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このほう
ふりがな文庫
“
此方
(
このほう
)” の例文
『さようか。いや
御念入
(
ごねんいり
)
は結構。
此方
(
このほう
)
も、歳のせいか、近来はとかく耳が遠い。それにな、物忘れや勘違いが多うて、
閉口
(
へいこう
)
でござるよ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たゞし、
此方
(
このほう
)
は
掛物
(
かけもの
)
の
前
(
まへ
)
に立つて、はあ
仇英
(
きうえい
)
だね、はあ応挙だねと云ふ丈であつた。
面白
(
おもしろ
)
い
顔
(
かほ
)
もしないから、面白い様にも見えなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
真の定鼎はまだ
此方
(
このほう
)
に蔵してあるので、それは太常公の
戒
(
いましめ
)
に
遵
(
したが
)
って
軽〻
(
かろがろ
)
しく人に示さぬことになっているから
御視
(
おみ
)
せ申さなかったのである。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
此方
(
このほう
)
だと炭の棒の消費が少ない。その他炭の棒やホヤや附属器械のパテントを一々数え立てたら限りがない。
ランプのいろいろ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と口を
尖
(
とん
)
がらかしたも道理こそ。
此方
(
このほう
)
づれの
体
(
てい
)
は、と見ると、私が
尻端折
(
しりぱしょり
)
で、下駄を持った。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
使を以て小栗に申出ずるよう江戸に
浅田宗伯
(
あさだそうはく
)
という
名医
(
めいい
)
ありと聞く、ぜひその診察を
乞
(
こ
)
いたしとの請求に、
此方
(
このほう
)
にては仏公使が浅田の
診察
(
しんさつ
)
を
乞
(
こ
)
うは日本の
名誉
(
めいよ
)
なりとの考にて
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
お手紙を見て
驚喜
(
きょうき
)
仕候、両君の
室
(
へや
)
は隣室の客を驚かす恐れあり、小生の室は御覧の如く独立の離島に候間、
徹宵
(
てっしょう
)
快談するもさまたげず、是非
此方
(
このほう
)
へ御出向き下され度く
待
(
ま
)
ち上候
恋を恋する人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
何がさて空想で
眩
(
くら
)
んでいた
此方
(
このほう
)
の眼にその
泪
(
なみだ
)
が
這入
(
はい
)
るものか、おれの心一ツで親女房に
憂目
(
うきめ
)
を見するという事に其時はツイ気が付かなんだが、今となって
漸
(
よ
)
う漸う眼が覚めた。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
五銭の葉巻を二十銭に売った。お歌さんが勘定して見たら、
此方
(
このほう
)
だけで六十本売れていた。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
みんな一時のなぐさみにして、あとは野となれ山となれ——芸人芸者の我々が、もし、
此方
(
このほう
)
だけを打込んで、あとで知らぬと捨てられたら、そりゃ眼も当てられぬ浅間しさじゃ。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
歿
(
なくな
)
られた
良人
(
つれあひ
)
から
懇々
(
くれぐれ
)
も頼まれた秘蔵の秘蔵の
一人子
(
ひとりつこ
)
、それを瞞しておのれが懲役に遣つたのだ。
此方
(
このほう
)
を女と
侮
(
あなど
)
つてさやうな
不埒
(
ふらち
)
を致したか。
長刀
(
なぎなた
)
の一手も心得てゐるぞよ。恐入つたか
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
思召の如く替へおほせて、二十九日敵陣へ無二無三に切入り給はんには、味方の勝利疑ひ有るべからず。
仮令
(
たとえ
)
ば敵方にて
此方
(
このほう
)
の色を察し出向はゞ、その処にて合戦すべし、何のこはきことが候ふべき。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「
怪
(
け
)
しからぬ男だ、帰ったら
糾明
(
きゅうめい
)
せねばならぬ。——
其許
(
そこもと
)
を怨むどころか、
此方
(
このほう
)
こそ、門下どもの統御の不行届き何とも面目ない」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
音楽は、
始
(
はじ
)
めは
琴
(
こと
)
を習つたが、後にはピヤノに
易
(
か
)
えた。ヷイオリンも少し
稽古
(
けいこ
)
したが、
此方
(
このほう
)
は手の
使
(
つか
)
い
方
(
かた
)
が六※かしいので、まあ
遣
(
や
)
らないと同じである。芝居は滅多に行つた事がなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
此方
(
このほう
)
がいい、半紙じゃ切らなけりゃならないから面倒だ」
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この度の役目上、
此方
(
このほう
)
の好意に対して、礼をいわれる覚えこそあれ、刃物三昧をうけるなどとは、夢にも思い及ばぬ事。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一寸
(
ちよつと
)
好
(
い
)
い景色でせう。あの
建築
(
ビルヂング
)
の
角度
(
アングル
)
の所丈が少し出てゐる。
木
(
き
)
の
間
(
あひだ
)
から。ね。
好
(
