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櫛比
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しっぴ
ふりがな文庫
“
櫛比
(
しっぴ
)” の例文
ポツポツやけのこりの鉄骨が立って居るばかり、
櫛比
(
しっぴ
)
した通並は一目で本所まで見晴せそうだ。三宅坂へ出て、半蔵門辺のやけ跡を見る。
日記:09 一九二三年(大正十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
お互に、糞丁寧にお辞儀をする人々。町の両側に
櫛比
(
しっぴ
)
する店は、間口がすっかり開いていて、すべての活動を、完全にさらけ出している。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
すべて嫖客の便を計って陰陽の気の物をひさぐ店が
櫛比
(
しっぴ
)
しているところから江戸も文久と老いてさえ、この辺は俗に照降町と呼ばれていた。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
右手の道は、工事中の活動写真館があったり、空地があったりするが、その先は人家が
櫛比
(
しっぴ
)
して省線の
停車場
(
ステーション
)
になっている。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
浅草観音堂裏手の境内が
狭
(
せば
)
められ、広い道路が開かれるに際して、むかしから其辺に
櫛比
(
しっぴ
)
していた
楊弓場
(
ようきゅうば
)
銘酒屋のたぐいが
悉
(
ことごと
)
く取払いを命ぜられ
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
歩道には大きな自然石が出鱈目に敷かれて、漁村のような原始的な建物が
櫛比
(
しっぴ
)
している。通りの巾は一
間
(
けん
)
もあろうか。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
木曾福島の関所の高地から目の下の
宿
(
しゅく
)
を見おろすと、屋根へ石をのせた家ばかりが
櫛比
(
しっぴ
)
していて、ちょうど豆板という菓子でも
干
(
ほ
)
してあるような奇観。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人家が独立して周囲に
立木
(
たちき
)
がある為に、
人家
(
じんか
)
櫛比
(
しっぴ
)
の街道筋を除いては、村の火事は
滅多
(
めった
)
に大火にはならぬ。然し火の
粉
(
こ
)
一つ飛んだらば、必焼けるにきまって居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
あるものは「奴隷の湖」を越してマカラム街に
櫛比
(
しっぴ
)
する
珈琲
(
コーヒー
)
店の食卓へ、またはホテル
皇太子
(
プリンス
)
の婦人便所へ、他の一派は、丘の樹間に
笹絹
(
レース
)
のそよぐ総督官舎の窓へと
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
(宏壮な建物が
櫛比
(
しっぴ
)
してあるといい度いが、場所によるとそれ程にはいかぬ。上野からはいって来た方面はむしろ歯が抜けたように立っているという方が適切である。)
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
文字通り目茶苦茶に
櫛比
(
しっぴ
)
していたが、それは全く見る人の心を、都会嫌忌にまで導くに足りた。
畳まれた町
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夜明前には奥漢鉄路で捕えられた二百名からの党員が銃殺されて、珠江に投げ棄てられた死体が河畔の摩天楼の下に
櫛比
(
しっぴ
)
して河底に埋もれ、
蛋民
(
タンミン
)
によって水葬されたのだ。
地図に出てくる男女
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
こうした方々が、白壁の小家が
櫛比
(
しっぴ
)
するこの狭衝の町、また、イラクのバグダットと肩をならべる世界一暑い首府の——ムスカットを見ちがえるように飾ってしまったのである。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
人家の
櫛比
(
しっぴ
)
と煤煙が近づき、車はその中へ突入します。北千住駅で私たちは降ります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それでも
幾日
(
いくにち
)
めか、
幾月
(
いくつき
)
めか、
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
に
漂
(
ただよ
)
った
暁
(
あかつき
)
には、
燈火
(
ともしび
)
の
美
(
うつく
)
しい、
人影
(
ひとかげ
)
が
動
(
うご
)
く、
建物
(
たてもの
)
の
櫛比
(
しっぴ
)
した、にぎやかな
港
(
みなと
)
に
入
(
はい
)
ってきて、しばらくはおちつくことができるのだと
知
(
し
)
られました。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ここは世界に
著名
(
なだた
)
るアルプス山麓の大遊楽境、宏壮優雅な
旅館
(
ホテル
)
・
旗亭
(
レストオラン
)
が
甍
(
いらか
)
をならべ、
流行品店
(
グラン・モオド
)
、
高等衣裳店
(
スチュディオ
)
、昼夜銀行に電気射撃、賭博館や劇場やと、至れり尽せりの近代設備が
櫛比
(
しっぴ
)
して
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
文化風の建物が
櫛比
(
しっぴ
)
して賑やかな都会となっているが、そのころはまだ北佐久郡東長倉村の一集落で、茅葺屋根の低い家並みが続いていて、ペンキ塗りの外人の避暑小屋は落葉松の林のなかに
