はた)” の例文
そは汝、貧しく、ゑつゝ、はたに入り、良木よききの種をきたればなり(この木昔葡萄ぶどうなりしも今荊棘いばらとなりぬ)。 一〇九—一一一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
為朝ためともはそこからがって、ずんずんおくはいってますと、一めん、いわでたたんだような土地とちで、もなければはたもありません。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さてうめはなをはりとなり、日毎ひごとかぜあたゝかになりますと、もゝ節句せつくもゝはな油菜あぶらなはながさきます。はたにはたんぽゝが黄色きいろくかゞやいてきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
これをばいかになすべきと役僧の円道えんどうもろとも、髪ある頭に髪なき頭突き合わせて相談したれど別に殊勝なる分別も出でず、田地を買わんかはた買わんか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼方かなたの狐も一生懸命、はたの作物を蹴散けちらして、里のかたへ走りしが、ある人家の外面そとべに、結ひめぐらしたる生垣いけがきを、ひらりおどり越え、家のうちに逃げ入りしにぞ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
路にははんのまばらな並木やら、庚申塚こうしんづかやら、はたやら、百姓家やらが車の進むままに送り迎えた。馬車が一台、あとから来て、砂煙すなけむりを立ててして行った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
己はその中庭やはたで、エルリングが色々の為事をするのを見た。まきを割っている事もある。花壇を掘り返している事もある。桜ん坊を摘んでいる事もある。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
広い、たいらはたがある。収穫ののちだ。何んだかこう利用してしまった土地というような風で、寂し気に、貧乏らしく見えている。そこを人が立ち去る処なのだ。
島田はまたこの住居すまい以外に粗末な貸家を一軒建てた。そうして双方の家の間を通り抜けて裏へ出られるように三尺ほどのみちを付けた。裏は野ともはたとも片のつかない湿地であった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……肉は取って、村一同冷酒ひやざけを飲んでくらえば、一天たちまち墨を流して、三日の雨が降灌ふりそそぐ。田もはた蘇生よみがえるとあるわい。昔から一度もそのしるしのない事はない。お百合、それだけの事じゃ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
斜なるはたの上にてはたらける浦上人うらかみびと等のそのくはひかる
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
亡恩に榮華えいぐわは盡きむ、里鴉さとがらすはたをあらさむ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
照日てるひはた收穫とりいれに、歡喜よろこびの野の麥苅むぎかり
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
はたうつや鳥さへなか山蔭やまかげ
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
はたにかくるゝ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこに一軒、かしこに一軒、杉の森の陰に三四軒、野のはたの向こうに一軒というふうで、町から来てみると、なんだかこれでも村という共同の生活をしているのかと疑われた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
苦しい十五分か廿分ののち車はようやく留まった。軌道の左側だけが、はたを切り開いて平らにしてある。眼をおおう高粱の色を、百坪余り刈り取って、黒い砂地にしたあとへ、左右に長い平屋を建てた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて、品川も大森も、海もはたい月夜じゃ。ざんざと鳴るわの。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亡恩に栄華は尽きむ、里鴉さとがらすはたをあらさむ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
稲も、はたも、夥多おびただしい洪水のあとである。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)