消化こな)” の例文
和郎さんは消化こなすのが役、私は絞るのが役だから和郎さんの方でよく食物しょくもつを消化してくれれば私だって絞る仕事も楽だけれども
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
汝なほ食卓つくゑに向ひてしばらく坐すべし、汝のくらへるかた食物くひものはその消化こなるゝ爲になほ助けをもとむればなり 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
普魯西プロシヤ人は文明の敵だと叫んで見たり、独逸ドイツ人がそばにゐると食つた物が消化こなれないで困るとつたりしたニーチエは、偉大なる「力」の主張者であつた。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
唱歌の長が弓を當てて胡弓のうなりめしてみると、樂器は忽ち哄笑たかわらひ顫音ふるへごゑのおどけた鳴動をして答へた。伊太利亞狂言がよく消化こなれずに腹の中にあるのだらう。
胡弓 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
毛詩鄭箋ていせんと、それさえ消化こなしかねるほどの・文字通りの「スモオル・ラティン・アンド・レス・グリイク」
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
菊がすがれるころになると、新吉にわらわれながら、すそ安火あんかを入れて寝た。これという病気もしないが時々食べたものが消化こなれずに、上げて来ることなぞもあった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
咀嚼して消化こなれたそれは、逸作の心か体か知らないが、かく逸作の閑却された他の部分の空間にまでみて行く——つまり逸作が、かの女の自由な領土であるということだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さうするとおなかの物はすつかりと消化こなれてしまふ。けれどもかめんだときだけにはそれがきかないさうだ。どういふわけかといふと、亀は堅い甲羅かふらを着てゐるから、蛇いちごもきかない。
蛇いちご (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
呑まれた小宮山は、怪しい女の胃袋の中で消化こなれたように、つくばってそれへ。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
霧は並木路をつつんでしまって、鈍い光をはなっている瓦斯ガス灯がくすぶった蝋燭のようにみえる。私の両の肩をいつもより重くしつけているものがある。おおかた晩に食ったものが消化こなれないのだろう。
(嚥んだり噛んだり消化こなしたり)
佐藤春夫詩集 (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
「よくまあ消化こなすもんやなア。」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
汝の聲はそのあぢはじめいとはしとも、後消化こなるゝに及び極めて肝要なる滋養やしなひを殘すによりてなり 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
消化こなれないかた團子だんごとゞこうつてゐるやう不安ふあんむねいだいて、わがへやかへつてた。さうしてまた線香せんかういてはりした。其癖そのくせ夕方ゆふがたまですわつゞけられなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし料理方が悪いと消化こなれないから病人に食べさせられないけれども家で煮るように外の物を
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ひとしずか歩行あるきながら、消化こなして胃のに落ちつけようと思ったから。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
医者の説明を聞くと、人間の胃袋ほど横着なものはないそうです。かゆばかり食っていると、それ以上の堅いものを消化こなす力がいつの間にかなくなってしまうのだそうです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんなものをよこされては溜まらんね。オットどっこい、また来た。今度はかずだ。乾固ほしかたまって塩の辛いやつろくに塩出しもしないでこしらえるから消化こなそうと思っても消化れない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「何、綿が消化こなれるもんか。」
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
消化こなれない堅い団子が胃にとどこおっているような不安な胸をいだいて、わが室へ帰って来た。そうしてまた線香をいて坐わり出した。そのくせ夕方までは坐り続けられなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
動物性と同じくらいに消化こなれますと云われたので急に豆油がありがたくなった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうして御腹おなか消化こなすために、わざわざここまで歩るいていらしったの」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さうして御腹おなか消化こなために、わざ/\此所こゝまでるいてらしつたの」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)