さん)” の例文
新字:
「父は掃除がやかましくて、障子のさんや、長押なげしの上を一々指で撫でて見る人でした。現に昨日もその欄間をよく掃除さうぢさせたばかりで」
「さう? でもうちぢや小供こどもがないから、夫程それほどでもなくつてよ」とこたへた御米およねのりふくました刷毛はけつてとん/\とんとさんうへわたした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところが支倉君、その場所というのは、窓が開いている部分ではないのだよ。あの当時さんを水平にしたままで、鎧扉よろいどが半開きになっていたのを
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
東屋氏は一層乗気になってヨットの床を調べはじめたが、やがて今度は狭いさんの間から、硝子瓶のかけらしいものを拾い上げて私に見せた。で私は
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
カタ/\/\カタ、さーツ、さーツ、ぐわう/\とくなかに——る/\うちに障子しやうじさんがパツ/\としろります、雨戸あまどすきとり嘴程くちばしほど吹込ふきこゆきです。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
風呂場、不浄ふじょう、水口、縁先等、いま一度、戸締りを見ろ。掛金かけがねさん、その他に異常なきやを確めるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その時、小屋のさんの隙間をとおして鋭い電燈の光が射し込んだ。雄鳩は雌の白い姿を認めた。棲り木から首をのばし彼はそっとくちばしで何故か自分の側にいぬ妻を突ついた。
白い翼 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
障子にはさんはあるが、棧は棧でも女郎屋の格子こうしたア違いますぜ。それをいうんだ。それを!
「ではいつもは、毎晩おやすみになる前にドアさんをおおろしになりませんのですね?」
果して内儀さんは翌日から圭一郎等に一言も口を利かなかつた。千登世が階下へ用達しに下りて行くとさんこはれよとばかり手荒く障子を閉めて家鳴りのするやうな故意の咳拂ひをした。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
越後の中部ではこの日の行事に、米の粉を練って小狗こいぬの形をこしらえて戸のさんに飾り、または十二支の形を作り鴨居かもい長押なげしに引掛ける習わしがあり、犬の子正月の名はこれに基づいている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今ごろは多分、古い天井のさんに一方の手をかけたまま、もう一方の手で新しい天井の棧に飛びついていることだろう。苦しい芸当さ。はたから見ていると、みじめでもあり、気の毒でもある。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「いや、殺しは宵だ、血があんなに固まつて、戸のさんにさへ附かない程だ。それに夜が明けちや、八千兩の金を運び出す工夫はない」
海に面して大きく開いているさんのはまった丸窓の横には、立派な書架しょだなが据えられ、ギッシリ書物が詰っている。総じて渋い装幀の学術的なものが多い。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
かれあか無言むごんまゝはたらかしながら、馬尻ばけつなか雜巾ざふきんしぼつて障子しやうじさんした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
次第しだいに、とこはしら天井裏てんじやううら鴨居かもゐ障子しやうじさんたゝみのへり。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「私は部屋の扉にさんおろしましたわ。」
何處からでも入れるのに、わざとお勝手口の戸をコジ開けさんをこはして入つた、もつとも輪鍵は宵のうちに内から外して置いたのだらう。
それは板の上へ細いさんを十文字に渡した洒落しやれたもので、小使が毎朝拭掃除をするときには、下から鍵を持つて來て、一々此戸を開けて行くのが例になつてゐた。自分は立つて敷居の上に立つた。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今迄私は度々さん
又掛け合ひばなしになる。——默つて聽け。痣の熊吉は雨戸を外したり、さんを切り取つたり、かなり器用なことをして忍び込むやうだ。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
