嫉妬の表示法を主婦たちが持つてゐたかを伝へてはゐぬ。
万葉びとの生活
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
老と病とは人生に
倦
(
う
)
みつかれた卑怯者を徐々に死の門に至らしめる平坦なる道であろう。天地自然の理法は
頗
(
すこぶる
)
妙
(
みょう
)
である。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
万記録は
所謂
(
いはゆる
)
風説が大部分を占めてゐるので、其中から史実を
選
(
えら
)
み出さうとして見ると、獲ものは
頗
(
すこぶる
)
乏しい。
併
(
しか
)
し記事が穴だらけなだけに、私はそれに空想を
刺戟
(
しげき
)
せられた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
頗
(
すこぶる
)
爽快を覚ゆると共にいよいよ老来の嘆あり。たまたま思出るは
家府君
(
かふくん
)
禾原
(
かげん
)
先生の初て老眼鏡を掛けられし頃の事なり。時に一家湘南の
別墅
(
べっしょ
)
豆園
(
とうえん
)
にありき。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それに追ふものの足音が少しも遠ざからない。瀬田は自分の足の早いのに
頗
(
すこぶる
)
満足して、
只
(
たゞ
)
追ふものの足音の同じやうに近く聞えるのを不審に思つてゐる。足音は
急調
(
きふてう
)
に
鼓
(
つゞみ
)
を打つ様に聞える。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
コレヨリ(治ヲ)請フ者日ニ多シ。居ルコト二、三年
頗
(
すこぶる
)
三径ノ資ヲ得タリ。
偶
(
たまたま
)
唐人ガ僧院ノ詩ヲ読ミ
帯雪松枝掛薜蘿
(
ゆきをおぶるのしょうしへいらをかく
)
トイフニ至ツテ
浩然
(
こうぜん
)
トシテ山林ノ志アリ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
東京市は
此
(
かく
)
の如く海と河と堀と
溝
(
みぞ
)
と、
仔細
(
しさい
)
に観察し
来
(
きた
)
れば其等幾種類の水——既ち流れ動く水と
淀
(
よど
)
んで動かぬ死したる水とを有する
頗
(
すこぶる
)
変化に富んだ都会である。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
正宗谷崎二君がわたくしの文を批判する態度は
頗
(
すこぶる
)
寛大であって、ややもすれば称賛に過ぎたところが多い。これは知らず知らず友情の然らしめたためであろう。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかしその時五山が亡友竹渓の遺子に枕山のあることを心づかなかったというのは
頗
(
すこぶる
)
怪しむべき事である。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
東京市はかくの如く海と河と堀と
溝
(
みぞ
)
と、
仔細
(
しさい
)
に観察し
来
(
きた
)
ればそれら幾種類の水——即ち流れ動く水と
淀
(
よど
)
んで動かぬ死したる水とを有する
頗
(
すこぶる
)
変化に富んだ都会である。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
然しこの書は明治十年西南戦争の平定した後凱旋の兵士が除隊の命を待つ間一時谷中辺の寺院に宿泊していた事を記述し、それより根津駒込あたりの街の状況を説くこと
頗
(
すこぶる
)
精細である。
上野
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
十八世紀日本美術の研究に関するゴンクウルの計画は
頗
(
すこぶる
)
浩瀚
(
こうかん
)
なるものなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今よりして後、死の来るまで——それはさほど遠いことではなかろうが——それまでの間継続されそうな文筆生活の前途を望見する時
頗
(
すこぶる
)
途法に暮れながら、わたくしは西行と芭蕉の事を思い浮べる。
冬日の窓
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「おらが国」と向の人が言ったら
此方
(
こっち
)
も「おら」を「わたくし」の代りに使う。
説話
(
はなし
)
は少し余事にわたるが、現代人と交際する時、口語を学ぶことは容易であるが文書の往復になると
頗
(
すこぶる
)
困難を感じる。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「そうですか。風雲
頗
(
すこぶる
)
急ですな。」
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
頗
漢検準1級
部首:⾴
14画
“頗”を含む語句
偏頗
廉頗
偏頗不正
偏頗心
偏頗放縦
偏頗論
御偏頗
頗付
頗棃
頗色
頗長
頗類西洋畫