酒徒漂泊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そのくせ大通にあつては両側に
櫛比
(
しっぴ
)
せる商戸金色
燦爛
(
さんらん
)
として遠目には頗る立派なれど近く
視
(
み
)
れば皆芝居の
書割然
(
かきわりぜん
)
たる建物にて誠に安ツぽきものに候、支那は
爆竹
(
ばくちく
)
の国にて冠婚葬祭何事にもこれを用ゐ
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
いつのまにか両側は
櫛比
(
しっぴ
)
した町家になっている。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そしたら、稲ちゃんの手紙でね、夏しか住みにくくて、その夏には四五千の都会人士がつめかけて、名流人の御別荘
櫛比
(
しっぴ
)
の由。ハアハア笑ってしまった。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この寺院に達する路の両側には、主として玩具屋や犬の芸当や
独楽
(
こま
)
まわし等の小店が
櫛比
(
しっぴ
)
している。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
まさに退いて世の交りを断たん事を欲し
妓家
(
ぎか
)
櫛比
(
しっぴ
)
する
浅草代地
(
あさくさだいち
)
の
横町
(
よこちょう
)
にかくれ住む。たまたま両国大相撲春場所の初日に当りてあたり何となく色めき立てる
正午
(
ひる
)
近くなり。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
その
辺
(
あた
)
りは、七条坊門やら、塩小路、
楊柳
(
やなぎ
)
小路などの細かい人家が
櫛比
(
しっぴ
)
している所だったが、焼けたのは、
六波羅勤
(
ろくはらづと
)
めの侍屋敷一軒だった。金田鳥羽蔵正武の屋敷だった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
くわえ込みの木賃宿 hotel para pernoitar の軒灯がななめによろめいて、ちょうど理髪屋みたいな、土間だけの小店が細い溝をなかに
櫛比
(
しっぴ
)
している。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
眼下はるかに
塔米児
(
タミイル
)
、
斡児桓
(
オルコン
)
両河の三角洲。川向うの茫洋たる砂漠には、
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
軍の
天幕
(
ユルタ
)
、椀を伏せたように一面に
櫛比
(
しっぴ
)
し、
白旄
(
はくぼう
)
、軍旗等
翩翻
(
へんぽん
)
として林立するのが小さく
俯瞰
(
ふかん
)
される。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
浜町というところは、今は人家
櫛比
(
しっぴ
)
してその
面
(
おも
)
かげもありませんけれども、むかしは
鄙
(
ひな
)
びていて、風流人に縁のある土地で、下町では八丁堀茅場町辺と対立していたという話であります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ギゼーの町は小さくはあるが、街の中央の道路には、軽快な電車も
通
(
かよ
)
っているし、小綺麗な旅館も
櫛比
(
しっぴ
)
しているし、椰子の
樹蔭
(
こかげ
)
も諸所にあって、
金字塔
(
ピラミット
)
見物の遊覧客に、気に入られそうな町である。
木乃伊の耳飾
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
工場といかがわしきカフェーがちゃんぽんに
櫛比
(
しっぴ
)
して居ります。鉄、キカイの下うけ工場があり、ゴムの小工場がある。昨日歩いたところとは同じ側のすこしずれたところですが。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
街道の要衝だし、また家々は、大昔の武蔵の
国庁
(
こくちょう
)
時代からの
櫛比
(
しっぴ
)
である。それとこの川止め客の混雑とで、酒は売れ、辻喧嘩は宵を
戦
(
そよ
)
がせ、旅籠旅籠の駒の
柵
(
さく
)
まで、夜をいななき騒いでいた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
両側には小さな店が
櫛比
(
しっぴ
)
しているのだが、その多くは閉じてあった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
其時人々の前には、眼界遙かに穏やかな入海と、
櫛比
(
しっぴ
)
した町々の屋根が展開される。
長崎の一瞥
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ニューヨークのあの摩天楼の
櫛比
(
しっぴ
)
した上に巨大な破壊力がおちかかる時の光景を想像すれば、どんな蒙昧な市民も、それが、ノア洪水より、
惨
(
みじめ
)
な潰滅の姿であることを理解するだろう。
平和への荷役
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その月の光は崖下の
櫛比
(
しっぴ
)
した屋根屋根を照し、終夜、床下で虫が鳴いた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
石がちの土質の白っぽさも、東北とは全く異って
櫛比
(
しっぴ
)
した町々の屋根、前に見える細い街路も面白かった。二人で来ることのなかった重吉の故郷の景色として、沿線の眺めはひろ子のこころに迫った。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
櫛
漢検準1級
部首:⽊
19画
比
常用漢字
小5
部首:⽐
4画
“櫛”で始まる語句
櫛
櫛巻
櫛笄
櫛卷
櫛田
櫛箱
櫛笥
櫛形
櫛目
櫛匣