此間こないだ)” の例文
「うむ! ……一生君には言うまいと思っていたけれど、……此間こないだ行って見た。ふゝん!」と嘲笑あざわらうように、私の顔を見て言った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
丈「おや/\清水の息子さんか、此間こないだは折角おでだったが、取込とりこんでいて失敬を云って済みません、何かえ清次さんのおつれかえ」
カラクリがり分らア。全くよ。俺ア、つい此間こないだ迄信者様だった。騙されたのも知らねえで悦んで奴等の手品に見とれていたからなア。
反逆 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
此間こないだも言うた通り、わいは明日の日にでも発って、マニラへ行こ思てるねん。君枝の身体ももうちゃんとかたづいたし、思い残すところはない。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
だからお勢みたようなこんな親不孝なもんでもそう何時までもお懐中ぽっぽあすばせてもおけないと思うと私は苦労で苦労でならないから、此間こないだあたしがネ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「そんな人があるから、いけないんですよ。——それからまだ面白い事があるの。此間こないだだれか、あの方のとこ艶書えんしょを送ったものがあるんだって」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰でも、此間こないだ釣ツたのは大きかツたといふですが、実際先日挙げたのは、尺余りあツて、随分見事でした。此れ等は、また、さう大きい方で無いです。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
嬢々おつかさんはたつた此間こないだ無くなりました。ニユウ、イングランドから来た旅商人と喧嘩をして、余りおこつたので、卒中とかいふ病をおこしたのだといふことです。」
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
「へ、そうでござんしたかね。」と、母親は此間こないだ中の疲れが出て、肩や腰が痛いと言って、座敷の隅の方に蒲団を延べて按摩あんまに療治をさせながら、いい心持に寝入っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
だもんだから、東京の方を方々聞合して、此間こないだやう/\手紙を寄越したんです。僕が歸らなければ母も死ぬんです。これから歸つて、母を養はなければならないんです。學校はもう止めです。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこに此間こないだ名刺を置いて歩いたとき見て置いた鳥屋がある。そこで牝鶏めんどりを一羽買って、伏籠を職人に注文して貰うように頼んだ。鳥は羽の色の真白な、むくむくと太ったのを見立てて買った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
それとも又その面が此間こないだの震災で焼失していたらどうであろう。
所感 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「で、此間こないだから、飮むものも飮まずに、せつせと溜めましたよ」
「おはようございましたこと、何は、あの此間こないだから行って見たいッて、おっしゃってでした、俤橋、海晏寺かいあんじや滝の川より見事だッて評判の、大塚の関戸のお邸とやらのもみじの方は、お廻りなすっていらっしゃいましたか。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「雪岡さん、君は一体どんな考えでいたんです? つい此間こないだ函根に行く前に奇麗に此女これと手を切って行ったんじゃありませんか」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
さ「えゝあたしア是まで寸白すばくを知りませんよ、それに此間こないだは又結構なお香物こう/\をくだすって有難うございました、あれさ、お重ねよう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だから今生き残っている兄から、つい此間こないだ、うちの姉達が芝居に行った当時の様子を聴いた時には驚ろいたのである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
マア本田さん聞ておくんなさい、真個ほんとにあの児の銭遣ぜにづかいの荒いのにも困りますよ。此間こないだネ試験の始まる前に来て、一円前借して持ッてッたんですよ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「それより此間こないだ貸した銭返してくれ。利子は十八銭や、——なにッ! 十八銭が高い? もういっぺん言うてみイ」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
此間こないだ、お茶屋の旦那の引懸けたのなどは、引いては縦ち、引いては縦ち、幾ら痿やそうとしても、痿えないでしよう。やや暫くかかって漸くすくい上げて見ると、大きな塩鮭程なのでしょう。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
軟派の一人が、何か近い処で好い物を発見したというような事を言う。そんなら今からこうというものがある。此間こないだ門限の五分前に出ようとして留められたが、まだ十五分あるから大丈夫出られる。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
