目算もくさん)” の例文
主人の振舞ってくれる酒では羽目はめをはずして飲むわけにはゆかないので、彼は喜三郎をいたぶって、今夜も存分に飲もうという目算もくさんであった。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
庄造はつぱいやうな顔をして、口をとがらせて俯向うつむいてしまつた。母から云はせて福子をなだめる目算もくさんでゐたのが、すつかり外れてしまつたのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
イバンスの目算もくさんは、フロワード岬をすぎて、パンタレーナまでゆくつもりであったが、だが二十日の朝、みさきにあったサービスがとつぜんさけんだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
きっと騒動が持ち上がるに相違ないと、それを楽しみに、駈け込み訴えのように飛んで来たのに、その目算もくさんはガラリはずれて、一同は涙ぐむほどの感謝ぶりだ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
東海道から江戸へ入るには、是非ともさしかかる山口やまぐち高輪たかなわの浦あたり——、その辺に、必殺の策を伏せておいて、ばらしてしまおうという二人が大体の目算もくさん
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なし恩をせ置思ひを遂んと心の中に目算もくさんなし忽ちおこ煩惱ぼんなういぬよりもなほ眼尻めじりを下げお光殿にも可愛かあいさうにわかい身そらで後家になられ年増盛としまざかりををしい物と戯氣おどけながら御子息道之助殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まァった。やぶからぼうんでた、おいらのくちからこういったんじゃ、おめえがかぶりをるのももっともだが、こっちもまんざら目算もくさんなしで、かけてたというわけじゃねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その夜、客あしらいのよい由玄の介抱で、久方ぶりの風呂にもつかり、固粥かたかゆの振舞いにまで預ったところで、実は貞阿として目算もくさんに入れてなかった事が持上った。雪はまだむ様子もない。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
関ヶ原で勝つまでは何が何やら目算もくさんの立てようもなかったろうと思われる。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かへりはれいまどたゝいてと目算もくさんながら横町よこちやうまがれば、いきなりあとよりひすがるひとの、兩手りやうてかくしてしのわらひするに、れだれだとゆびでゝ、なんだおきやうさんか、小指こゆびのまむしがもの
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
庄造はっぱいような顔をして、口をとがらせて俯向うつむいてしまった。母から云わせて福子をなだめる目算もくさんでいたのが、すっかり外れてしまったのである。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かれらの目算もくさんでは、この一番こそ、うたがうまでもない勝味かちみのあるものとしんじているのだ。天下あゆむことにかけて、たれか、早足はやあし燕作えんさくにまさる人間があるはずはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次郎左衛門は少し目算もくさんが狂った。彼は今夜八橋を殺しに来たのである。それには兵庫屋の二階へ刀を持ってゆくことは出来ないので、なるべく彼女を茶屋まで呼び出したかった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その夜、客あしらひのよい由玄の介抱で、久方ぶりの風呂にもつかり、固粥かたかゆの振舞ひにまで預つたところで、実は貞阿として目算もくさんに入れてなかつた事が持上つた。雪はまだむ様子もない。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ところが、いつまで待っても二人は泣き合っているばかり……これでは櫛まきお藤、初めの目算もくさんががらりはずれたわけで、いまさら引っこみもつかず、なおも格子の隙に耳をすりつけていると——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
仕濟したりと心の目算もくさんやがて三次に打向ひ御苦勞くらうながら世話せわついで今晩こんばんあはせて下されと云へば三次は苦笑にがわらひ如何にも承知と挨拶あいさつするうち殺さるゝとはゆめにも知らずお安は急ぎおび引締ひきしめサアとうながことばと共に三次はわざと親切らしくお安を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今度、秀吉が伊勢路いせじへ進出して来た意中には、初めから、大きな目算もくさんがあったのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがその目算もくさんがはずれて売り主の方から破談を云い出された。その事情を聴いてみると、どうしても忌だとも云えない。さりとて、折角の金儲けを水にしてしまうのも口惜しい。
半七捕物帳:42 仮面 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
母から云はせて福子をなだめる目算もくさんでゐたのが、すつかり外れてしまつたのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)