“韜晦:とうかい” の例文
“韜晦:とうかい”を含む作品の著者(上位)作品数
中里介山5
太宰治4
宮本百合子4
内田魯庵4
吉川英治4
“韜晦:とうかい”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 日本文学2.3%
文学 > 日本文学 > 戯曲1.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
——それに当今の山伏には、氏素姓をかくして身を韜晦とうかいしている人間も多いし、避けたほうが賢明と、考えたのであろう。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳生流は、ここから誕生し、また、石舟斎宗厳の晩年の韜晦とうかいも、この兵法が生んだところの一流の処世術であったのである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「浮世は逆さまでございますとも。そこで大変息苦しい。そこで当分貝十郎式に、韜晦とうかいして恋にでも耽るがよろしい」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かつての時のように、先ず自身の精神を韜晦とうかいして屈従の理論をくみたてるという芸当に身をかわすことは出来ない。
私の信条 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
『浮雲』以後は暫らく韜晦とうかいして文壇との交渉を絶ち、文壇へ乗出す初めに提携した坪内博士とすら遠ざかっていた。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
過去の自分をあわてくさって言葉の上だけで否定し去ることに依って、現在を韜晦とうかいするために、言っているんじゃ、決して無いんだ。
好日 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
古来凡庸の人と評し来りしは必ずあやまりなるべく、北条氏をはばかりて韜晦とうかいせし人か、さらずば大器晩成の人なりしかと覚え候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
というように、世の中から韜晦とうかいして、穴熊のように、この山間の三千石を後生大事に守って出なかった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なあんてね」の韜晦とうかいの一語がひょいと顔を出さなければならぬ事態に立ちいたり、かれ日頃ご自慢の竜頭蛇尾の形にゆがめて置いて筆を投げた
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
見るべし、支那の君子の言葉もいまは、詐欺師の韜晦とうかいの利器として使用されているではないか。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
元々切支丹の韜晦とうかいといふ世渡りの手段に始めた参禅だつたが、之が又、如水の性に合つてゐた。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
元々切支丹の韜晦とうかいといふ世渡りの手段に始めた参禅だつたが、之が又、如水の性に合つてゐた。
黒田如水 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
氏が妙に空虚に張った声の内容には、何か韜晦とうかいする感情が、潜んでいるようにも感ぜられた。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
だがその一面、狂詩にしろ奇行にしろ、どうもその陰に韜晦とうかいする傾きのあるのは見逃せない。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
そういう境地に韜晦とうかいして、白眼はくがんを以て世間を見下すという態度には出でなかった。
だがその一面、狂詩にしろ奇行にしろ、どうもその陰に韜晦とうかいする傾きのあるのは見逃せない。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
「美人か——ありゃ僕の——まあ好いや。」と、思わせぶりな返事に韜晦とうかいしてしまった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また自分で自分を韜晦とうかいせねばならぬほどの経国の器量を備えているというわけではない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
比田礼二は、それももちまえの一つであるらしい一種の自分を韜晦とうかいした口調で云った。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
俊助しゅんすけは今度も微笑のうちに、韜晦とうかいするよりほかはなかった。と、大井は三杯目のウイスキイを前に置いて、金口の煙を相手へ吹きかけながら、
