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湮滅
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いんめつ
ふりがな文庫
“
湮滅
(
いんめつ
)” の例文
いわゆる
中原
(
ちゅうげん
)
の古代文化地帯が、その発源地の最も重要なるものであったときまるならば、たとえ海上の跡はすでに
湮滅
(
いんめつ
)
したにしても
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
四人を
使嗾
(
しそう
)
して綱宗に遊蕩をすすめ、かれらを使嗾したという事実、を
湮滅
(
いんめつ
)
するために、七兵衛らを
煽動
(
せんどう
)
してこれを暗殺した。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
保さんと游さんと墨汁師とである。そして游さんは
湮滅
(
いんめつ
)
の期に
薄
(
せま
)
っていた墓誌銘の幾句を、図らずも救抜してくれたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そう、つまり「発作的兇行」のあと、いかにして屍体を
湮滅
(
いんめつ
)
してしまうか——それにこの場合は焦点がしぼられているのだ。
ロンリー・マン
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その影響の下に日本人の作り出した文化産物も偶然に残存した少数の例外のほかは、実に徹底的に
湮滅
(
いんめつ
)
させられてしまった。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
▼ もっと見る
闇から闇へ葬って、
湮滅
(
いんめつ
)
さすれば何より簡単。……それにはお浦を亡き者にし、一切の証跡消すに
如
(
し
)
くはない。……お浦を殺せ、即座に殺せ!
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たとえ朝鮮という事が直接の注意を読者に促さないとしても、漸次
湮滅
(
いんめつ
)
してゆく東洋の古藝術のために、この一篇を読まれる事を希うのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
金蔵やぶりの盗賊が証拠
湮滅
(
いんめつ
)
のために、小判を地金に鋳潰して蝋燭に作り換えたものではないかと、今までひそかに見込みを付けていたのであるが
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この原稿は危く誰の眼にもふれないで、
湮滅
(
いんめつ
)
してしまう危険がたぶんにあったのであるが、幸運にも全集編纂の時に、世に出ることになったのである。
救われた稀本:——寺田寅彦著『物理学序説』
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
かれの伝記は
湮滅
(
いんめつ
)
して多く伝はらない。ある人の研究に由ると、西鶴は理想も何もない唯俳諧の出来る町人である。
西鶴小論
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
あるいは凡庸の力をもって
僥倖
(
ぎょうこう
)
を得るものあり。あるいは明治以前に生まれて尊王を唱え、その身もその名もともに
湮滅
(
いんめつ
)
して世にあらわれざるものあり。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
(七五)
巖穴
(
がんけつ
)
の
士
(
し
)
、
(七六)
趨舍
(
すうしや
)
(七七)
時
(
とき
)
有
(
あ
)
り、
此
(
かく
)
の
若
(
ごと
)
きの
類
(
たぐひ
)
、
名
(
な
)
(七八)
湮滅
(
いんめつ
)
して
稱
(
しよう
)
せられず、
悲
(
かな
)
しい
哉
(
かな
)
。
国訳史記列伝:01 伯夷列伝第一
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
かくして、恩田父子は、殺人罪目撃者に逃げ出された窮余の一策、わが
巣窟
(
そうくつ
)
に火をかけて、あらゆる罪跡を
湮滅
(
いんめつ
)
し、いずれともなく姿を消してしまったのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
意外の発見である。殆ど思議すべからざる事実に逢着し得たのである。しかしこの伝統もまた三月九日の夜を名残りとして今は全く
湮滅
(
いんめつ
)
してしまったのであろう。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「待ってくれ、それじゃ、智恵子が逃げた後で、死人の糸子が起き上って、証拠を
湮滅
(
いんめつ
)
するために自分を殺した智恵子の出て行った窓を閉めてやったとでも言うのか」
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
君達は、軍閥的国境を
湮滅
(
いんめつ
)
しそれよりもっと悪い経済的商業的障碍を取り除かねばならないのだ。
反戦文学論
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
