りう)” の例文
やがておりうがしなやかにまがつて、をとこれると、むねのあたりにつて卷煙草まきたばこは、こゝろするともなく、はなれて、婦人をんなわたつた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
母のおりうは昔盛岡で名を賣つた藝妓であつたのを、父信之が學生時代に買馴染んで、其爲に退校にまでなり、家中反對するのもかずに無理に落籍ひかさしたのだとは
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
この柳の霊なるものは、かすかな銅鑼どらのやうな声を立てる所まではいが、三十三間堂げんだうのおりうなどとは違つて、人間を殺しに来るのださうだから、中々油断はなりません。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「三十三間堂」のおりうにもまして泣くこゑは
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なにわすてて、狂氣きやうきごとく、その音信おとづれてくと、おりうちやう爾時そのとき……。あはれ、草木くさきも、婦人をんなも、靈魂たましひ姿すがたがあるのか。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
母のおりうは昔盛岡で名を売つた芸妓げいしやであつたのを、父信之が学生時代に買馴染んで、其為に退校にまでなり、家中うちぢゆう反対するのもかずに無理に落籍さしたのだとは
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
りうちやん、たよ!」といふがはやいか、よこざまにけてる、柳腰やなぎごし下駄げたげて、あしうらうつくしい。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あれ、じやうこはいねえ、さあ、えゝ、ま、せてるくせに。」とむかうへいた、をとこいたしたへ、片袖かたそでかせると、まくれたしろうでを、ひざすがつて、おりうほつ呼吸いき
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ねえ、ねえ、おきよ、あれ、りうちやん——りうちやん——しつかりおし。お手紙てがみにも、そこらの材木ざいもく枝葉えだはがさかえるやうなことがあつたら、夫婦ふうふつてるツていてあるぢやあないか。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まへ、おまへ、それでおとしたんだけれど、いのちをかけてねがつたものを、おまへそれまでにおもふものを、りうちやん、なんだつてお見捨みすてなさるものかね、わかつたかい、あれ、あれをおきよ。もういよ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)