葡萄酒ぶだうしゆ)” の例文
が、少くとも女性の読者に多少の魅力みりよくのあることは決して「勤人つとめにん」や「海上日記」や「葡萄酒ぶだうしゆ」のあとには落ちない筈である。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その晩は葡萄酒ぶだうしゆなどを飲んで、遅くまで話したが、それも取留めのない彼の感激から出ることばばかりで、期待したやうなのある話は少しもなかつた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その葡萄酒ぶだうしゆは、むかし、わたしが聖者にだしてゐたのの、たゞ一本の残りです。たくさん飲んで下さい。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
肉色の薔薇ばらの花、さも丈夫らしい、けた薔薇ばらの花、肉色の薔薇ばらの花、おまへは、わたしたちにあかい弱い葡萄酒ぶだうしゆけて誘惑する、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
富岡は、何かで読んだ、ワイルドの葡萄酒ぶだうしゆの醸造量と質とを知るには、なにも、一樽あけてみる必要はないのだと云ふ言葉を思ひ出してゐる。むし返しは沢山である。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
婿むこさんが、硝子盃コツプに、葡萄酒ぶだうしゆをおはかんなさるあひだ——えゝうよ。……お寝室ねまにはわたしと三にんきり。……だれ可厭いやだつて、看護婦かんごふさんさへおたのみなさらないんだそうです。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「何千マイルも離れた島で、葡萄酒ぶだうしゆの出來る處だとかつて——料理番が教へてくれましたつけ——」
これから案内あんないれてき、はしわたると葭簀張よしずばり腰掛こしか茶屋ぢやゝで、おく住居すまゐになつてり、戸棚とだなみつつばかりり、たないくつもりまして、葡萄酒ぶだうしゆ、ラムネ、麦酒ビールなどのびん幾本いくほんも並んで
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
清作が 納屋にしまつた葡萄酒ぶだうしゆ
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
葡萄酒ぶだうしゆの色にさきけりさくらさう
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あやまちてこぼしたる葡萄酒ぶだうしゆ
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
宿屋の主人は大喜びで、みんなに葡萄酒ぶだうしゆをだしました。後から後から人がおしかけてきました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
婿むこさんが葡萄酒ぶだうしゆをおはかんなさるあひだに、ほつそりしたを、うね、ほゝへつけて、うつくしいめてつめなすつたんでせう、のびてるかうだかつて——じつ御覧ごらんなすつたんですがね
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うちのロバートはきつと葡萄酒ぶだうしゆ商人だつて云つてましたつけ。
そまつな食事でしたが、とてもおいしい葡萄酒ぶだうしゆがついてゐました。エミリアンは一口飲んで、びつくりしました。そんなおいしいのはまだ飲んだことがありませんでした。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
……義兄にいさんがおこゝろづくしの丸薬おくすりですわね。……わたし最初さいしよ見舞みまひつたとき、ことづかつてまゐりました……あのくすりを、お婿むこさんのから、葡萄酒ぶだうしゆちひさな硝子盃コツプあがるんだつて、——えゝ、先刻さつき……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うち女中ぢよちうなさけで。……あへ女中ぢよちうなさけふ。——さい臺所だいどころから葡萄酒ぶだうしゆ二罎にびん持出もちだすとふにいたつては生命いのちがけである。けちにたくはへた正宗まさむね臺所だいどころみなながれた。葡萄酒ぶだうしゆ安値やすいのだが、厚意こゝろざし高價たかい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)