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好事
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こうず
ふりがな文庫
“
好事
(
こうず
)” の例文
従って、オランダ流の医術、
本草
(
ほんぞう
)
、物産、究理の学問に志ある者を初め、
好事
(
こうず
)
の旗本富商の
輩
(
はい
)
までが、毎日のように押しかけていた。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
風流韻事に憂身をやつす人はさらにその初音を誰よりも先に争い聴こうとする
好事
(
こうず
)
的な競争をさえ生ずるようになったのであります。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ツイ昨年
易簀
(
えきさく
)
した洋画界の
羅馬
(
ローマ
)
法王たる
黒田清輝
(
くろだせいき
)
や
好事
(
こうず
)
の聞え高い前の
暹羅
(
シャム
)
公使の
松方正作
(
まつかたしょうさく
)
の如きもまた早くから椿岳を蒐集していた。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ことのほか
凝
(
こ
)
りが固いが、細工がきくところから、これを丑紅珊瑚と呼んで、
好事
(
こうず
)
な女たちのあいだに
此上
(
こよ
)
なく珍重されていた。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
浅草
(
あさくさ
)
公園の
矢場
(
やば
)
銘酒屋
(
めいしゅや
)
のたぐひ近頃に至りて大方取払はれし
由
(
よし
)
聞きつたへて
誰
(
たれ
)
なりしか
好事
(
こうず
)
の人の仔細らしく言ひけるは
葡萄棚
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「さても見事な筆蹟でござるが、拙者もこの道は横好き、なんとこの一巻を、拙者の
好事
(
こうず
)
にめでてお譲り下さるまいか」
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
諸君、他日もし北陸に旅行して、ついでありて金沢を
過
(
よぎ
)
りたまわん時、
好事
(
こうず
)
の方々心あらば、通りがかりの市人に就きて、
化銀杏
(
ばけいちょう
)
の旅店? と問われよ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
カーライルの歿後は有志家の
発起
(
ほっき
)
で彼の生前使用したる器物調度図書典籍を
蒐
(
あつ
)
めてこれを各室に
按排
(
あんばい
)
し
好事
(
こうず
)
のものにはいつでも
縦覧
(
じゅうらん
)
せしむる
便宜
(
べんぎ
)
さえ
謀
(
はか
)
られた。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この辺で止めて置けば万事が
天衣無縫
(
てんいむほう
)
で、彼女の正体も暴露されず、私の病院も依然としてマスコットを失わずにすんだ訳であったが、
好事
(
こうず
)
魔
(
ま
)
多し、とでも言おうか。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
好事
(
こうず
)
の者が盗み取ることもないとは限るまいから堅く鎖を設けてもらいたい、とあったという。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
大「
外面
(
そと
)
から見ますと
田舎家
(
いなかや
)
のようで、中は木口を選んで、なか/\
好事
(
こうず
)
に出来て居ります」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その
他
(
ほか
)
に、
好事
(
こうず
)
な手だんすだとか、古い
竹屋町裂
(
たけやまちぎ
)
れでつくった茶ぶくさ入れだとかみな大名道具であった。私の父はよくいった。他人の泣きを
悦
(
よろ
)
こぶ不浄な
銭
(
ぜに
)
で買ったのだと。——
旧聞日本橋:16 最初の外国保険詐欺
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ただしこの種の読み物は、内容にいっそうふさわしい
装帳
(
そうてい
)
で少数の
好事
(
こうず
)
の人にのみ示すべきもの、と考える人々も少なくない。岩波書店主もまたあるいはその一人であられるかも知らぬ。
茶の本:01 はしがき
(新字新仮名)
/
岡倉由三郎
(著)
廷珸は大喜びで、天下一品、価値
万金
(
ばんきん
)
なんどと
大法螺
(
おおぼら
)
を
吹立
(
ふきた
)
て、かねて
好事
(
こうず
)
で鳴っている
徐六岳
(
じょりくがく
)
という
大紳
(
たいしん
)
に売付けにかかった。徐六岳を最初から廷珸は好い鳥だと狙っていたのであろう。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
また一方には
上士
(
じょうし
)
と
下士
(
かし
)
との分界をなお
明
(
あきらか
)
にして下士の首を
押
(
おさ
)
えんとの考を交え、その
実
(
じつ
)
はこれがため費用を省くにもあらず、武備を
盛
(
さかん
)
にするにもあらず、ただ一事無益の
好事
(
こうず
)
を
企