そして、殺人の総ての証拠を
湮滅
(
いんめつ
)
するために、ネオン・サインを載せたボートには、電気時計と爆薬が装置してある。それは無人の船内で、不気味な時を刻んでいるはずだ。
空飛ぶ悪魔:――機上から投下された手記――
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
自然に埋没してしまう自分の頭が堪らない陰鬱さで動かず、振り立てようにもどうともならぬ無感動な気持ちで、
湮滅
(
いんめつ
)
していった西羽黒の堂塔の跡を眺め廻しているだけだ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
あんな芝居や書物を見る人は、
真面目
(
まじめ
)
に熱心に我を忘れて釣り込まれていたに違ないんでしょう。それでなければ今日まで伝わる前にとくに
湮滅
(
いんめつ
)
してしまうはずであります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かくの如き偉人の事業を
湮滅
(
いんめつ
)
せしめるのは、人類に対する義務にも反するものかと思われる。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
林太郎君在職中遺業の一つがどふやら
湮滅
(
いんめつ
)
せんとするありて、此頃後々迄もはつきり書きて遺したく、それぞれ調べ中に候。昨日も目黒の奥の方の又奥迄人を尋ねまゐり候。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
幕府の手で、いままでのものは
湮滅
(
いんめつ
)
され、これからの仕事は、弾圧されるにきまっている
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杜が現場に落ちていた血痕を
拭
(
ぬぐ
)
って一つの証拠を
湮滅
(
いんめつ
)
し、それからまた毛布についていた血痕の部分を
鋏
(
はさみ
)
で切り取ってマッチ函のなかに収め、同じく証拠湮滅を図ったことである。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
したがって、どんなことがあろうとも、それまでに証跡を
湮滅
(
いんめつ
)
しなければならない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
漢が天下を定めてからすでに五代・百年、
始皇帝
(
しこうてい
)
の反文化政策によって
湮滅
(
いんめつ
)
しあるいは
隠匿
(
いんとく
)
されていた書物がようやく世に行なわれはじめ、文の
興
(
おこ
)
らんとする気運が
鬱勃
(
うつぼつ
)
として感じられた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
賄賂をとって証拠
湮滅
(
いんめつ
)
をはかったのだろうなどと、痛くもない腹をさぐられるようなことにでもなったら、それこそ、のめのめと生きながらえているわけにはゆかぬ、まさに
皺腹
(
しわばら
)
ものである。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
のちに伊牟田も斬首された。証拠の
湮滅
(
いんめつ
)
をはかるためであろう。
天皇:誰が日本民族の主人であるか
(新字新仮名)
/
蜷川新
(著)
肉体の
湮滅
(
いんめつ
)
などは精神の上に何等の影響を及ぼさぬものか。
楞迦窟老大師の一年忌に当りて
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
湮滅
(
いんめつ
)
せられた幸吉のあとを探ったものと見えます。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私はなにも知りません、御家老に汚職の事実があり、それが暴露したそうで、罪状の
湮滅
(
いんめつ
)
を防ぐために非常の処置をとるのだとか聞きました。
日日平安
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかして時々の串または矢は朽廃して
湮滅
(
いんめつ
)
しやすいから特に土壇を築きその
痕
(
あと
)
を明らかにし兼ねて境上の祭を営んだことは
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして京水の墓誌は永遠に
湮滅
(
いんめつ
)
してしまつた。其全文を読み、其撰者の誰なるを知らむと欲するわたくしの望の糸は此に全く断ち切られたのである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
充分に時間の余裕があったのですから、それに尚家に保存されていた沢山の貴重な古記録、例えば
厖大
(
ぼうだい
)
な「
家譜
(
かふ
)
」など
湮滅
(
いんめつ
)
してしまったと聞きました。
沖縄の思い出
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
室内の卓上の兇器をつまんで、別の兇器と取りかえ、証拠を
湮滅
(
いんめつ
)
する ★絹糸を結びつけた毒矢を隙間からうちこんで、被害者を
斃
(
たお
)
し、後でそとへたぐり出す。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