見廻ります、——私が出たのは、奧の六疊の前の縁側ですが、雨戸は上下のさんもおり、その上心張棒までしつかり掛つてをりました
八五郎は椽側の中へ入ると、雨戸を念入りに締めた上、上下のさんをおろして、もう一つ側にあつた心張棒まで當ててしまひました。
「へエ——、まア、さう言つたわけで、外の大扉には海老錠ゑびぢやうがおりて居りますから、中の二つの戸のさんは内からでも開けられますが——」
お勝手の敷居がひどくくさつて居る上、のみか何にかでコジ開けられたらしく、戸は外れたまゝで、さんなどはひどく痛んで居ります。
仲間の者に八千兩の小判を持出させて、内から潜戸くゞりを閉めて置けるのもあの女だ。雨戸は外から締めただけでも、下のさんがひとりでおりる
入口のかしの大戸には嚴重な鐵のさんがおりるやうになつてをりますが、それは藏の中にお喜代といふ者がゐるので、上げたまゝになつてをり
さんしぶくて、暫らくガヂヤガチヤやつてゐたやうですから間違ひは御座いません。——何んでしたら、お仲を呼びませうか」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「こいつをはづすのは骨が折れました。後で家の中へ入つて見ると、念入りにさんをおろした上、心張棒まで掛けてあつたんです」
近づいた平次、粗末な三尺の木戸を押して見ましたが、中からさんがおりて居ると見えて、力づくでは開きさうもありません。
「へエー、内からさんをおろしてある筈ですが、不思議に雨戸が一枚開いてゐたさうです。戸を閉め忘れるなどといふことのない御主人ですが」
「變りはございませんでした。縁側の雨戸のさんも落ちて居りましたし、お勝手も、入口も何んの異状もなかつたと存じます」
可哀想に布團で蒸し殺してそつと谷中へ歸つたのさ、もつとも雨戸は閉めたが外からさんを下ろしたり輪鍵をかける工夫はなかつた
「夜中にそつと忍んで來て、主人を殺した上、何にかうまい工夫で障子を締め、外からさんをおろして、そつと引揚げたかも知れないぢやないか」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「少しも變つたところもございませんでした。さんをおろして、輪鍵をかけて、その上場所によつてかんぬきを差して居ります」
戸は閉つて下のさんがおりて外からは開かないやうになつて居りましたが、上の棧が上つたまゝきかなくなつて居りました、そんな筈は無いのですが
上下のさんは、落ちてゐなかつたかも知れないが、この頑丈な鐵の輪鍵は、夜になると、いつでも掛けて置くものらしい。
部屋の中は少しの取亂した樣子もなく、雨戸もあきらかに内から開けたもので、敷居にもさんにも、何んの傷もありません。
瀧縞たきじまの光線が漏るやうなことはなく、そのうへ一枚々々印籠いんろうばめになつて、さんがおりた上に輪鍵をかけてしまへば、外からは簡單に開けられません。
貸金の抵當に取つた不動樣とたつた二人、戸にも障子にも嚴重にさんをおろして、中でそつと殺されてゐたんですぜ。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
泥棒の入つたのは、南の縁側、僅かばかりの隙からのこぎりを入れて、かなり大きい穴を二つまで開けた上、輪鍵わかぎさんも易々と外したことはよくわかります。
「閉つて居りました。私が開けたのですから間違ひ御座いません。——閉つては居りましたが、上下のさんも下りず、輪鍵も掛つては居りませんでした」
八五郎も板戸に手を掛けましたが、これは思ひの外嚴重で、引手ひきてさんもなく、力のほどこしやうもありません。
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
雨戸のさんが敷居の穴の血にこびり附いては居なかつたぜ。——棧は穴の中の血の乾いた上へそつと落ちて居た。
「洗濯物を風呂場へ持込むのに、戸にさんをおろすのはどういふわけだ。宜い加減なことをいふと承知しないよ」
鈴川主水は、さり氣なく、二度の凶變にそなへさせました。さんの左右に開けられた穴をふさぎ、このうへ妙な仕構けはさせないやうにして置きたかつたのです。
格子戸とかしの板戸と漆喰しつくひの大扉と三重になつて、中の二枚の戸はそれ/″\のさんがひとりでおりますが、一番外の大扉のは海老錠ゑびぢやうで、その鍵は別にあります。
北窓——三尺四方ほどの小窓は閉したまゝですが、これは上のさんが馬鹿になつて居る上、下の棧もアヤフヤでのみが一梃あれば、素人でも樂に雨戸を外されます。
勘兵衞は夢中になつてからみつくお關を振りもぎる樣に焔の來る方とは反對の、北向きの腰高窓に飛び付き、障子を開けて雨戸のさんを上げましたが、どうしたことか
「さうとも言へませんよ。戸締りは嚴重なやうだが、雨戸のさんに細工がしてあつて、内では締めたつもりでも、外から何んの造作もなく開くやうになつて居るから」