(
くわだ
)
てたるのみ。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
目下ノトコロ
好事
(
こうず
)
ノ士ガ稀ニ用イルノミデ一般ニ普及シテイナイガ、普通ノ手札型ノロールフィルムニ印画紙ガ重ネテアルモノデ、容易ニ日本デハ手ニ入ラズ、一々アメリカカラ取リ寄セルノデアル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この教信は
好事
(
こうず
)
の癖ある風流人であったから、椿岳と意気投合して隔てぬ中の友となり、日夕往来して
数寄
(
すき
)
の遊びを
侶
(
とも
)
にした。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
しかし宣和硯の所在は今日といえども古硯を愛する
好事
(
こうず
)
の士に質したならあるいはこれを知ることができるかも知れない。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あくまで
好事
(
こうず
)
な物持ちの若旦那らしくごまかしておいて、天にも昇る思いで伝二郎は蔵前の自宅へ取って返し、番頭を口車に乗せて三百両の金を
拵
(
こしら
)
え
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
自から直ちに遠山の
背後
(
うしろ
)
に来て、その受持の患者を守護する。両人は扉を挟んで、腰をかけた、
渠等
(
かれら
)
好事
(
こうず
)
なる江戸ツ児は、かくて甘んじて、この
惨憺
(
さんたん
)
たる、天女
廟
(
びょう
)
の門衛となったのである。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
是は京都で指物の名人と呼ばれた
利齋
(
りさい
)
の一番弟子で、江戸にまいって
一時
(
いちじ
)
に名を揚げ、
箱清
(
はこせい
)
といえば
誰
(
たれ
)
知らぬ者もないほどの名人で、当今にても箱清の指した物は
好事
(
こうず
)
の人が珍重いたすことで
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
朝廷
帝
(
てい
)
を
索
(
もと
)
むること
密
(
みつ
)
なれば、帝深く
潜
(
ひそ
)
みて
出
(
い
)
でず。
此
(
この
)
歳
(
とし
)
傅安
(
ふあん
)
朝
(
ちょう
)
に帰る。安の
胡地
(
こち
)
を
歴游
(
れきゆう
)
する数万里、域外に
留
(
とど
)
まる
殆
(
ほとん
)
ど二十年、著す所
西遊勝覧詩
(
せいゆうしょうらんし
)
あり、後の
好事
(
こうず
)
の者の喜び読むところとなる。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いつのまにかそれが世間へ伝聞して、
好事
(
こうず
)
の者はわけもなしにおもしろがり、高い風評の種となっているところへ、今度条山神社を建てるについてはぜひにとの山吹社中の懇望だったのである。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「南無三、
好事
(
こうず
)
魔多し」と髯ある人が
軽
(
かろ
)
く膝頭を打つ。「
刹那
(
せつな
)
に千金を惜しまず」と髯なき人が葉巻の
飲
(
の
)
み
殻
(
がら
)
を庭先へ
抛
(
たた
)
きつける。隣りの合奏はいつしかやんで、
樋
(
ひ
)
を伝う
雨点
(
うてん
)
の音のみが高く響く。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兵馬が白骨から来たと聞いて、その四十男が、
好事
(
こうず
)
な眼を向けて
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
概括してそれらの浮世絵はその価値いよいよ美術に遠ざかりて
唯
(
ただ
)
風俗史料
若
(
も
)
しくは
好事
(
こうず
)
の料たるに
留
(
とどま
)
る。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
袋の文字は大河内侯の揮毫を当時の浅草区長の町田今輔が
雕板
(
ちょうばん
)
したものだそうだ。慾も得もない書放しで、
微塵
(
みじん
)
も匠気がないのが
好事
(
こうず
)
の雅客に喜ばれて、浅草絵の名は忽ち好事家間に喧伝された。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
宗助は始めて、この坂井も
余裕
(
よゆう
)
ある人に共通な
好事
(
こうず
)
を道楽にしているのだと心づいた。そうしてこの間売り払った
抱一
(
ほういつ
)
の
屏風
(
びょうぶ
)
も、最初からこう云う人に見せたら、好かったろうにと、腹の中で考えた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“好事”の意味
《名詞》
好 事 (こうじ, こうず)
(こうじ)喜ばしいこと、幸先が良いこと。
(こうじ)善い行い。善行。
(こうず)風変わりなものを好むこと。物好きであること。
(出典:Wiktionary)
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
事
常用漢字
小3
部首:⼅
8画
“好事”で始まる語句
好事家
好事者
好事癖
好事心
好事的
好事魔
好事多端