不幸にも天平時代の弥陀坐像は
湮滅
(
いんめつ
)
してしまったが、もしその面影を広隆寺講堂の弥陀像が伝えているとすれば、そうしてそのような弥陀像が法華寺にもあったとすれば
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
当時ロッチの見た日本の風景と生活にして今は既に
湮滅
(
いんめつ
)
して跡を留めざるものも少くはない。ロッチの著作はわたくしが幼年のころに見覚えた過去の時代の
懐
(
なつか
)
しき紀念である。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
事件の
形相
(
ぎやうさう
)
が、どうやらむづかしさうなので、平次はいつもの流儀で、
湮滅
(
いんめつ
)
させられる前に證據をかき集め、それを有機的に組立てて、夜の明けぬうちに
埒
(
らち
)
をあけようとしたのです。
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
〔作者附記〕山浦清麿の遺作は今日猶、不朽な銘刀として遺された物少くありませんが、彼の事歴は、死後
湮滅
(
いんめつ
)
された為、殆ど記録も稀れで、作者の推理と、想像に拠った所寡少としません。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうしたら
可
(
よ
)
かろう。」と、彼は
犯跡
(
はんせき
)
湮滅
(
いんめつ
)
に
就
(
つい
)
て考えた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すべての証拠は
湮滅
(
いんめつ
)
された。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
さる人が渡辺ら四人に命じて、陸奥守に放蕩をさせ、綱宗が逼塞になったこと、そこで放蕩をさせた事実を
湮滅
(
いんめつ
)
するために、四人を暗殺させたこと。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
狐が農作の神のごとく一般に
崇祀
(
すうし
)
せられている起原は、ようやく不明に
帰
(
き
)
しかけているが、それが我々の仲間の採訪によって幸いに
湮滅
(
いんめつ
)
を防ぐことができた。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかし若し三種の書が未だ全く
湮滅
(
いんめつ
)
せずにゐて、他日一たび発見せられ、わたくしがこれを目睹することを得たならば、
微顕闡幽
(
びけんせんいう
)
の真目的は此に始て達せられるであらう。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
品川湾の眺望に対する興味は時勢と共に全く
湮滅
(
いんめつ
)
してしまったにかかわらず、その代りとして興るべき新しい風景に対する興味は今日においてはいまだ成立たずにいるのである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
事件の
形相
(
ぎょうそう
)
が、どうやらむずかしそうなので、平次はいつもの流儀で、
湮滅
(
いんめつ
)
させられる前に証拠をかき集め、それを有機的に組立てて、夜の明けぬうちに
埒
(
らち
)
をあけようとしたのです。
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「アア、又君の
酔狂
(
すいきょう
)
か。それはいいが、肝腎のあいつを逃がしてしまったじゃないか。指環よりも、あいつの方が大切だ、証拠
湮滅
(
いんめつ
)
にやって来るからは、あいつこそ犯人かも知れない」
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼らはあわてていろいろな物を
湮滅
(
いんめつ
)
した。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
錦橋と其末裔との事には
許多
(
きよた
)
の疑問がある。疑問は史料の
湮滅
(
いんめつ
)
したるより生ずるのである。わたくしは抽斎伝中に池田氏の事を叙するに当つて、
下
(
しも
)
の史料を引用することを得た。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
乃
(
すなわ
)
ち私の稚時の古跡はもう影も形もなくこの浮世からは
湮滅
(
いんめつ
)
してしまったのだ……
伝通院
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
過去のある事実が
湮滅
(
いんめつ
)
に
瀕
(
ひん
)
して、かろうじて復原の端緒だけを保留していたのである。もう一度その命名の動機を思い出すことによって、なんらかの歴史の
闡明
(
せんめい
)
せらるべきは必然である。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
“湮滅”の意味
《名詞》
湮 滅(いんめつ)
跡形が残らないように消すこと。
(出典:Wiktionary)
湮
漢検1級
部首:⽔
12画
滅
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
“湮”で始まる語句
湮
湮没