)” の例文
多摩川にさらす手作りさらさらに何ぞこの許多ここだかなしき。こう万葉に詠まれたところのその景色のよい多摩川で彼は終日狩り暮した。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その上に内証の用事を言いつけてから、「ね、好いだから、コワリョーフ少佐のうちって訊くんだよ。」とつけ加えたものである。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
けれども、あのは、じたい、無口で、しんみりで、控目で、内気で、どうして思う事を、さらけ出いて口で云えるようなたちではない。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところで、いいかい、なるたけ注意して、このほんにわたしのよめだ、子息せがれさいじゃない、というように姑に感じさせなけりゃならん。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
なんだってあのが金なんぞ見ているものかね、お前というものを見ているんだから、立派な若い男のお前を見ているんだから。
「さうですよ、いゝでせう」「さうねえ」「まあ何處へ行つたんでせう。すぐお徳さんをよこしますよ」といひ乍ら立上る。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「ナニ、芸妓になり下つたト、——あんまりフザけた口きくもんぢやない、乞食のでも宮様だの、大臣さんだのの席へ出られると思ふのか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
やす こんは、どぎやんことんあつたてちや、そぎやんまぢや、うれツしやにやせんと……。そん代り苦労もなかごたる。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
気の利かないだよ、藤川さんだよ、無闇に上げちゃアいけねえなア………この節は何うもいけない、余程よっぽどいけねえ、様子の悪い、それを無闇に上げてさ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どちらかといえば小づくりで、色の白い、髪の房々ふさふさした、この家でも売れるであった。眉と眉との遠いのが、どことなく美穂子をしのばせるようなところがある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
今では老人としよりの方があの父親てておやの目から逃げ廻らすやうにするといふ有樣ですから困りものです。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
年齢としは同じほどでも女だけにませたことを云ったが、その言葉の端々はしはしにもこの怜悧りこうで、そしてこの児を育てている母の、分別のかしこい女であるということも現れた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こんな者でも相応なところから嫁に貰いたいと申込んで来るが、何しろ此女これがいなくなると僕が困るからね。このも僕の家内がきまるまでは他へ縁付かないと言っている。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あののところへね、ちょっと……。寺島町の彼女のところへ……」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
「お前はじゃ、ここへ坐れ」
そこは、わしがちゃんとあんたの胸のうちを見すかしたように、あののおなかんなかもったように知っとるで、つい、嫌味なことを言うたもの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若い娘が無邪気な顔して賃機織つて居るのなど見ると、傍へ寄つて、様様々問ひ慰めて、恰も自分の生んだでもあるような愛情を注がれた。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
由「旦那本当にお気の毒じゃア有りませんか、あなた五十両でを身請して東京へ連れてけば、おっかさんがさぞお悦びなさいましょう、さっそく貴方の御新造にお取持を致しましょう」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あら、つんツてしもたツばい、こんは……。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
(あのも今では店に出ているかな。)
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
わたしもあのと一緒に泣きましょう
物もいわないで、あのが前髪のこわれた額際まで、天鵞絨びろうどの襟をひっかぶったきり、ふるえて泣いてるのでございましょう。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうしたんだねエ、此のは」と、お加女かめこらへず声荒ららぐるを、お熊はオホヽと徳利てうし取り上げ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
無理に引きとめておいてはおうちの首尾もありましょうし、またね、あのにも申し訳がありませんから、私は我慢して辛抱しますが、お前さんはこれに懲々こり/\してもう二度と再び来ては下さるまいね
全体ちゃきちゃきの深川ッが、根岸くんだりへ行って、ももんじいに歌を習うなんて、そんな間違ったことはないんです。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
継母はゝうへ、貴女はぞ御不満足で御座いませう、貴女のは、世にも恐ろしき流血の重罪を
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
気味を悪がらせまいとは申しませんでしたが、ああこのは飛んだことをおしだ、外のものとは違ってあのけたい親仁。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに深切で優しいおとなしいでございまして、あれで一枚着飾らせますれば、うえがたのお姫様と申してもい位。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
嫉妬の故に、はははは、あんたにも可い顔見せず、あのにも辛かったが、みんな貢さん、あんたのせいじゃ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「このは! 一生懸命に身を投げるやつがあるものか、串戯じょうだんじゃあねえ、そして、どんな心持だった。」
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まず音羽屋おとわやに聞いてもらいたいなんてッて、あのが、他愛のない処へ付け込んで、おひゃり上げて、一服承知させた連中、残らず、こりゃうらまれそうなこッてげす。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じれってえじゃあねえか、尻なんざあ抱きやしねえや、帯を持って脊負ってやら、さあ来い、と喧嘩づらの深切ずくめ、いいぐさが荒っぽうございますから、おどおどして
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一番、このをかつぎ込んで、奴が平生侠客おとこぶるのを附目にして、ぎゅうと謂わそう。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おやおや、このは、目があがってるよ、水でもぶッかけておやんなね。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あのは幽霊の真似をして人をおどして慰むような剽軽者ひょうきんものではございません。必ず誰かが教唆きょうさして殺されるように仕組んだので、教唆したものは綾子さん、大木戸伯と貴女あなたほかには、私に心当りは無い。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)