おもき)” の例文
責任せきにんといふことおもききたいのもこれがめ、依頼心いらいしんおほいのもこれめ、また意志いし強固きやうこでないといふのもこれめであらうとおもひます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
聞しが其の音節調子おもきを負ふて米山をこゆるによくかなひたり拍子詞へうしことばにソイ/\といふは嶮しけれども高からぬゴロタ石の坂を登るを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
釈迦しゃか孔子こうしはこの点において解脱を心得ている。物質界におもきを置かぬものは物質界に拘泥する必要がないからである。……
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで仏蘭西革命でさかんに唱導された主義は何かといえば、第一自由、第二平等、第三親睦である。この中でも最もおもきをなしたのは自由の思想である。
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
世事に興味を有する所にあり。西洋の文学小説におもきを置けども東洋においては然らざる所以ゆえんけだしたずぬるに難からず。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ほるとはぶなの木にて作りたる木鋤こすきにてつちほるごとくして取捨とりすつるを里言りげんに雪を掘といふ、すでに初編にもいへり。かやうにせざれば雪のおもきいへつぶすゆゑなり。
しかしてあらゆる宗教の教義にはおもきかず、ただ基督の出現を以て説明すべからざる一の神秘となせるのみ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
これぞ我大日本国の開闢かいびゃく以来いらい、自国人の手を以て自国の軍艦ぐんかん運転うんてんし遠く外国にわたりたる濫觴らんしょうにして、この一挙いっきょ以て我国の名声めいせいを海外諸国に鳴らし、おのずから九鼎きゅうてい大呂たいりょおもきを成したるは
若き棕櫚しゆろおもきを負ふこといよ/\大にして、長ずることいよ/\早しといふ。我空想も亦この狹き處にとぢ込められて、かへりて大に發達せしならん。古の墳墓の常とて、此家には中央なる廣間あり。
すべつかれたる者またおもきおへる者は我に来れ我なんぢらをやすません
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
第五 遍地ニ罨覆あんぷくシテ寒ノ土中ニ侵透スルヲ防拒ス 地中よりテ以テ寒冷ヲ致サズ かえっテ温ヲ得 故ニ草木肥茂シ蟄虫ちっちゅう生ヲ得 又雪上ニそりヲ走ラシ犬鹿ヲ駆使シおもきヲ引キとおきニ致ス 故ニ北陲ほくすいおおきモ害ナク利アリ
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
里人りじんは雪車に物をのせ、おのれものりて雪上をゆく事舟のごとくす。雪中は牛馬の足立ざるゆゑすべて雪車そりを用ふ。春の雪中おもきおはしむる事牛馬うしうままさる。
一 脚色の変化におもきを置き人物の描写を軽んずるものはいはゆる通俗小説にして小説の高尚なるものにあらず。人物の描写を骨子こっしとすれば脚色はおのづからできて来るものなり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
道義におもきを置かざる万人は、道義を犠牲にしてあらゆる喜劇を演じて得意である。ふざける。騒ぐ。あざむく。嘲弄ちょうろうする。馬鹿にする。踏む。蹴る。——ことごとく万人が喜劇より受くる快楽である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほるとはぶなの木にて作りたる木鋤こすきにてつちほるごとくして取捨とりすつるを里言りげんに雪を掘といふ、すでに初編にもいへり。かやうにせざれば雪のおもきいへつぶすゆゑなり。
叙事におもきを置くもの、客観的かっかんてきなるもの、主観的なるもの、空想的なるもの、写実的なるもの、千態万様せんたいばんよう、一々説明しがたしといへども、その価値は唯作者の人格にありといはば一言いちごんにして尽くべし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かんじきにてあし自在じざいならず、雪ひざすゆゑ也。これ冬の雪中一ツの艱難かんなんなり。春は雪こほり銕石てつせきのごとくなれば、雪車そり(又雪舟そりの字をも用ふ)を以ておもきす。