流浪るらう)” の例文
私が流浪るらうした土地には悉くあなたも行くのです。私の馬蹄の印されたところには何處にもあなたの輕やかな足跡が同じやうにいんされるのです。
流浪るらうの女人を本属にかへすは法式の恒例であると、相馬小次郎は法律に通じ、思ひやりに富んで居た。衣一襲ひとかさねを与へて放ちかへらしめ、つ一首の歌を詠じた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たれにか棄てられけむ、一頭いつとう流浪るらうの犬の、予が入塾の初より、数々しば/\庭前ていぜん入来いりきたり、そこはかと𩛰あさるあり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
退身たいしん流浪るらうの身と成りしが二君に仕へるは武士さむらひ廉恥はぢいる所成れ共座してくらへば山もむなし何れへか仕官しくわんつかんと思ひしに不幸にも永のわづらひに夫も成らず困苦こんくに困苦を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
悲願の尊者、諸菩薩しよぼさつよ、ただ三界さんがい流浪るらうする
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
假初かりそめならぬ三えんおなじ乳房ちぶさりしなり山川さんせんとほへだたりし故郷こきやうりしさへひがしかたあしけそけし御恩ごおん斯々此々かく/\しか/″\はゝにてはおくりもあえぬに和女そなたわすれてなるまいぞとものがたりかされをさごゝろ最初そも/\よりむねきざみしおしゆうことましてやつゞ不仕合ふしあはせかたもなき浮草うきくさ孤子みなしご流浪るらうちからたのむは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
討其手筋てすぢにて科人相知れ其身の本望ほんまう公邊かみへの御奉公神妙しんめうに思召幸之進かうのしん取れ候金子きんすの中四百兩相殘あひのこり候に付瀬川へ下さるゝ間はゝ諸共流浪るらう致さぬ樣取計らひつかはせと申渡され皆々みな/\有難ありがたき旨之を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
流浪るらう致しをり不便ふびんに存候故途中とちうよりつれかへり私し明家あきやへ住居させ候に追々狂氣きやうきをさま正氣しやうきに立歸り以前の如く渡世とせい致し居候内享保きやうほ元申年十一月廿八日かと覺え候が其日は大雪おほゆきにて人通りもまれなるにお三には酒に圍爐裏ゐろりまろおち相果あひはて申候と聞て次右衞門三五郎は役柄やくがらなれば早くも心付其死骸しがい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)