へだゝ)” の例文
さうした私共の間にまだとれないへだゝりがある理由わけの一つは彼が割合に家庭にゐることが少なかつたのにもよつた。
横手村よこてむらつても、町とは人家続きになつてて、十ちやうへだゝつてはなかつた。その近所と思はれるところに行くと、野菜の車を曳いて、向ふから男がつて来る。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そばにゐたものぐに院長ゐんちやう人間にんげん紹介せうかいした、猶且やはりドクトルで、なんだとかとふポーランドのにくまちから三十ヴエルスタばかへだゝつてゐる、育馬所いくばしよもの
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
提唱ていしやうのある場所ばしよは、矢張やは一窓庵いつさうあんから一ちやうへだゝつてゐた。蓮池れんちまへとほして、それをひだりまがらずに眞直まつすぐあたると、屋根瓦やねがはらいかめしくかさねたたかのきが、まつあひだあふがれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけうち横丁よこちやうあたつて、一番いちばんおく左側ひだりがはで、すぐの崖下がけしただから、多少たせう陰氣いんきではあるが、そのかはとほりからはもつとへだゝつてゐるだけに、まあ幾分いくぶん閑靜かんせいだらうとふので、細君さいくん相談さうだんうへ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とても滿足どころではございませんの。自分の頭で考へることゝ手ですることゝのへだゝりがあまりひどくつて、隨分悲しうございました。何時でも私は自分では到底現はせないやうなものを
もし自然しぜん此儘このまゝ無爲むゐ月日つきひつたなら、ひさしからぬうちに、坂井さかゐむかし坂井さかゐになり、宗助そうすけもと宗助そうすけになつて、がけうへがけしたたがひいへへだゝごとく、たがひこゝろはなばなれになつたにちがひなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)