トップ
>
輪郭
>
りんかく
ふりがな文庫
“
輪郭
(
りんかく
)” の例文
俺だちはその
尖塔
(
せんとう
)
を窓から覗きあげた。頂きの近いところに、少し残っている足場が青い澄んだ冬の空に、
輪郭
(
りんかく
)
をハッキリ見せていた。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
黄昏
(
たそがれ
)
は、誰も知るとおり、
曲者
(
くせもの
)
である。物みなが煙のように
輪郭
(
りんかく
)
を波打たせ、
蚊
(
か
)
が飛んでも、
雷
(
かみなり
)
が近づくほどにざわめき立つのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その理由は、そのときには何のことだか、全く分らなかったが、それから一年半ほどたって、
漸
(
ようや
)
くぼんやりしたその
輪郭
(
りんかく
)
だけがわかった。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
葦も池の
輪郭
(
りんかく
)
が
狭
(
せばま
)
って池の水が小さな流れになる、上に井の頭線の鉄橋が
架
(
か
)
かっている辺に、わずかに見られるばかりである。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
背丈
(
せい
)
のスラリとした
輪郭
(
りんかく
)
と、手に尺八を
携
(
たずさ
)
えているところから察しても、それは同宿の虚無僧、
法月弦之丞
(
のりづきげんのじょう
)
と分る姿。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
特に歓楽の激しい地域を指示するように所々に
群
(
むらが
)
るネオンサインが光のなかへ更に強い光の
輪郭
(
りんかく
)
を重ねている。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
戦
(
たたかい
)
の
街
(
ちまた
)
を幾度もくぐったらしい、日に焼けて男性的なオッタヴィアナの顔は、飽く事なき功名心と、強い意志と、
生一本
(
きいっぽん
)
な気象とで、固い
輪郭
(
りんかく
)
を描いていた。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そのものの
輪郭
(
りんかく
)
を縁取る毛は、月光のために銀色にかがやいて見えた。全身、毛におおわれたものであった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
腕組をして枕元に
坐
(
すわ
)
っていると、
仰向
(
あおむき
)
に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、
輪郭
(
りんかく
)
の
柔
(
やわ
)
らかな
瓜実
(
うりざね
)
顔
(
がお
)
をその中に横たえている。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
わたしがお見せするものは、ごく大ざっぱに紙の上に書きつけた、ほんの
輪郭
(
りんかく
)
にすぎません。そしてそのあいだには、わたし自身の考えもまじっているのです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
事変の
輪郭
(
りんかく
)
は
恭一
(
きょういち
)
からの電話と変わりはなかったが、もっとくわしく、具体的で、確実性があった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
その内に、
翡翠
(
かわせみ
)
の背らしいのが、向うで、ぼっと大きくなり、従って
輪郭
(
りんかく
)
は
朧
(
おぼろ
)
になったが、大きくなったのは近づくので、朧になるのは、山から沼の上を
暮増
(
くれまさ
)
るのである。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると
念力
(
ねんりき
)
の通じたように、見る見る島の影が浮び出した。中央に一座の山の聳えた、
円錐
(
えんすい
)
に近い島の影である。しかし大体の
輪郭
(
りんかく
)
のほかは
生憎
(
あいにく
)
何もはっきりとは見えない。
不思議な島
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたくしが
今日
(
こんにち
)
の会合を思い立ちましたのも、一つはそこにありますので、現代のお忙がしい方々に対して、支那小説の
輪郭
(
りんかく
)
と、それが我が文学や伝説に及ぼした影響とを
中国怪奇小説集:02 開会の辞
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『
元亨釈書
(
げんこうしゃくしょ
)
』及び『本朝高僧伝』に載するところは、明治大正の歴史書に載するところの簡単にして無意義なる叙述とともに、単に彼の生活の重大ならざる
輪郭
(
りんかく
)
を伝えたに過ぎぬ。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
民さんは四十いくつだという、小柄で、顔も同じように小さいが、それなりに
輪郭
(
りんかく
)
のととのった顔だった。毎朝牛をつれて山へ行き、夕方
薪
(
まき
)
を背負って牛といっしょに帰えってくる。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
輪郭
(
りんかく
)
の
滲
(
にじ
)
んだ満月が中空に浮び、洞庭湖はただ白く