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なぜあなたは自分をそれほどまで韜晦とうかいしておられるのか、それには深いわけがある事と思いますけれども、僕にはどちらの方面から考えても想像がつきません。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
鴎外はむしろそれを好いことにして、いよいよ韜晦とうかいの術をめぐらすのである。
すなわち人を笑わせる職分のために、最も上手に韜晦とうかいする者の技芸であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
古来凡庸ぼんようの人と評しきたりしは必ずあやまりなるべく、北条ほうじょう氏をはばかりて韜晦とうかいせし人かさらずば大器晩成の人なりしかと覚え候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
堀江の女の韜晦とうかい中(昭和四年早春)、寂しさに私は東京生まれのインテリで五郎劇の女優を経て道頓堀の酒場に働いている、その頃の美人女優筑波雪子に似た人と知った。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
韜晦とうかいしたみたいなお喋り出来ない、それはお互の真実ですもの、ねえ。
九度山の幸村ゆきむら、漂泊の豪士後藤基次もとつぐ、徳川家に取って、神経にさわる人間は皆、世のなかを韜晦とうかいして、そして努めて、人目につかない暮しを、法則としている。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賑かな世間から不意に韜晦とうかいして、行動をただいたずらに秘密にして見るだけでも、すでに一種のミステリアスな、ロマンチックな色彩を自分の生活に賦与ふよすることが出来ると思った。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
といって、この、人の形をっている妖鬼ようきは、格別犯跡の隠滅いんめつとか足跡の韜晦とうかいを計って、ことさらに体の発見を遅らしたりして捜査を困難ならしめているわけではない。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ひとり韜晦とうかいしながらせっせと印税を稼いだ。
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
今は全く韜晦とうかいして消息を絶ってしまったが
「船岡はまだ、自分を韜晦とうかいしている、これまで幾たびも問い詰めたが、いちども、自分のはらを割らなかった、そして、周囲に、一ノ関の与党だ、という印象をふりいている」と新左衛門は続けた
韜晦とうかいして来たのが何にもならない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
虚無僧寺史を見ると、それより以前、楠正勝くすのきまさかつが、普化僧ふけそうの群れに入って、宗門を漂泊していたことなどしるしてあるが、これは社会韜晦とうかいで、武者修行ではなかったであろう。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに彼自身、二十余歳まで眼に国語を知らず、郷党きょうとうに笑はれたなどと韜晦とうかいして人に語つたのが、他人の日記にもしるされてあるので、一層この間の彼の文学的内容生活は、他人の不思議さを増させた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
まことさかしらに、かく喋々しますけれども、その喋々しているわたくしの人生のいどころは、笑止にも地下三尺の韜晦とうかいの穴で、解脱の長刀を揮ってみてもそれは現実の戦場へは刃尖の届かない盾裏の蔭弁慶でございます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
が、結局古川の斡旋あっせんで、古川部下の飜訳官として官報局に出仕したのが明治二十二年の夏であって、これから以後の数年は生活の保障に漸く安心して暫らく官途に韜晦とうかいし、文壇からは全く縁を絶って読書に没頭する事が出来た。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
行長はその斬罪の最後の日に到るまで極めて誠実なる切支丹で、秀吉の禁教令後は追放のパードレを自領の天草に保護して布教に当らせ、秀吉と切支丹教徒の中間に立つて斡旋につとめ、自らの切支丹たることをついぞ韜晦とうかいしたことがなかつた。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
アメリカその他の映画が、たとえば恋愛を扱うにしろ、社会の非合理から生じた悲劇を悲劇のまま描いたものか、さもなければナンセンス、ユーモアに韜晦とうかいしているもの足りなさを、今日のソヴェト映画は、どのような内容と技術の新生面を開いているだろうか。
映画の恋愛 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
是等のことは、人間生活を思念することから、即ち、社会のために民衆のために、我等理想のためにということから、はなれて自己満足のために、愛欲の生活のために若くは、自己韜晦とうかいのために、筆を採るというように、作家の意気を失墜するものがあると考えられる。
