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ぎまん
ふりがな文庫
“
欺瞞
(
ぎまん
)” の例文
欺瞞
(
ぎまん
)
と強欲と
狡猾
(
こうかつ
)
のために、いつも抑えつけられ、踏みにじられている、無知や愚鈍の
哀
(
かな
)
しさは、飽きるほど見もし聞きもしている。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さすがに、これには彼もぎょっとしたが、いかにも柔い
嫋々
(
なよなよ
)
しい彼の体は、充分に心の乱れた女房の眼を
欺瞞
(
ぎまん
)
することに成功した。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けっして、そんな卑劣漢じゃない! 少なくとも、あなたはあまり長く自己
欺瞞
(
ぎまん
)
をやらないで、一度に最後の柱へぶっつかったのです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
要するに真の詩は、「詩的の内容」が「詩的の形式」に映ったもので、この内容のない韻文は、実体なき
欺瞞
(
ぎまん
)
の幻影にすぎないのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
何が満たしてくれるであろうか? そして右の二つの偶像さえ、実は崇高な
欺瞞
(
ぎまん
)
であって、しかも女のうちの多くの者には拒まれており
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
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自己
欺瞞
(
ぎまん
)
に陥り、ときどきはっきりと、自分は今こそなんら心配することなく支店長代理と争ってよいのだ、と信じるのだった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
迷信、
頑迷
(
がんめい
)
、
欺瞞
(
ぎまん
)
、偏見など、それらの悪霊は、悪霊でありながらもなお生命に執着し、その
妖気
(
ようき
)
の中に歯と爪とを持っている。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それと結びついて政治学に伴う困難は、政治で語られる言葉が、多少とも現実と合わなかったり
欺瞞
(
ぎまん
)
を
含
(
ふく
)
んでいることである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
自分に新しい学問の必要を教えてくれたのは、あの少年の頃の医者の
欺瞞
(
ぎまん
)
だ。あの時の
憤怒
(
ふんぬ
)
が、自分に故郷を捨てさせたのだ。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
芥川
(
あくたがわ
)
が彼を評して
老獪
(
ろうかい
)
と言ったのは当然で、彼の道徳性、謹厳誠実な生き方は、文学の世界に於ては
欺瞞
(
ぎまん
)
であるにすぎない。
デカダン文学論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
かの公卿一味の“文談会”なども、この老学者を引っぱり出して、表面、
資治通鑑
(
しじつがん
)
の講義を聴く会だなどと、世間を
欺瞞
(
ぎまん
)
していたものである。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
第一は伯父さんや刑事が賊の足跡を見落したという解釈、賊は例えば獣類とか鳥類とかの足跡をつけて我々の目を
欺瞞
(
ぎまん
)
することが出来るからね。
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
人間の誠意や愛が他人に働きかけて、それが人の世界をもっと住みよいものにしない限り、そうした教えは遂に何らかの
欺瞞
(
ぎまん
)
でなくて何であろう。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
自分の餘命と藝術を、
不肖
(
ふせう
)
の伜に捧げ盡して惜まなかつた、初代勘兵衞の
欺瞞
(
ぎまん
)
は、何は兎もあれ、一應は許さなければならない種類のものだつたのです。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただ一つ、兄に罪ありとすれば、それは
欺瞞
(
ぎまん
)
と虚構の上に、人間の幸福は築かれないということを、忘れていたことくらいのものであろうと思われます。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
第二には工場の組織にいつも
欺瞞
(
ぎまん
)
が潜むのです。それは結局商業主義であって、何よりも利が眼目です。質はこれに比べるなら
二次
(
にのつぎ
)
のことに過ぎません。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかし偉大なる
欺瞞
(
ぎまん
)
者があって常に私を欺いているのでもなかろうか。真の神という如きものもないのではないか。しかし斯くまで疑うにしても、欺かれる私はある。
デカルト哲学について
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
つじつまを合わせるために多少の
欺瞞
(
ぎまん
)
を許容したこしらえものの事であり、随筆とは筆者の真実、少なくも主観的真実を記録したものであるというふうにも見られる。
科学と文学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
自己
欺瞞
(
ぎまん
)
と
酩酊
(
めいてい
)
とに過ごそうとするのか?
