釣合つりあ)” の例文
いや阿關おせきこうふとちゝ無慈悲むじひ汲取くみとつてれぬのとおもふからぬがけつして御前おまへかるではない、身分みぶん釣合つりあはねばおもこと自然しぜんちがふて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
額に翳した右の手先と、左の腰盤ようばんに当てた左の手首の釣合つりあいが、いつも天候を気にしている職業人のみがする男型のポーズを小初にとらせた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
このなまめかしい羽織が女のような眉山の顔と釣合つりあって、影では蔭間かげまのようだと悪語わるくちをいうものもあったが、男の眼にも恍惚うっとりとするほど美くしかった。
聞きすまして居るとイギリスの労働者が海を越して遠く熱帯の地に出稼ぎに行く心持が、きたない三等室や薄暗い甲板の有様と釣合つりあつて非常にく表現されて居る。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
身長みのたけはひどく大きくもないのに、具足が非常な太胴ゆえ、何となく身の横幅が釣合つりあいわるく太く見える。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
が、いぢけたのでもちゞんだのでもない。吹込ふきこけむり惱亂なうらんした風情ふぜいながら、何處どこ水々みづ/\としてびやかにえる。襟許えりもと肩附かたつきつまはづれも尋常じんじやうで、見好みよげに釣合つりあふ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そのとおり。つまり、そのところでは、両方の重力が釣合つりあって重力がないのと同じことになります。さあ、そういう重力のないところでは、どんなことが起るか」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
地位や財産の釣合つりあひといふことがそんな場合には屡々心しなくてはならないことなのです。それにまたあなた方の御年齡は二十もちがつてゐらつしやるのですからね。
三人連れだって歩いて行く中にも、一番年上で、一番左右の肩の釣合つりあいの取れているのは景蔵だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此間こないだも云う通り、釣合つりあわぬは不縁ふえんもと零落果おちぶれはてた此の重二郎、が貴方あなたと釣合うような身代になるのはいつの事だか知れません、あなたがそれまで亭主を持たずにはられますめえし
みぎごと大陽暦たいやうれき日輪にちりん地球ちきうとをてらあはせて其互そのたがひ釣合つりあところもつて一年の日數ひかずさだめたるものゆへ、春夏秋冬しゆんかしうとう寒暖かんだん毎年まいとしことなることなく何月何日なんぐわつなんにちといへば丁度ちやうど去年きよねん其日そのひおな時候じこうにて
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
釣合つりあい等が定められてあったという。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其時そのときはじめてたとかつて人橋ひとばしかけてやい/\ともらひたがる、御身分おみぶんがらにも釣合つりあひませぬし、此方こちらはまだつからの子供こどもなに稽古事けいこごと仕込しこんではおきませず
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すゑのほど覺束おぼつかなければとひかゝるをうちけして、そは御懸念ごけねんふかすぎずや、釣合つりあふとつりあはぬは御心おこゝろうへのことなり、一おういとさまの御心中ごしんちううかゞくだされたし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)