舞妓まいこ)” の例文
物食べる時かて、唇に触らんように箸で口の真ん中へ持って行かんならんよってに、舞妓まいこの時分から高野豆腐こうやどうふで食べ方の稽古けいこするねん。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
舞妓まいこさん、舞妓さん。早くカルタを片づけてしまいなせえ。あいにくと向うから、お役人らしい侍が大勢こッちへ来るようですから」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまた祇園の歌妓かぎ舞妓まいこは、祇園という名の見識をもたせて、諸事鷹揚おうように、歌舞の技業わざと女のたしなみとを、幼少から仕込むのだった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
一人の可愛ゆい舞妓まいこが、振袖の脇の下から手を出して合掌しながら語り出したので、一座がしんと引締った時、村正のおじさんが、得たりと
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おかしい事には、芸妓げいしゃ舞妓まいこ幇間ほうかんまじり、きらびやかな取巻きで、洋服の紳士が、桜を一枝——あれは、あの枝は折らせまい、形容でしょう。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けて必要なのは西班牙スペイン舞妓まいこのボエールのような斑黒点はんこくてんがコケティッシュな間隔かんかくで振り撒かれなければならなかった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「京の舞妓まいこだけは一見しておきたまえ。」友はそれから、新樹の蔭に一片二片ひとひらふたひらずつ残った桜の散るのを眺めながら、言いかけたが、笹村の余裕のない心には
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
今やすでに、現代の若者が祇園ぎおん舞妓まいこ数名を連れて歩いているのを見てさえ、忠臣蔵の舞台へ会社員が迷い込んだ位の情ない不調和さを私は感じるのである。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
一番左の一番可愛らしい舞妓まいこさんの背後から抱き付いてお出でになりましたが、その舞妓さんの花簪はなかんざしと、阿弥陀にかぶっておられた校長先生の山高帽を奪い取って
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
辻木家のれっきとした養女で、要之助さんの許婚いいなずけなのよ。それで、舞妓まいこから一本になるときだって、水あげもしとらんし、芸一本の自由勝手なお座敷づとめをしとる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
西郷隆盛さいごうたかもりなどが維新の志士として東三本樹ひがしさんぼんぎあたりの妓楼ぎろうで盛んに遊んでいたころ舞妓まいこに出ていて、隆盛が碁盤の上に立たして、片手でぐっと差し上げたことなどあった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
僕は祇園ぎおん舞妓まいこいのししだとウッカリ答えてしまったのだが——まったくウッカリ答えたのである。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
流石さすがに胸が迫った。道頓堀どうとんぼり行進曲もにぎやかに、花道からズラリと六人の振袖ふりそで美しい舞妓まいこが現れた!
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一人の舞妓まいこのために、一人の歌妓かぎのために、某氏の情婦のために、あるいは某夫人の贔屓ひいきの女のために、歌劇オペラを上演するのだ。君らは淫猥いんわいなことをしか頭においていないんだ。
平安朝このかた一千年の伝統をだらりの帯に染め出しているような京の舞妓まいこに「オープンでドライヴおしやしたらどうどす」などといわれると腹の底までくすぐったい感じがする。
外来語所感 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
紅い日傘をさした舞妓まいこが橋を渡って来て、あたかも柴車とすれ違ってゆく。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
祇園の舞妓まいこはうっかり貴方に見せられないほど美くしい可愛いもんです。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ボンバルダに栄誉あれ! エジプト舞妓まいこの一人を加うれば、エレファンタのムノフィス料理店にも肩を並べ、ギリシャ売笑婦の一人を加うれば、ケロネのティジェリオン料理店とも肩を並べるだろう。
上方の花柳界から舞妓まいこに出たらしい。そして、まもなく上方で急死した。——という消息は、彼女の実兄から後に聞かされたのである。
ひととせ上方見物に来て祇園ぎおんの茶屋で舞妓まいこの舞いを見た折のこと、久しぶりに又その唄を聞くことが出来ていいしれぬなつかしさを覚えた。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今やすでに、現代の若者が祇園ぎおん舞妓まいこ数名を連れて歩いているのを見てさえ、忠臣蔵の舞台へ会社員が迷い込んだ位の情ない不調和さを私は感じるのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
とそこへ手をいた、すそ模様の振袖は、島田の丈長たけなが舞妓まいこにあらず、うちから斉眉かしずいて来ているやっこであった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
舞妓まいこでもするようにはにかんで、口をつまんで、スッ、ヘ、スッ、ヘ、と中へ笑いながら、その鉢も引きよせたが、素麺を、するりと咽喉のどにすべり入れると、先刻さっき
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
道太は初め隣に気狂きちがいでもいるのかと思ったが、九官鳥きゅうかんちょうらしかった。枕もとを見ると、舞妓まいこの姿をかいた極彩色の二枚折が隅に立ててあって、小さい床に春琴しゅんきんか何かがかっていた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
自分のところに渋皮のけた貰いっ子をしましてね、それが君香きみかといって後に舞妓まいこで鳴らしました、そいつを九条家の島田左近様に差上げまして、それが縁で島田様に取入り、そのお手先をつとめて
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「十四になる芸者、そんな若い芸者があるの。舞妓まいこじゃないの」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
江戸者といえば芸妓でも時勢おくれの人間のようにいうし、こまちゃくれた舞妓まいこや仲居までが、攘夷とか、幕府がどうとか、将軍家を批判にかける。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四歳の頃よりまいを習いけるに挙措きょそ進退の法おのずから備わりてさす手ひく手の優艶ゆうえんなること舞妓まいこも及ばぬほどなりければ、師もしばしば舌を巻きて、あわれこの
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
現夫人は、紅葉館のひとだということである。丸顔なヒステリーだというほかは知らない。おなじ紅葉館の舞妓まいこで、さかえいみじい女は博文館はくぶんかん主大橋新太郎氏夫人須磨子さんであろう。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そこではまた、きれいな舞妓まいこ色子いろこたちが、団扇うちわの風を送るやら、吹井ふきいの水で手拭てぬぐいを冷やしてくるやら、女が女をとり巻いて、何しろ大したもて方である。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
図は横にいてある。緋色ひいろの地に鹿しぼりのような銀の点線が這入はいっていて、下に大きな桜の花弁の端が三枚見え、その上に後姿の舞妓まいこが半身を出している。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
カタリナはそう云って、三角だなの下の段から、第一回の試作品である舞妓まいこの人形を出して来た。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
帯の間からつかみだした金銀を舞妓まいこたちへバラバラといてやる。たいこや仲居大供おおどもまでキャッキャッとなってあばきあった——。なるほど、これなら女のお客にしても、たしかにもてるに違いない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の番を待ちながらくろうとたちの間に交って相弟子の稽古を見物したり、顔馴染かおなじみの芸者や舞妓まいこに話しかけたりすると云う風なので、実際の歳を考えれば別に不思議はないのだけれども
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)