奸計かんけい)” の例文
「まだ悪人の奸計かんけいとおさとりなく、愚かな後悔に恋々とご苦悶あるか。悲しい哉、わが主君は、死ななければ目の醒めないお人だ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人大岡越前守のみ夫が邪曲じやきよくうかゞしり身命しんめい投打なげうち既往きわう今來こんらいを尋ね遂に奸計かんけい看破みやぶつて處刑しよけいせしといふ有名いうめいの談話にてかゝる奸物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その結果確かに毛沼博士の憎むべき奸計かんけいであることが分ったのです。K病院では整形外科の手術室のすぐ前に産室があります。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「ウン。それに違いないのだ。ちょうど姉歯早川組の奸計かんけいと、両親の勘当かんどうとで、板挟みになって死んだ訳だナ」
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もうこの事件の最初から、これには何か卑劣な奸計かんけいがあるのじゃないかと、僕は疑問をいだいていたのです。
「先生、それでは、北沢氏自身が、二人を罪に陥れるために、そのような奸計かんけいをめぐらしたのでしょうか」
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
一人の若い偉大なフランスの芸術家を圧倒するために、手筈てはずが定められ奸計かんけいがめぐらされたと報じていた。
そして『西洋の国々と同じく、ここにもやはりみにくい生存競争があり、常々不義や奸計かんけいが行われている』
「父上樣、御心配を相かけ申譯も御座いません。林太郎は召仕などと逐電ちくでんはいたしません。それなる堀周吉の奸計かんけいに陷り、唯今まで獸類に等しき扱ひを受けました」
この時だった! 堅人で通っていた質屋久兵衛の頭へ、万破れることのない奸計かんけいが浮んだのは。
かく奸計かんけいをめぐらしたる由をくわしく述べ、かつ、罪をゆるされんことを願ったそうだ。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
先生だからこそあいつらの奸計かんけいを見破ってくだすったのです。蘭子はいずれこんなことになる運命でした。先生の御助力がなければ、あれの死期がいくらか遅れたかもしれません。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私は、それらを、みんな、人々が心を合わして、私を惑わしている奸計かんけいだと思った。
小さな山羊の記録 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あなたの奸計かんけいが因をなして、宮田君が行方不明になりました。生きて帰ってくれるかどうか、我々にはわかりません。宮田君が無事であってくれれば、我々もまた帰って来るつもりです。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
表裏異心のともがらの奸計かんけいに陥入り、にわかに寄する数万すまんの敵、味方は総州征伐のためのみの出先の小勢、ほかに援兵無ければ、先ず公方をば筒井へ落しまいらせ、十三歳の若君尚慶ひさよし殿ともあるものを
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それで兄は西沢をかばおうとし、逆に西沢の奸計かんけいにかけられたのだ。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そしてブリュジョンの奸計かんけい頓挫とんざせしめたものと思った。
あまつさえ奸計かんけいをめぐらしてこれを陥れようと企む。
今日、それがしを向けて、あなたに和睦わぼくを乞わしめようとする曹操の本志は、和議にあらず、ただ民心の怨嗟えんさ転嫁てんかせんための奸計かんけいです。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長庵と改めてあさからばんまであては無れどいそがぶり歩行あるき廻りければ相應に病家びやうかも出來たるにぞ長庵今は己れ名醫めいいにでも成し心にて辯舌べんぜつ奸計かんけいを以て富家ふうかより金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「父上様、御心配を相かけ申し訳もございません。林太郎は召使などと逐電はいたしません。それなる堀周吉の奸計かんけいに陥り、ただ今まで獣類に等しき扱いを受けました」
老人がその粗雑なくだらない奸計かんけいを、無駄むだに頭からしぼり出しつくすのを放っておいた。
それをなんぞや! 腕でかなわず、この奸計かんけいにおとし入るるとは、卑怯千万……!
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いゝえ! わたくしは、そうは思いません。」瑠璃子は、昂然こうぜんとして父の言葉を遮ぎった。「荘田のやりましたような奸計かんけいめぐらしたならば、どんな人間をだって、罪におとすことは容易だと思います。 ...
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
少しの油断から丈五郎の奸計かんけいに陥り、双生児と同じ監禁の身の上となった。非常に厳重な見張りだから、到底急に逃げ出す見込みはない。だが、僕よりも心配なのは君だ。君は他人だから一層危険だ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
聞お光破談はだんの事の原因はやう/\わかりし物ながらいかりに堪ぬは家主が其奸計かんけい口惜くちをしき如何はせんと計りにて涙にくるる女氣の袖をしめらせゐたりしがやゝつて顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またそれがしは、佐分利さぶり五郎次でござる、すでにごぞんじであろうが、ざんねんながら、伊那丸与党いなまるよとう奸計かんけいにかかり、主君の梅雪ばいせつたれ、われわれ四天王てんのうのうちたる天野あまの
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ナニ? そうか。イヤそうだろうと思った。伊賀の暴れん坊とも言われるあの若君にかぎって、丹波などの奸計かんけいにおちいるお方ではないのだ。それはめでたい、めでたい。すぐさまお迎えに!」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なぜといえば官兵衛は、主命をおびて、伊丹城いたみじょうおもむき、村重が卑劣ひれつなる奸計かんけいに陥ちて幽囚ゆうしゅうされたもの。正邪な歴々、天下の衆目、誰か彼を曲として憎まぬものあろうや。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、そのまま使者に会ったが、書面のうちにある和睦わぼくを乞うという主旨は、敵の奸計かんけいとにらんで
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆえに、万一彼の奸計かんけいにおち入ってはと存じ、部下の者の深入りを止めたまでのことである
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紛擾ふんじょうをきわめている一方では、徳川方とくがわがたのそんな奸計かんけいを、ゆめにも知ろうはずがない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奸計かんけいをめぐらして、復讐しようとつけ狙っている者がないとはいえない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)