茫
(
ぼう
)
として空と水の境が無く、岸の
平沙
(
へいさ
)
は昼のように明るく柳の枝は湖水の
靄
(
もや
)
を含んで重く垂れ、遠くに見える桃畑の
万朶
(
ばんだ
)
の花は
霰
(
あられ
)
に似て
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
夜気がしっとりと重く、わたしの
火照
(
ほて
)
った顔へ
匂
(
にお
)
いを吹きつけるのだった。どうやら
雷雨
(
らいう
)
が来そうな模様で、黒い雨雲が
湧
(
わ
)
きだして空を
這
(
は
)
い、しきりにそのもやもやした
輪郭
(
りんかく
)
を変えていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
わたしはいつまでもかの椅子を見つめていると、そこに青白い
靄
(
もや
)
のようなものが現われた。その
輪郭
(
りんかく
)
は人間の形のようであるが、わたしは自分の眼を疑うほどにきわめて朦朧たるものであった。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
涸渇
(
こかつ
)
してしまったのであろうか? 私は他人の印象から、どうかするとその人の持ってる生命力とか
霊魂
(
れいこん
)
とかいったものの
輪郭
(
りんかく
)
を、私の気持の上に描くことができるような気のされる場合があるが
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
今日伝わっている春琴女が三十七歳の時の写真というものを見るのに、
輪郭
(
りんかく
)
の整った
瓜実顔
(
うりざねがお
)
に、一つ一つ
可愛
(
かわい
)
い指で
摘
(
つ
)
まみ上げたような
小柄
(
こがら
)
な今にも消えてなくなりそうな
柔
(
やわら
)
かな目鼻がついている。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お北の言葉で、次第に事件の
輪郭
(
りんかく
)
が明らかになって行くようです。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
地球は小さくなったが、いよいよ光をまして白く輝く大陸の
輪郭
(
りんかく
)
もよく見える。しかし球という感じがだんだんなくなって、平面のような感じにかわっていった。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
晋
(
しん
)
が三国を統一するまでの治乱興亡をなお飽くまでつぶさに描いているのであるが、そこにはすでに時代の主役的人物が見えなくなって、事件の
輪郭
(
りんかく
)
も小さくなり
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭巾
(
ずきん
)
がかなぐり捨てられた。そして、その下から現われたのは、ドス黒い皮膚、骨ばった
輪郭
(
りんかく
)
、
爛々
(
らんらん
)
と青くかがやく両眼、赤い
唇
(
くちびる
)
、
牙
(
きば
)
のような白歯、恩田だ! 人間
豹
(
ひょう
)
だ!
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
物の
輪郭
(
りんかく
)
が
円味
(
まるみ
)
を帯びずに、堅いままで黒ずんで行くこちんとした寒い晩秋の夜が来た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
いや、不良少年の顔ではない。ただどこか
輪郭
(
りんかく
)
のぼやけた清太郎自身の顔である。
春の夜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まんまるな顔の
輪郭
(
りんかく
)
、近眼鏡のおくにぎらりと光る眼、真赤な厚い
唇
(
くちびる
)
、
剃
(
そ
)
りあとの
真
(
ま
)
っ
青
(
さお
)
な
頬
(
ほお
)
の肉、そうしたものが、組みあわさってできあがる大河の笑顔には、一種異様な表情があった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
しかし、火星の
輪郭
(
りんかく
)
も、ぼんやりとしている。全体が
赤橙
(
だいだい
)
色にぬられていて、なんだかうす汚い。黒緑色の線が、
網
(
あみ
)
をかぶったように走りまわっているのも見える。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「あしかが帖」で尊氏の若い日の
輪郭
(
りんかく
)
を。また「菊水帖」に入って、楠木正成とその郷土の人々を。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気転
(
きてん
)
よく、万吉の蹴ちらした枯杉の火の粉が、草から草へ吹かれてしまうと、星明りもなき真の宵闇……。わずか四、五尺の隔てながら双方の姿は、その
輪郭
(
りんかく
)
すらもよく分らない。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まず
輪郭
(
りんかく
)
をさぐッてみると、頭には髷がなく、総髪らしい形です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、おぼろに
輪郭
(
りんかく
)
を察してきた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
輪
常用漢字
小4
部首:⾞
15画
郭
常用漢字
中学
部首:⾢
11画
“輪郭”で始まる語句
輪郭外