おびや)” の例文
温泉をんせんかうとして、菊屋きくや廣袖どてら着換きかへるにけても、途中とちう胴震どうぶるひのまらなかつたまで、かれすくなからずおびやかされたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼はそれらの余震になおもおびやかされながら、しかし次第に、露台のまわりでうるさいくらいさえずりだした小鳥たちの口真似くちまねをしてみたり
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
月影蒼い夜な夜な群れて襲って来る狼などの物凄い吠え声におびやかされながら、こうして蕃界奥地の生活がジョンソンの上に始まったのであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『いよいよ敵打ちの時期が近づきました』などと変におびやかすように申されますと余りいい気持もいたしません。
機密の魅惑 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
さうしてそのなかには醜さといふよりもむしろ故もなく凄然せいぜんたるものがあつた。この家の新らしい主人は、木の蔭に佇んで、この廃園の夏に見入つた。さて何かにおびやかされてゐるのを感じた。
最々後に、絶対の危険を冒す全世界の放れ業だ、とおびやかして、裸身の犠牲の脳頭のうてんを狙う時は、必ず、うしろ向きになるんだよ。
次々に彼奴きゃつおびやかさなければならない。……だんだんに彼奴の罪悪を、彼奴と世間とへ暴露しなければならない。……暴露戦術というやつがある。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これも夜中には幽霊じみて、旅人をおびやかそう。——夜泣松よなきまつというのが丘下おかしたの山の出端でばなに、黙ったからすのように羽を重ねた。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これも柄から手を放して、冷やかな態度で立ち向かったが、その冷やかな態度の中には、吸血鬼的の凄味すごみがあって、相手をおびやかすに足るものがあった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しからん。鳥の羽におびやかされた、と一の谷に遁込にげこんだが、はかままじりに鵯越ひよどりごえを逆寄さかよせに盛返す……となると、お才さんはまだ帰らなかった。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
急速に刑殺されましょう! ……かずそれよりも我らが方より、急速にで機先を制し、萩丸殿の首を斬り、それをひっさげて紀州に潜入し、紀州公をおびやかし、破獄して同志を奪還いたすこそ
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「その怪しいものの方でも、手をかえ、品をかえ、おびやかす。——何かその……畳がひとりでに持上りますそうでありますが、まったくでございますかな。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今度は浪人はおびやかされたらしい、思わず二、三歩後へ下がった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて報知新聞はうちしんぶん記者きしや、いまは代議士だいぎしである、田中萬逸君たなかまんいつくんそのひとである。反對黨はんたいたうは、ひやかしてやるがいゝ。が、その、もう一度いちどおびやかされた。眞夜中まよなかである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「はあ、蚊帳を抱く大入道、夜中に山霧が這込はいこんでも、目をまわすほどおびやかされる、よくあるやつじゃ。」
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
われら一類がわざおびやかされて、その者、心を破り、気をきずつけ、身をそこなえば、おのずから引いて、我等修業のさまたげとなり、従うて罪のさわりとなって、実はおおいに迷惑いたす。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人一首ひやくにんいつしゆのおぢやうさんの、「いくののみち」もそれか、と辿たどつて、はる/″\と城崎きのさきで、佐渡さどおきふねんで、キラリと飛魚とびうを刎出はねだしたから、きたなくもおびやかされたのである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
狼、のしのしと出でてうかがうに、老いさらぼいたるものなれば、金魚麩きんぎょぶのようにてほしくもあらねど、吠えてもいでみても恐れぬがしやくに障りて、毎夜のごとく小屋をまわりておびやかす。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江戸の宗家も、本山も、当国古市において、一人で兼ねたり、といういきおいで、自ら宗山そうざん名告なの天狗てんぐ。高慢も高慢だが、また出来る事も出来る。……東京の本場から、誰も来ておびやかされた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
試みに山伏のことばを繰返して、まさしく、おびやかされたに相違ないと思った。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と番頭のひざたたいたのには、少分の茶代を出したばかりの記者は、少からずおびやかされた。が、乗りかかった船で、一台おおいおごった。——主人が沼津の町へ私用がある。——そこで同車で乗出した。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これにまた少なからずおびやかされて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)