面前めんぜん)” の例文
さて、チチコフの面前めんぜんに立っているのは、こういう類いの地主だった! どうもこんな現象はロシアでは甚だ稀なことといわねばならぬ。
が三度目の私の呼び声で、青い顔はムクムク動いた、そしてさながら、空中を飛ぶ生首のように暗い房にフワフワと浮いて、私の面前めんぜんへどっと飛んで来た。
怪談 (新字新仮名) / 平山蘆江(著)
いま支那海シナかい波濤はたうつて進航しんかうしてるから、よし此後このゝちなみたかくとも、かぜあらくとも、二せん諸君しよくん面前めんぜんあらはれるのは最早もはとほことではあるまいとおもふ。
老宰相は使つかいをやって夫人の父と兄を呼んでその面前めんぜんで夫人を鞠問きくもんした。夫人は罪悪を包みかくさず自白した。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其方そち面前めんぜんで、このことめるのは、今夜こんやはじめだ。其方そちとはなにかにつけて、ふなう。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かれはらなかかんがへながら、宜道ぎだう面前めんぜんで、それだけことちからがなかつた。かれこゝろからこのわか禪僧ぜんそう勇氣ゆうき熱心ねつしん眞面目まじめ親切しんせつとに敬意けいいへうしてゐたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
深くすいこんだ、たばこの煙を、フーッと相手の面前めんぜんに吹きつけて、にこにこ笑っています。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その中隊長ちゅうたいちょうは、兵士へいしらを面前めんぜんにおいて、おごそかに、一じょう訓示くんじをしました。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして自然の面前めんぜんに男一人になって立ったら
櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさよ、わざはひといふものなくば、この書面しよめんたつせんころには、吾等われらふたゝ貴下きか面前めんぜんはづなりしを、いまかゝる文使者ふづかひおくことの、よろこばしき運命うんめいにあらぬをばさつたまし。
この面前めんぜん氣力きりよくなくすわつた宗助そうすけの、くちにした言葉ことばはたゞ一きた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
面前めんぜん人間にんげんめるのをこのまんが、今夜こんやゆるしてくれ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)