正に芸術の試煉期 (新字新仮名) / 小川未明(著)
強く、世間のつきあいは、つきあい、自分は自分と、はっきり区別して置いて、ちゃんちゃん気持よく物事に対応して処理して行くほうがいいのか、または、人に悪く言われても、いつでも自分を失わず、韜晦とうかいしないで行くほうがいいのか、どっちがいいのか、わからない。
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
二葉亭は『浮雲』以後全く韜晦とうかいしてこの文壇の気運を白眼冷視し、一時莫逆ばくげきを結んだ逍遥とも音信を絶していたが、丁度その頃より少し以前、逍遥と二葉亭とは偶然私の家で邂逅かいこうして久闊きゅうかつを叙し、それから再び往来するようになっていた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
亡朝の遺臣として声利を謝し聞達を求めず、『天王寺大懺悔てんのうじだいざんげ』一冊を残した外には何の足跡をも残さないで、韜晦とうかいしてついに天涯の一覊客として興津おきつ逆旅げきりょ易簀えきさくしたが、容易にひつを求められない一代の高士であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
作者はこの珍しき因縁の錯綜をもって看者の心を捕えんとし、まず十余年ぶりの師弟の再会をきわめて「柔らかく感動的」な場面で描いたのちに、この満足の感情を破るものとして、敵持つ政右衛門の自己韜晦とうかいや、師匠が実は敵の内縁者であることの現わしを、立てつづけに描いて行く。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
大仰おおぎょうに言えば、ますに芋の子を盛ったようなたかり方だから、七兵衛の韜晦とうかいにはいっそう都合がよいというもので、ちょっと鼻の先で空世辞を言いながら、人の蔭に隠れて、湯の中へ身を沈め、芋こじりの御多分となって、いい気持で面をでていること至極妙です。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また、この口中の歯並みを見給え、細かいけれど、この鋭いことを見給え、こいつでもって、あらゆる魚類を歯にかけるのだ。そうして、こいつは、生意気に、時々水面から口を出して空気を吸って、鯨の真似まねをする、かと思えば、泥の中に深く身を隠して、韜晦とうかいする横着も心得ている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「嘘の天才! よくもそんな、白々しい口がきけるものだ。ハムレットさま、そんな浅墓あさはか韜晦とうかいは、やめて下さい。若い者なら若い者らしく、もっと素直におっしゃったら、いかがです。とても隠し切れるものでは、ありません。わしは、きのう直接、当人から聞いてしまいました。」
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
そんなわけで、剣術本来の第一精神があらぬ方へ韜晦とうかいされた風があり、武芸者達も老年に及んで鋭気が衰えれば家庭的な韜晦もしたくなろうし、剣の用法も次第に形式主義に走って、本来殺伐、あくまで必殺の剣が、何か悟道的な円熟を目的とするかのような変化を見せたのであろうと思われる。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
釣に隠れているところを見ると、一個の風流人でもあり、ひとかどの曲者が世に韜晦とうかいしているようでもあるけれども、事実、この人は風流によって釣をしているのではない、好きだから釣に出るまでで、それに浪人をしていると暇が自由に取れるから、自然、好きな釣の道に出遊する機会が多いというだけのものです。
いや、もう一歩つつこんで考へれば、処女の身にやどる巫呪ふじゅの力にたいする信仰が、まだほとんど上代のままの生き生きした姿を保つてゐるのを奇貨きかとして、その信仰のかげにできるだけわが身を韜晦とうかいしてみよう、——といふぐらゐの気持は、案外この才人の胸裡きょうりにうごいてゐたかも知れないのだ。
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
それをするには巨人が韜晦とうかいして隠れるよりほかはありません……ところが日蓮においては、それが反対で、巨人自身があくまで戦闘的に出でたのですからね、たまりません……しかし、この巨人は、秀吉のように、家康のように、武力を持っているわけでもなんでもなく、前に申す通り旃陀羅せんだらの子ですからな、ほんとうに素裸すっぱだかです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
——いわばこの石の舟は、洪水の濁流に、ずる韜晦とうかいして来たのじゃ。かくせねば、とうに柳生家そのものは、水泡の如く、亡び去っていたかもしれぬ。……いや七百年来のわが家も、この辺りのすでに亡き土豪の如く、過去の土中へほうむられ去ったにちがいない。石の舟なればこそ、貧しくとも、今なお、有る所にこうして有ることができたのじゃ。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)