見傚みな)” の例文
結婚を生死の間によこたわる一大要件と見傚みなして、あるゆる他の出来事を、これに従属させる考えの嫂から云わせると、不可思議になる。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
客観的態度の三叙述を通じて考えて見ますと、いずれも非我の世界における(冒頭に説明したごとく我も非我と見傚みなす事ができますが)
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
学習院という学校は社会的地位の好い人が這入る学校のように世間から見傚みなされております。そうしてそれがおそらく事実なのでしょう。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで私はこの演説の冒頭に自分の過去の経験も非我の経験と見傚みなす事ができると云ってあらかじめ予防線を張っておきました。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
従って、自分と平岡の隔離は、今の自分のまなこに訴えてみて、尋常一般の経路を、ある点まで進行した結果に過ぎないと見傚みなした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう解釈した時、御米は恐ろしい罪を犯した悪人とおのれ見傚みなさない訳に行かなかった。そうして思わざる徳義上の苛責かしゃくを人知れず受けた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
解釋かいしやくしたとき御米およねおそろしいつみをかした惡人あくにんおのれ見傚みなさないわけかなかつた。さうしておもはざる徳義上とくぎじやう苛責かしやく人知ひとしれずけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
僕の妻は小説と三面記事とを同じ物のごとく見傚みなす女であった。そうして両方ともうそと信じて疑わないほど浪漫斯ロマンスに縁の遠い女であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こり不可いけない」とひながら玄關げんくわんあがつた。その樣子やうすあたか御米およねみちわるくした責任者せきにんしや見傚みなしてゐるふう受取うけとられるので、御米およね仕舞しまひ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ところが先生の方では、頭から僕にそれだけの責任があるかのごとく見傚みなしてしまって、そうして万事をそれから演繹えんえきしてくるんだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
発展ではあるがA1が基点であって、そのA1は全性格の一特性であるからして、A1の発展もまた全性格の発展と見傚みなす訳には参りません。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ彼ら姉二人が僕と市蔵とを、同じ型からでき上った偏窟人へんくつじんのように見傚みなして、同じまゆを僕らの上に等しくひそめるのは疑もなく誤っている。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところ叔父をぢ意見いけんによると、あの屋敷やしき宗助そうすけ自分じぶん提供ていきようしてつたのだから、たとひ幾何いくらあまらうと、あまつたぶん自分じぶん所得しよとく見傚みなして差支さしつかへない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私はそれをKに対する私の嫉妬しっとしていいものか、または私に対するお嬢さんの技巧と見傚みなしてしかるべきものか、ちょっと分別に迷いました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
打てば必ずなかなければならんとなると吾輩は迷惑である。目白の時の鐘と同一に見傚みなされては猫と生れた甲斐かいがない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてその科学界を組織する学者の研究と発見とに対しては、その比較的価値どころか、全く自家の着衣喫飯ちゃくいきっぱんと交渉のない、徒事いたずらごとの如く見傚みなして来た。
学者と名誉 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまりは向うから手を出しておいて、世間体はこっちが仕掛けた喧嘩けんかのように、見傚みなされてしまう。大変な不利益だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが叔父の意見によると、あの屋敷は宗助が自分に提供して行ったのだから、たといいくら余ろうと、余った分は自分の所得と見傚みなして差支さしつかえない。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は今日まで、熱烈をいとう、危きに近寄り得ぬ、勝負事を好まぬ、用心深い、太平の好紳士こうしんしと自分を見傚みなしていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すでに平等的である以上は圏を画して圏内圏外の別を説く必要はない。英国の二大政党のごときは単に採決に便宜べんぎなる約束的の団隊と見傚みなして差支さしつかえない。
文壇の趨勢 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小遣こづかいの財源のように見込まれるのは、自分を貧乏人と見傚みなしている彼の立場から見て、腹が立つだけであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その様子があたかも御米を路を悪くした責任者と見傚みなしている風に受取られるので、御米はしまいに
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし六畳敷にせよいやしくも書斎と号する一室をひかえて、居眠りをしながらも、むずかしい書物の上へ顔をかざす以上は、学者作家の同類と見傚みなさなければならん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「国家の実質とも見傚みなし得べき「力」をたない小邦が、何でこく家を代表することが出来よう」
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兄のうしろに御本尊のお延が澄まして控えているのをにくんだ。夫の堀をこの事件の責任者ででもあるように見傚みなして、京都の父が遠廻しに持ちかけて来るのがいかにも業腹ごうはらであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしその後はまたどうしても聴いていられなかった。先刻さっきから一言葉ひとことばごとに一調子ひとちょうしずつ高まって来た二人の遣取やりとりは、ここで絶頂に達したものと見傚みなすよりほかにみちはなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
または直覚の活作用とも見傚みなされる彼女の機略きりゃくであるか、あるいはそれ以外の或物であるか、たしかな解剖かいぼうは彼にもまだできていなかったが、何しろ事実は事実に違いなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にくいと知りながら、我慢して使った結果、おのずと拍子ひょうしに乗って来た勢いに違ないんだから、まあ器械的の変化と見傚みなしても差支さしつかえなかろうが、妙なもので、その器械的の変化が
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
動植両界をつらぬき、それらを万里一条の鉄のごとくに隙間すきまなく発展して来た進化の歴史と見傚みなすとき、そうして吾ら人類がこの大歴史中の単なる一ページうずむべき材料に過ぎぬ事を自覚するとき
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は自分の眼の届く広場を、一面の舞台と見傚みなして、その上に自分と同じ態度の男が三人いる事を発見した。その一人は派出所の巡査で、これは自分と同じ方を向いて同じように立っていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なに、したと見傚みなすんだね」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)