酋長しゅうちょう)” の例文
酋長しゅうちょうのむすこがライオンに食われる場面がある。あれはどうも映画師がほとんど計画的に食わせるように思われて不愉快であった。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
親切な酋長しゅうちょうがえらんでくれたダイヤ族の若者は、巧みに危険を避けて、丸木舟をあやつった。——クラパという名の若者だった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
想うに大巳貴と長髄彦のふたりは、わが国にふるくからいた酋長しゅうちょうであったのであろう。神武は、それに代って立った酋長であったのであろう。
酋長しゅうちょうらしいのが、ただ一人、気のきいた服装をしている。その男が甲板に立って、きっと、こちらを見つめていたが、とつぜん、大きな声で
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
建文帝の事、得る有る無し。しかれども諸番国しょばんこくの使者したがって朝見し、各々おのおのその方物ほうぶつこうす。三仏斉国さんぶつせいこく酋長しゅうちょうとりことして献ず。帝おおいよろこぶ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
タウイロ(うちの料理番の母で、近在の部落の酋長しゅうちょう夫人。母と私とベルと、三人を合せたより、もう一周り大きい・物凄い体躯たいくをもっている。)
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すると、島吉は矢庭やにわに鋭い眼をして女の子をにらみ込んだ。その眼は孤独で専制的な酋長しゅうちょうの眼のように淋しく光っていた。
酋長 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それでは改めて、御挨拶ごあいさつ申し上げよう。吾輩わがはいは、X大使である。クロクロ島の酋長しゅうちょう黒馬博士くろうまはかせに、恐悦きょうえつを申し上げる!
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これは、そのむかしハワイの王様なんとか一世が、なんとかいう蛮人ばんじん酋長しゅうちょうを、火牛の戦法で、この崖から追い落した。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ストコフスキーが、「村の中」(ビクターJI九二一)と「酋長しゅうちょうの行進」(同JE一七六)を指揮している。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
……酔いしているアイヌの酋長しゅうちょうを、その家族たちの眼の前で絞殺して、秘蔵のマキリ(アイヌが熊狩りに用いる鋭利な短刀)一ちょうと、数本の干魚ほしうおを奪い去った。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その壮観に加えて、南蛮王孟獲もうかくもまた、眷族けんぞくをあげて、扈従こじゅうに加わり、もろもろの洞主どうしゅ酋長しゅうちょうたちも、鼓隊こたいをつれ、美人陣を作って、瀘水ろすいのほとりまで見送ってきた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちがうんだ。僕はね、モンチゴモ・ヤストレビヌィ・コゴッチさ、降参しない土人の酋長しゅうちょうの。」
少年たち (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしこの土地はその昔、原住民の酋長しゅうちょうによって支配せられ、シナの明朝みんちょうに封ぜられて王となって、爾来じらい引きつづいて燕京えんけい入貢にゅうこうしていたが、のちにシャムに併合せられた。
マレー俳優の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこの酋長しゅうちょうは豪胆な男として知られ、ただ歩くのにも銘刀を肌身はなさず差していた。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
主人しゅじんは、支那しな福州ふくしゅう大商賈おおあきんどで、客は、其も、和蘭陀オランダ富豪父子かねもちおやこと、此の島の酋長しゅうちょうなんですがね、こゝでね、みんながね、たゞひとツ、其だけにいて繰返して話して居たのは、——此のね
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は、酋長しゅうちょうソロ君の肩をたたいて、はるかにひろがる夜の大海原おおうなばらをゆびさした。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
そうですか——そう云うふうに、けつけて来た使者は深い奥まった黒い眼をおどおどさせた。それはクシュンコタンの酋長しゅうちょうチコヒロであった。日本名を知古広と称してながい馴染なじみなのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
この、タミル族の若い女どもを買い取るのは、おもにそこの旅客街のキャフェだった。女給にするのだ。ことに、ポダウィヤの酋長しゅうちょう後嗣選挙区にある、ポダウィヤ盆地産の女は値がよかった。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
あらゆる罪悪の行われたのち、とうとう鬼の酋長しゅうちょうは、命をとりとめた数人の鬼と、桃太郎の前に降参こうさんした。桃太郎の得意は思うべしである。鬼が島はもう昨日きのうのように、極楽鳥ごくらくちょうさえずる楽土ではない。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黄泉よみの岩根」の「獣人」酋長しゅうちょう荒玉梟帥あらたまたけるという猛者もさであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
酋長しゅうちょう獅の皮を剥製はくせいし馬をして見れ嗅ぎ狎れしむと。
シャクは、美しく若い男女の物語や、吝嗇けち嫉妬しっと深い老婆ろうばの話や、他人には威張いばっていても老妻にだけは頭の上がらぬ酋長しゅうちょうの話をするようになった。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この酋長しゅうちょうの子が食われたので、映画師らは酋長に合わせる顔がないといってしょげる場面はどうも少し芝居じみる。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
五人の原地人斥候せっこうは、酒をのんでいる酋長しゅうちょうのところへ、とびこんできた。
和蘭陀オランダのは騒がなかつたが、蕃蛇剌馬ばんじゃらあまん酋長しゅうちょうは、帯を手繰たぐつて、長剣のつかへ手を掛けました。……此のお夥間なかまです……人の売買うりかいをする連中れんじゅうは……まあね、槍は給仕が、此もあわてて受取つたつて。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そんなにチッテ族の酋長しゅうちょうのような南洋色になっても」
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お前は、この村の酋長しゅうちょうか?」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
南洋孤島の酋長しゅうちょう東都をうて鉄道馬車の馬を見、驚いてあれは人食う動物かと問う、聞いて笑わざる人なし。
知と疑い (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼は先ず八人の酋長しゅうちょう達に厚く謝辞を述べ、次いで公衆に、此の美しい申出の為された事情と経過とを説明した。自分が初め此の申出を断ろうかと思ったこと。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ヘンリは元来サヴァイイ島の酋長しゅうちょうの息子なのだが、欧羅巴の何処へ出しても恥ずかしくない立派な青年だ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
乱暴な男声の合唱がそれに交って聞えて来る。尻が揺れ、腰にまとった布片がざわざわと揺れる。おどりから少し離れた老人たちの中心に、酋長しゅうちょうらしい男が胡坐あぐらをかいている。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)