大河たいが)” の例文
千葉ちば埼玉さいたま、あの大河たいが流域りうゐき辿たど旅人たびびとは、時々とき/″\いや毎日まいにちひとふたツは度々たび/″\みづ出會でつくはします。これ利根とねわすぬまわすみづんでる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
名に負ふ宇治の大河たいがには、雪解ゆきげの水が滔々とみなぎり落ちて來る。川の向ひには木曾きその人數およそ五百餘騎、楯をならべて待ち受けてゐたわ。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
何分なにぶん支那しなひろくにでありますし、またその東部とうぶ大河たいがながしたどろだとか、かぜおくつてきたちひさいすなだとかゞつもつて、非常ひじようにそれがふかいために
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
大王はけらいにむかって「だれかこの大河たいがの水をさかさまにながれさせることのできるものがあるか」とわれました。
手紙 二 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「五月雨や大河たいがを前に家二軒」という句は、蕪村の名句として一般に定評されているけれども、この句はそれと類想して、もっとちがった情趣が深い。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
大河たいがの流れがえんえんと続いており、所々に森がこんもりと茂り、宮殿からずっと都の町が屋根並やねなみそろえ、その間々は、見渡す限り見物人で埋まっていました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それより両国尾上町りやうごくをのへちやう京屋きやうや楼上ろうじやう集会しふくわいする事十とせあまり、これを聞くものおれれに語り、今は世渡よわたるたつきともなれり、峨江がこうはじめさかづきうかめ、すゑ大河たいがとなるはなしすゑ金銭きんせんになるとは
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
このいきもつかず流れている大河たいがは、どのへんから出て来ているだろうかと思ったことがある。維也納ウインナ生れの碧眼へきがん処女しょじょとふたりで旅をして、ふたりして此の大河のながれを見ていた時である。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しかしその響は幽谷に獅子ししえるような底深いものではないので、私は熱帯の平原を流れる大河たいがのほとりに、あしの葉のそよぎを聞くのかと思った事がありました。虫は絶えず鳴いています。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
遠つあふみ大河たいがながるる国なかば菜の花さきぬ富士をあなたに
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さてこそ沈め、靜かなる大河たいがの胸に。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
五月雨や大河たいがを前に家二軒
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「べらぼうめ、飛越とびこしたぐらゐの、ちよろがはだ、また飛返とびかへるに仔細しさいはあるめえ。」と、いきつて見返みかへすと、こはいかに、たちま渺々べう/\たる大河たいがつて、幾千里いくせんりなるやはてず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梅雨ばれの大河たいが流るる國を北に晝顏うゑぬ夢みる人と
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
大河たいがの水の薄濁り——ふかき思ひを
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
洋々やう/\たる大河たいがとも漠々ばく/\たる原野げんやむ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)