かせぎ)” の例文
妹にも同じかせぎをさせようとしましたが、私は命がけで喧嘩をして、そればかりは思ひ止らせ、好ましくはないが水茶屋に奉公させました。
ついでと言っては悪いけれど、かせぎの繰廻しがどうにか附いて、参宮が出来るというのも、お伊勢様の思召おぼしめし冥加みょうがのほど難有ありがたい。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
相宿あいやどのものがそれぞれかせぎに出た跡で、宇平は九郎右衛門の前にひざを進めて、何か言い出しそうにして又黙ってしまった。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もちまづしき上にまづしくならん今の中に江戸に出て五六年もかせぎなば能き事も有べしと思ひ或日叔母女房に向ひ此事を直談ぢきだんに及びければ大いにおどろき是は思ひかけなき事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ただし借人は七百文の銭にて一日に一貫二、三百文にも売上げるゆえ、七百文の銭に二十一文の利息を除いて、その外五百七十五文のかせぎあり。依って借も貸も利ありて損なし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
おつぎを奉公ほうこうしてしまへば、二人ふたりいておしな從來これまでのやうにはたらくことが出來できない、わづかかせぎでもそれが停止ていしされることは彼等かれら生活せいくわつためには非常ひじやう打撃だげきでなければならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
新吉は別にかせぎもなく、ことには塩梅が悪いので、少しずつ酒でも飲んではぶら/\土手でも歩いたり、また大宝たいほうの八幡様へ参詣にくとか、今日は水街道、或は大生郷おおなごうの天神様へ行くなどと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かたじけない。然し、私は天引三割の三月縛みつきしばりと云ふ躍利をどりを貸して、あらかせぎを為てゐるのだから、何も人に恩などを被せて、それを種に銭儲かねまうけを為るやうな、廻りくどい事を為る必要は、まあ無いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夫婦ぐらしなれば格別かくべつ、もしも三、五人の子供または老親あれば、歳入さいにゅうを以て衣食を給するにらず。故に家内かない力役りきえきたうる者は男女を問わず、或は手細工てざいく或は紡績ぼうせき等のかせぎを以てかろうじて生計せいけいすのみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「千代子さん。どうです。いゝでせう。わたしと一ツしよになつて見ませんか。奮発して二人で一トかせぎかせいで見やうぢやありませんか。戦争も大きな声ぢや言はれないが、もう長いことはないツて云ふ話だし……。」
にぎり飯 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
小体こていな暮しで共稼ぎ、使歩行つかいあるきやら草取やらに雇われて参るのが、かせぎかえりと見えまして、手甲脚絆てっこうきゃはんで、貴方、鎌を提げましたなり、ちょこちょこと寄りまして
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亡者なきものとなし我また後役あとやくにならんと惡心あくしん増長ぞうちやうせし所役人へ遣はす賄賂わいろの金子に困り悴夫婦を江戸へかせぎに出し給金にて地頭役人をこしらへ先役に立歸たちかへらんと存じ此ことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これその日かせぎの軽き商人の産なり。ただこれはなお本資もとでを持ちし身上なり。これ程の本資もたぬ者は人に借る。暁烏あけがらすの声きくより棲烏とまりがらすの声きくまでを期とす。利息は百文に二文とかいう。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「千代子さん。どうです。いいでしょう。わたしと一ッしょになって見ませんか。奮発して二人で一トかせぎかせいで見ようじゃありませんか。戦争も大きな声じゃ言われないが、もう長いことはないッて云う話だし……。」
にぎり飯 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さける程の大酒なりされども喧嘩口論は勿論何程に酩酊めいていなすとも夢中に成てたふれ或ひは家業を怠惰おこたりしと云事なく只酒を飮をたのしみとしてかせぎ兄を助ける故人々心隔こゝろおきなく半四郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
縁日かせぎ門附かどづけも利かない気で、へべれけの愛吉が意にさからい、あたいを払わなければわざは見せぬ、おあしがなくっていて、それでたってすごい処を聞きたいなら、さきに立って提灯ちょうちんは持たずとも
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夢とすると話が出来ない、いかに田舎かせぎに出ていたって、野郎の癖に新造しんぞの夢でもありますまい。これが山賊に出逢って一貫投げ出したとでもいう事なら、意気地がねえたって茶話にゃなりまさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)