呪
(
のろ
)
われた
卑怯者
(
ひきょうもの
)
め! その間を
汝
(
なんじ
)
の
惨
(
みじ
)
めな理性を
恃
(
たの
)
んで
自惚
(
うぬぼ
)
れ返っているつもりか?
傲慢
(
ごうまん
)
な身の
程
(
ほど
)
知らずめ!
噴嚏
(
くしゃみ
)
一つ
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
いや、我我の自己
欺瞞
(
ぎまん
)
は一たび恋愛に陥ったが最後、最も完全に行われるのである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして
欺瞞
(
ぎまん
)
に落ちた周囲の中に、一人離れて真理を追求しつつ
敬虔
(
けいけん
)
なる努力をつづけている選まれたる人と、敗戦の苦痛によって鍛え上げられた一民族のうちに潜んでいる再興の力とを
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
隠さずに真実を言ってくれ。自分に少しの
欺瞞
(
ぎまん
)
もないことを言ってほしい
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
どうでしょう、私の心に自信が湧いてきたのです。私が自分の才能と認めているものは
悉
(
ことごと
)
く一種の自己
欺瞞
(
ぎまん
)
なのではあるまいか。私にあるただ一つの情熱、自分はもうそれを
恃
(
たの
)
むわけにはゆかない。
聖アンデルセン
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
すでにそれはぼくを支える力ではなく、ぼくの生身を、その自己
欺瞞
(
ぎまん
)
を、裏面からするどい
尖端
(
せんたん
)
で突つきつづけて
止
(
や
)
めない。……「率直」な実行力とは、健康の同義語なのだ、とふいにぼくは思った。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「
欺瞞
(
ぎまん
)
だ。欺瞞だ。」
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そのとき彼は、自分が汚れていること、姉弟を伴れ出すのも
欺瞞
(
ぎまん
)
であることに気づき、するどい悔恨と苦痛におそわれた。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何という驚くべき
欺瞞
(
ぎまん
)
であっただろう。パノラマ館の
外
(
そと
)
には、電車が走り、物売りの屋台が続き、商家の
軒
(
のき
)
が並んでいる。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
信長
入洛
(
じゅらく
)
の事、聞き及ぶが如く也。
偽
(
ぎ
)
将軍を
擁立
(
ようりつ
)
し、四民を
欺瞞
(
ぎまん
)
せんとするも、
政事
(
まつりごと
)
を
私
(
わたくし
)
し、その
暴虐
(
ぼうぎゃく
)
ぶりは、日を
趁
(
お
)
うて
蔽
(
おお
)
い
難
(
がた
)
いものがある。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところがそんなことは皆
嘘
(
うそ
)
であって、私にたいするあなたの愛情は
欺瞞
(
ぎまん
)
にすぎなかったことを、私は今
覚
(
さと
)
りました。あなたは私を
弄
(
もてあそ
)
んでいらした。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
然
(
しか
)
し、私の言っていることは、真理でも何でもない。ただ時代的な意味があるだけだ。ヤッツケた私は、ヤッツケた言葉のために、
欺瞞
(
ぎまん
)
を見破られ、論破される。
余はベンメイす
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
人は未来の生を、かの天国にか、かの地獄にか、どこかに所有すると言わば言うがいい。私はそういう
欺瞞
(
ぎまん
)
の言葉を信じない。ああ人は私に犠牲と脱却とを求める。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
兵粮丸には、
麻痺藥
(
まひやく
)
を用ひて、一時胃を
欺瞞
(
ぎまん
)
するのと、カロリーの多い食糧のエキスを取つて、少量の食用で大きいエネルギーを出させるやうに出來たのとあります。
銭形平次捕物控:025 兵粮丸秘聞
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いろいろの策略とか術策とか謀略とか、時には
欺瞞
(
ぎまん
)
や
威嚇
(
いかく
)
や暴力やテロすらも行われるのである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
忍従か、脱走か、正々堂々の戦闘か、あるいはまた、いつわりの妥協か、
欺瞞
(
ぎまん
)