永「此奴こいつ此間こないだ三両貸せてえから貸したが返さぬで、袈裟文庫、なんじゃえ、出家の身の上で十両などと、われが身に何で金がる」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ちょうど好いとこどした。此間こないだから私も見て知らん顔はしていましたけど、一遍お話を聴いてみたいと思うてたのどす」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「オヤ何人どなたかと思ッたらお珍らしいこと、此間こないだはさっぱりお見限りですネ。マアお這入はいんなさいナ、それとも老婆ばばアばかりじゃアおいやかネ、オホホホホホ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此間こないだうちへ行ったら、門司もじ叔父おじに会いましてね。随分驚ろいちまいました。まだ台湾にいるのかと思ったら、何時の間にか帰って来ているんですもの」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それより、此間こないだ貸した銭返してくれ。利子は十八銭や。——なにッ? 十八銭が高い?」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「うむ。ある。此間こないだ行って見たのだ」
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
幸「どうか願います、お近いから近日柳島の宅へ一度来てください、漸々よう/\此間こないだ普請ふしんが出来上ったばかりだから、種々誂えたいものがあります」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此間こないだ社に来て、昨夜ゆうべ耽溺をして来た、と言っていたと聞いたから、はあ此奴こいつは屹度桜木に行ったなと思ったから、直ぐ行って聞いて見てやった。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「この羽織はつい此間こないだこしらえたばかりなんだよ。だからむやみに汚して帰ると、さいしかられるからね。有難う」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんでもつい此間こないだ籍を入れはって、仲良うやったはる言うことです。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
さい此間こないだ死んだ。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
兼「お嬢様、重さんが家根屋やねやさんを連れて来ましたよ、此間こないだあなたに愛憎尽あいそづかしを云ったのを悪いと思って来たのでしょう」
此間こないだの晩もあるのに、あんまり来ようが遅いから、来たらちょい口説くぜつを言ってやろう、それでも最う来るだろうから、一つ寝入った風をしていてやれ
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
お嫁に行くとき買ってやらない代りに、今に買ってやるって、此間こないだからそう云ってたのよ。だからそのつもりでくれたんでしょうおおかた。心配しないでもいいわ
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男「此間こないだ君がおれうちへ、まア鍋焼饂飩屋の姿で、ずか/\入って来たから、奉公人も驚き、僕も困ったじゃアないか」
此間こないだ中から大阪などへ行っていて留守ではなかろうか。大阪には一人深くあの女を思っている男があるのだ。……自分が女を初めて知った時の夏であった。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「なに、つい此間こないださ。今日で二週間になるか、ならないぐらいのものだろう」
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此間こないだ佐吉さきちの野郎が水を汲んで喧嘩をしやした、恰でお筆さんは手をおろす事もないが、佐吉の野郎が助倍すけべいな奴で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「もう此間こないだから何かこれには深いわけがあるにちがいないから、母親のおらんところで、とっくり姉さんの腹を一遍訊いてみたいと思うてたら、私の想像したとおりやった」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「ええ、つい此間こないだ生れたばかりです」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
月「お村はん、今おっかはんに三浦屋の御舎さんの事を話したのだが、うんとさえ云えば大した事になるのだよ、さぞ此間こないだからお前に種々いろ/\な事を云うだろうね」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう此間こないだから訊こう訊こうと思って、幾度もいい出しかけては、差し控えていた、女の借金が今どうなっているか、また自分が長い間仕送った金が、その借金を減らすために
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
此間こないだ買ったの」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此間こないだ甚公じんこうの野郎が涙をこぼながら、あのは泥坊なぞをする様な者じゃアねえ彼様あんな娘はねえってう云ってた
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ええ此間こないだ初めて一遍会いました」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
此間こないだ買つたの」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幸いい花がありましたからお花を手向たむけましたが、お墓に向いましてなア、実に残念でございまして、なんだか此間こないだまで富/\と仰しゃったお方がまアどうも
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
新「まだ研ぎようを本当に知りませんが、此間こないだお百姓が来た時聞いて教わったばかりでまだ研がないので」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云って此家こゝを出る訳にもかず、何うかして茂之助が死ねばいと思って居るのに、中々悪達者わるだっしゃで死なゝいのだよ、此間こないだもおはらひどく痛むと云うから、宜い塩梅だ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)