い
)
いでせう。君気が付いてゐますか。あの建物は
中々
(
なか/\
)
旨
(
うま
)
く出来てゐますよ。工科もよく出来てるが
此方
(
このほう
)
が
旨
(
うま
)
いですね
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
町人共の
喧騒
(
けんそう
)
は、むりもない。当然、彼らを先に
安堵
(
あんど
)
させてやらねばならぬ、騒ぎを見てから馳せつけるは、すでに、
此方
(
このほう
)
共の手ぬかりであった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
舐
(
な
)
めてつい駄ぼらが出たのだろうが、実は
此方
(
このほう
)
こそ、吉岡清十郎の高弟、祇園藤次という者だ。以後、京流吉岡の悪評をいいふらすと、ただはおかんぞ
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同心河合伝八を殺害した不敵な
曲者
(
くせもの
)
は、およそ
此方
(
このほう
)
にも目ぼしがついておるが、前後の事情、また官庫の附近に落ちていた証拠の品などから察するに
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そちの仕官中に、
国許
(
くにもと
)
で、一、二度見かけた事がある。腕のたつ武士と、噂をきいていたが、いつの間にか、
此方
(
このほう
)
の在府中に出奔したという事じゃった」
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「たった今だ、ふいを狙って、
此方
(
このほう
)
を河へ突き落すと、白魚橋を越えて、北河岸へ疾走した。すぐに行け」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この戦時、しかも敵の残党を
詮議
(
せんぎ
)
しておる
此方
(
このほう
)
にたいして、
御辺
(
ごへん
)
のいっていることは、まるで平時の医者の言だ。いまはそんなことに耳をかしているいとまはない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小癪
(
こしゃく
)
をいうなどと、誰やら
何日
(
いつ
)
か
此方
(
このほう
)
を
罵倒
(
ばとう
)
した者もいたが、これで佐々木小次郎が、天下の剣豪であるばかりでなく、軍学にも達していることが、よく分ったろう。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「たれかの紹介状でもあればなおよろしいが。——そうそう月ヶ瀬に
此方
(
このほう
)
の懇意にしている
鎧師
(
よろいし
)
で柳生家へも出入りしている老人がある、なんなら頼んであげてもよいが」
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「左様なこと、汝らが、訊かんでもいい。
此方
(
このほう
)
は、工事場見廻りの役、怪しいと認めたによって、取調べるのじゃ——誰様のおゆるしをうけて、お城の地勢や、御普請などを写し取ったか」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おやじ、
寔
(
まこと
)
に相済まぬ頼みだが、実は、鳥目を一銭も持ち合せておらぬ。——と申しても、無心を頼むわけではない、
此方
(
このほう
)
が持ち合せておる品物を、その価として取っておいてくれまいか」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
此方
(
このほう
)
は、南の与力、鈴木藤吉郎じゃ、これにおるは、小倉庵の長次——」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、それにしても、
此方
(
このほう
)
の申したことは、多年の体験と
感得
(
かんとく
)
からつかみ得た単純な道理にすぎない。まだ、その理法を明らかにし、それを基本として一流の兵法を構成するまでには至っていない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
成敗
(
せいばい
)
は、
此方
(
このほう
)
らがする。おまえ達は、持場へ行って仕事にかかれ」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
死後生あり、生後死あり、人間の一魂は、生々死々
輪輾
(
りんてん
)
して極まりのないものなのだ。もし
此方
(
このほう
)
が狐狸の
性
(
しょう
)
ならば、お前の
鉾
(
ほこ
)
先に当るべくもない。そちもよもや変化に劣るが如き
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な腕は持つまい。
剣の四君子:04 高橋泥舟
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——な、何とした事。これやひどい、
此方
(
このほう
)
、一人を置いて」
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
此方
(
このほう
)
は、清十郎の叔父にあたる者でござる。おてまえ様の儀は、かねて、清十郎からも、頼母しき
御仁
(
ごじん
)
なりと承っておりました。どういう行き違いか、門弟どもの
卒爾
(
そつじ
)
は、この老人に免じて勘弁して下さるよう」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
此方
(
このほう
)
のたましいを、何で足にかけられた」
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——無事な所まで、
此方
(
このほう
)
の船で」
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“此方”で始まる語句
此方様
此方側
此方衆
此方面
此方等
此方向
此方持
此方組
此方樣
此方人等