大海だいかい)” の例文
むかしに返し得べき未練の吾に在りとや想へる、愚なる精衛のきたりて大海だいかいうづめんとするやと、かへりてかたくなに自ら守らんとも為なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
山河月色さんかげっしょく、昔のままである。昔の知人の幾人いくたりかはこの墓地に眠っている。豊吉はこの時つくづくわが生涯の流れももはや限りなき大海だいかい近く流れ来たのを感じた。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
大海だいかいに出た大船の上で、一天の星をかぶとて、万里の風に吹かれながら、はて知れぬ世界にむかって武者振いして立つ、然様いう境界きょうがいもあるのでござりまするから
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あたかも渓流の大海だいかいに向つて流れ出づるが如く、日夜都会に向つて身を投ずるのを躊躇ちうちよしないのであつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
いか、それへやうとふからには、ほたるほしちりやまつゆ一滴いつてきと、大海だいかいうしほほど、抜群ばつぐんすぐれた立優たちまさつたものでいからには、なにまた物好ものずきに美女びぢよ木像もくざうへやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大海だいかいのうえには島一つ見えない、そして漂動ひょうどうしている波には、白雲が立っている、というので、「たゆたふ」は、進行せずに一処に猶予している気持だから、海上の波を形容するには適当であり
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
大海だいかいの前に投げ出されて夕まぐれ童子わがごとくよく泣けるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寂寞じやくまく大海だいかい禮拜らいはいして
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
大海だいかいにむかひて一人ひとり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
およ人間にんげんほろびるのは、地球ちきう薄皮うすかはやぶれてそらからるのでもなければ、大海だいかい押被おツかぶさるのでもない飛騨国ひだのくに樹林きはやしひるになるのが最初さいしよで、しまいにはみんなどろなかすぢくろむしおよ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
するとは如何に、眼の前は茫々漠々ぼうぼうばくばくとして何一ツ見えず、イヤ何一ツ見えないのでは無い、唯是れ漫々洋々として、大河だいがの如く大湖の如く大海だいかいの如く、漪々いいたり瀲々れんれんたり、汪々おうおうたり滔々とうとうたり
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
谷川の水、流れとともに大海だいかいに注がないで、横にそれて別に一小沢を造り、ここによどみ、ここに腐り、炎天にはその泥沸き、寒天にはその水こおり、そしてついにはれゆくをまつがごときである。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
麗らなればわらべは泣くなりただ泣くなり大海だいかいの前に声も惜しまず
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
舞下まひさがりて、漫々まん/\たる大海だいかいへぼかん!
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
寂寞じやくまく大海だいかい礼拝らいはいして
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
大海だいかい
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
金色こんじき飛沫しぶきつめたくそらをうつ大海だいかいの波は悲しかりけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「船幽霊は大海だいかいのものだ。かたにはねえなあ。」
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
漫々たる大海だいかいへぼかん!
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)