か、懐柔か、to be, or not to be, どっちがいいのか、僕には、わからん。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いや、たぶんこれは明瞭に愚かしい自己
欺瞞
(
ぎまん
)
だ。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
【ロ】 視覚をあざむく(F・Mなし) ★前記は耳にたいする
欺瞞
(
ぎまん
)
だが、ここにしるすのは目にたいする欺瞞である。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「たれか、そのような、
欺瞞
(
ぎまん
)
に乗せられようぞ。予は速やかに出陣する。そして呉を討ち、関羽の霊をなぐさめよう」
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気おくれがしてるそれらのばかな善人らのうちには、自分らのほうが誤りで
欺瞞
(
ぎまん
)
者どものほうが正当だと、ついに思い込んでしまってる者さえある。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
欺瞞
(
ぎまん
)
は一七八九年をめとり、神法は一つの憲法の下に隠れ、擬制は立憲となり、特権や
妄信
(
もうしん
)
や底意は
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
兵糧丸には、麻痺薬を用いて、一時胃を
欺瞞
(
ぎまん
)
するのと、カロリーの多い食糧のエッキスを取って、少量の食用で大きいエネルギーを出させるように出来たのとあります。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
修業者たちがその
欺瞞
(
ぎまん
)
を看破(どうして看破しないことがあろう)して、なおどれだけ自分を求め、自分を慕って来るかという、衆望の熱度を知ることができるのであった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
伝統とか、国民性とよばれるものにも、時として、このような
欺瞞
(
ぎまん
)
が隠されている。凡そ自分の性情にうらはらな習慣や伝統を、
恰
(
あたか
)
も生来の希願のように背負わなければならないのである。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
目出度いとも、何とも、形容の言葉が無かった。馬鹿息子である。女とは、どんなものだか知らなかった。私はHの
欺瞞
(
ぎまん
)
を憎む気は、少しも起らなかった。告白するHを可愛いとさえ思った。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
架空
(
かくう
)
な
欺瞞
(
ぎまん
)
や希望的観測の上に政策を立てないためにも不可欠である。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
死の
欺瞞
(
ぎまん
)
について奇矯な着想が幾つかある。その一つは職業利用の殺人で、自殺したとしか考えられないものである。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼女のそういう無分別さの半ばは、みずから好んでやってる
欺瞞
(
ぎまん
)
だった。他の半ばは、恋したいという楽しい馬鹿げたいつまでも
失
(
う
)
せない欲求だった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
自分はこの
叡山
(
えいざん
)
の首座にあって、天台の法燈に、
欺瞞
(
ぎまん
)
の
襟
(
えり
)
をかさねていた慈円僧正は、われわれの
輿論
(
よろん
)
に追われていたたまれず、尾を巻いて山を逃げ降りた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんなからくりは珍しいことではない、我々の身辺にはもっともっと
辛辣
(
しんらつ
)
な悪どい
欺瞞
(
ぎまん
)
や詐偽が網を張っている、ただそれが美しい修辞法で巧みに
蔽
(
おお
)
われているだけにすぎないのだ。
留さんとその女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私の
欺瞞
(
ぎまん
)
、私の汚辱、私の
怯懦
(
きょうだ
)
、私の裏切り、私の罪悪、それを私は一滴一滴と飲み、また吐き出し、また飲み込み、夜中に終えてはまた昼に始め、そして私の朝の
挨拶
(
あいさつ
)
も偽りとなり
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
平次は黙って涙を
拭
(
ぬぐ
)
いました。自分の余命と芸術を、不肖の倅に捧げ尽して惜しまなかった、初代勘兵衛の
欺瞞
(
ぎまん
)
は、何はともあれ、一応は許さなければならない種類のものだったのです。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
欺
常用漢字
中学
部首:⽋
12画
瞞
漢検1級
部首:⽬
16画
“欺瞞”で始まる語句
欺瞞者
欺瞞性