埋火うずみび)” の例文
東風こち すみれ ちょう あぶ 蜂 孑孑ぼうふら 蝸牛かたつむり 水馬みずすまし 豉虫まいまいむし 蜘子くものこ のみ  撫子なでしこ 扇 燈籠とうろう 草花 火鉢 炬燵こたつ 足袋たび 冬のはえ 埋火うずみび
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ぬかいて、附木を持翳もちかざすと、火入ひいれ埋火うずみびを、口が燃えるように吹いて、緑青の炎をつけた、ぷんと、硫黄いおうにおいがした時です。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引き寄せて見ると生憎あいにく、煙草盆の埋火うずみびが消えてゐたので、行燈あんどんの方へひざを向けた——自然、まつすぐに離れ家の方を彼は向いてしまつたのである。——
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
呂昇は巧みにそれらの弱点を突いて、情緒をさわがせ、酔わし、彼らの胸の埋火うずみび掻起かきおこさせ、そこへぴたりと融合する、情熱の挽歌ばんかを伴奏したのである。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
急にひきしまった顔で香炉こうろを引きよせ、埋火うずみびの上に銀葉ぎんようをのせ、香づつみをひらいて香を正しく銀葉のまんなかにのせ、香炉を右にとり、左に持ちかえ
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
阿賀妻はだしぬけに一言そう云って、煙草盆の小さな埋火うずみびをきせるの先で掻きだした。そのあわれな火玉を、最後の握り飯にかじりついている甚助におしてやった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
火箸ひばし埋火うずみびき集めながら)でも、田舎では、こんな事は珍らしくないんでしょう? 田舎の、普通の、恋愛形式になっているのね、きっと。夜這よばいとかいう事なんじゃないの?
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
柾は屋根に箱桶はこおけに曲げ、または柾仏まさぼとけと謂って塔婆とうばなどにも使ったもので、いくら粗末に割ってもこれを焚付けにするのは惜しいようだが、これさえあれば豆ほどの埋火うずみびを起こしても
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
暁方あけがたの冷えを勘定に入れて大火鉢へ埋火うずみび二杯、煙草盆と茶と、菓子と、足の踏みどころもなく配った上、百目蝋燭ろうそくけた大燭台おおしょくだいが四基、二つは栄三郎の左右へ、女中のお千代がまもって控え
おかしきばかりかあわれに覚えて初対面からひざをくずして語る炬燵こたつあい宿やどの友もなき珠運しゅうんかすかなる埋火うずみびに脚をあぶり、つくねんとしてやぐらの上に首なげかけ、うつら/\となる所へ此方こなたをさして来る足音
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多岐たきな、複雑な、彼女の生活と、身に燃え現わされた純愛の炎と、おしのように無表情で、灰のように冷たく人には見せて来た自分の情熱の埋火うずみびと——いずれが強くいずれが苦しかったかといえば
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
埋火うずみびのほかに心はなけれども向へば見ゆる白鳥の山
日本の山と文学 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
埋火うずみび
歳時記新註 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
し、秀抜な山のたたずまいや、雄渾ゆうこんな波濤の海を眺めやったなら、それを讃嘆する心の興奮に伴って、さすがに埋め尽した積りの珪次との初恋の埋火うずみび
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あめは、今でも埋火うずみびなべを掛けて暖めながら、飴ん棒と云う麻殻あさがらの軸に巻いて売る、にぎやかな祭礼でも、びたもので、お市、豆捻まめねじ薄荷糖はっかとうなぞは、お婆さんが白髪しらが手抜てぬぐいを巻いて商う。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
関の山の月見草の崖に、うっとりと寝転んでいた時のお綱も凄艶せいえんにみえたが、緋の友禅に寝顔をつけて、埋火うずみびのほてりに上気している今のお綱は、お十夜の眼を眩惑げんわくするにありあまる濃艶のうえんさである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
埋火うずみびに年よる膝の小さゝよ 咫尺しせき
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お前は一度心のなかでは自殺した。而も死に切れないで藻掻もがきのたうち廻った後、自分の人間性の中から埋火うずみびを掘り起すように、ようやく見付け出して来たのが悪の力だ。お前は最初は慄えた。
ある日の蓮月尼 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
……炭団たどん埋火うずみびほだしばいて煙は揚げずとも、大切な事である。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)