うれい)” の例文
今の人民の世界にいて事をくわだつるは、なお、蝦夷地えぞちに行きて開拓するが如し。事の足らざるはうれいに非ず、力足らざるをうれうべきなり。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
佐世も心にかかり候。来原、中村余り周布風を学び大人振り、後進を導くことあたわざるがうれいなり。中谷はおのずから妙、山口にて一世界をなせかし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「後日、わが蜀にうれいをなす者があるとすれば、おそらく彼であろうよ。——大魏皇帝の統を曹叡そうえいがうけたことなどは、心にかけるまでもないが」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがために水害のうれいを取り除いてしまったばかりでなく、深い港をこしらえて九州、四国から来る船をことごとくアソコにつなぐようになったのでございます。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
冗費を節して、つねの産を積んで、まさかの時節ときに内顧のうれいのないようにするのは、そらあ当然さ。ねエ浪さん。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
真実しんじつ外国干渉のうれいあるを恐れてかかる処置しょちに及びたりとすれば、ひとみずから架空かくう想像そうぞうたくましうしてこれがために無益むえき挙動きょどうを演じたるものというの外なけれども
ラは最早もはや竜来るうれいなければ、安心してかの袋の中の金で巨屋を立て、余生を安楽に暮したそうだ。
世嗣よつぎの生みの母を手討にしてしまった人がある、生みの母というのは殿様のお手かけであった、腹のいやしい母を生かしておいては、他日国家のうれいがそこから起り易いとあって
諸王をして権を得せしむるも、また大なりというべし。太祖の意におもえらく、かくごとくなれば、本支ほんしあいたすけて、朱氏しゅし永くさかえ、威権しもに移る無く、傾覆のうれいも生ずるに地無からんと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
出水のうれいが無い此村も、雹の賜物たまものは折々受けねばならぬ。村の天に納める租税そぜいである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
無辜のものを有罪にするうれいは決してない筈であります。
三つの痣 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
下士のはいようやく産を立てて衣食のうれいまぬかるる者多し。すでに衣食を得て寸暇すんかあれば、上士の教育をうらやまざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「よくぞ申した。そちが自己の非を知って改めるからには、なんで玄徳もうれいをいだこう。留守の役は、そちに頼む」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時候も秋涼に向かえるおりから、熱は次第に下り、経過よく、膿腫のうしょううれいもなくて、すでに一月あまり過ぎし今日きょうこのごろは、なお幾分の痛みをば覚ゆれど
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
『観弥勒菩薩下生げしょう経』に、時気和適、四時順節、人身百八のうれいなく、貪慾瞋恚愚痴大ならず、人心均平にして皆同一意、相見て歓悦し善言相向い、言辞一類にして差別なき事
觥籌こうちゅう又何ぞ数えんといいて、快楽主義者の如く、希直きちょくは俗にして、いんしんに、酒のうれいたる、謹者きんしゃをしてすさみ、荘者をして狂し、貴者をしていやしく、存者そんしゃをしてほろばしむ、といい、酒巵しゅしの銘には
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多摩川遠い此村里では、水害のうれいは無いかわり、旱魃かんばつの恐れがある。大抵は都合よく夕立ゆうだちが来てくれる。雨乞あまごいは六年間に唯一度あった。降って欲しい時に降れば、直ぐ「おしめり正月」である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が——隠忍いんにんに隠忍をかさねて、いまやようやく、根本からそのうれいを除くときが来た。いまこそと、彼はひそかに、手につばして、それへ取りかかったのである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
即ち新夫婦相引く者をしてますます引かしめ、新旧相衝くのうれいを避けて遠く相引かしむるの法なり。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかその才をあわれみて獄につなぎ、ふうするに管仲かんちゅう魏徴ぎちょうの事をもってす。帝のこころ、敬を用いんとするなり。敬たゞ涕泣ていきゅうしてかず。帝なお殺すに忍びず。道衍どうえんもうす、とらを養うはうれいのこすのみと。帝の意ついに決す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この方のうれいはまずないように見えるものの、結果としては、かえって、干戈かんかを交えていたときよりも、彼の敵性は、陰性となり、謙信にとって、始末のわるいものとなっていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生涯のうれいをのこすことあるゆえ、おりおりは魚類獣肉を用いたきものなり。
慶応義塾新議 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「すでにこの猛将を得、全軍の吉兆といわずしてなんぞ、蜀軍来るも、またうれいはない」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縦の帳合はその入門の路、たとい困難なるも、関所を生ずるのうれいなし。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「まだ何か、後日のうれいがあるといわれておいでたか」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果して明日のうれいなきを期すべきや。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)