立優たちまさ)” の例文
菊五郎のお蔦、両吟りょうぎんの唄にて花道の出は目のむるほど美しく、今度は丸髷まるまげにて被布ひふを着られしためもあらんが、容貌きりょうは先年より立優たちまされり。
それに、娘は学問もすぐれて出来、外国語の本も読み、人一倍立優たちまさつた成績と評判とを持つてゐた。父母の愛も深かつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
さてはこの母親の言ふに言はれぬ、世帯せたい魂胆こんたんもと知らぬ人の一旦いつたんまどへど現在の内輪うちわは娘がかたよりも立優たちまさりて、くらをも建つべき銀行貯金の有るやにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
玉枝そつくりと言ひ度いが、あれよりも立優たちまさつて居たと、叔母さんの言葉だから、これも嘘はないでせう
根占ねじめの花に蹴落けおされて色の無さよ、とあやしんで聞くと、芸も容色きりょう立優たちまさった朝顔だけれど、——名はお君という——そのは熊野をおどると、後できっとわずらうとの事。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これがこの一種族の他に立優たちまさった強みであると共に、人に名前があり住家があって、いつでも再会し得るために別れやすくなったごとく、幾分か彼等の行動を自由にし
細君はいいほどに主人をなぐさめながら立ち上って、更に前より立優たちまさった美しい猪口を持って来て
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
前にも立優たちまさつた出来で、聴衆ききては唯もう夢中になつて手をつて驚嘆した。そののぼせた容子ようすを見てゐたエルマンは、懐中ポケツトからハンケチを取り出して、そつと額の汗を拭いた。
倉子の容貌は真に聞きしより立優たちまさりてうるわしく、其目其鼻其姿、一点の申分無く、容貌室中に輝くかと疑われ、余はかゝる美人が如何でか恐しき罪をもくろみて我が所天おっとに勧めんやと思いたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
と言って恍惚うっとりとさせてしまったことほど、能登守の男ぶりが立優たちまさって見えました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
不図又文三の言葉じりから燃出して以前にも立優たちまさる火勢、黒烟くろけぶり焔々えんえんと顔にみなぎるところを見てはとても鎮火しそうも無かッたのも、文三がすみませぬの水を斟尽くみつくしてそそぎかけたので次第々々に下火になって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
様子も幾分か立優たちまさって見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いか、それへやうとふからには、ほたるほしちりやまつゆ一滴いつてきと、大海だいかいうしほほど、抜群ばつぐんすぐれた立優たちまさつたものでいからには、なにまた物好ものずきに美女びぢよ木像もくざうへやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれどもだの、くさだのよりも、人間にんげん立優たちまさつた、立派りつぱなものであるといふことは、いかな、あなたにでもわかりましやう、づそれを基礎どだいにして、お談話はなしをしやうからつて、きました。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)