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まえかけ
ふりがな文庫
“
前掛
(
まえかけ
)” の例文
妻は「死んだ」と言う語に驚いたらしく、
前掛
(
まえかけ
)
で手を
拭
(
ふ
)
き拭き
一寸
(
ちょっと
)
解
(
げ
)
せないらしく、「兵さん?」と言って、そのまま黙った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
前掛
(
まえかけ
)
で涙を拭きながら、父の給料の事やら、私たちの洋服代の事やら、いろいろとお金の事を、とても露骨に言い出しました。
千代女
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
女はたちまち帰り来りしが、
前掛
(
まえかけ
)
の下より現われて膳に
上
(
のぼ
)
せし
小鉢
(
こばち
)
には
蜜漬
(
みつづけ
)
の
辣薑
(
らっきょう
)
少し
盛
(
も
)
られて、その
臭気
(
におい
)
烈
(
はげ
)
しく
立
(
た
)
ち
渡
(
わた
)
れり。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
外から帰って来た
平兵衛
(
へいべえ
)
は、台所の方で何かやっていた妻を傍へ呼んだ。女は水で
濡
(
ぬ
)
れた手を
前掛
(
まえかけ
)
で拭き拭きあがって来た。
水面に浮んだ女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
揃いの
盲縞
(
めくらじま
)
の着物、
飛白
(
かすり
)
の
前掛
(
まえかけ
)
、
紺
(
こん
)
の
脚絆手甲
(
きゃはんてっこう
)
、
菅
(
すげ
)
の
笠
(
かさ
)
という一様な
扮装
(
いでたち
)
で、ただ前掛の紐とか、
襦袢
(
じゅばん
)
の
襟
(
えり
)
というところに、めいめいの好み
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
それでは働くのに不便なので、
裾
(
すそ
)
を少しばかり割り裂いて、足の働きの自由なようにしたのを
前掛
(
まえかけ
)
まはた
前垂
(
まえだれ
)
と謂った。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と、
甘谷
(
あまや
)
という
横肥
(
よこぶと
)
り、でぶでぶと脊の低い、ばらりと髪を長くした、太鼓腹に角帯を巻いて、
前掛
(
まえかけ
)
の
真田
(
さなだ
)
をちょきんと結んだ、これも医学の落第生。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
芸者襟付の
不断着
(
ふだんぎ
)
に帯は
必
(
かならず
)
引掛
(
ひっかけ
)
にして
前掛
(
まえかけ
)
をしめ、黒縮緬五ツ紋の
羽織
(
はおり
)
を着て
素足
(
すあし
)
にて
寄席
(
よせ
)
なぞへ行きたり。毛織のショール既にすたれて
吾妻
(
あずま
)
コート流行。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
女中も出窓の日の光に、
前掛
(
まえかけ
)
だけくっきり照らさせながら、浅黒い眼もとに微笑を見せた。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
菱刺には多く白と
藍
(
あい
)
と紺との三色が用いられ、上着のみならず
股引
(
ももひき
)
にも刺し、また色糸入で
前掛
(
まえかけ
)
も作ります。刺し方で模様が
菱形
(
ひしがた
)
をとるので「菱刺」の名を得たのであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それからいやなものは向うの
荒物
(
あらもの
)
屋に行きました。その荒物屋というのは、ばけもの歯みがきや、ばけもの
楊子
(
ようじ
)
や、
手拭
(
てぬぐい
)
やずぼん、
前掛
(
まえかけ
)
などまで、すべてばけもの用具一式を売っているのでした。
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
夕方、
本所
(
ほんじょ
)
のごみごみした町の、とある
路地
(
ろじ
)
の奥にある、海の上でも一日として忘れたことのない
懐
(
なつ
)
かしい我が家へ入ると、すぐ下の妹、十五になるすみが、
前掛
(
まえかけ
)
で手を
拭
(
ふ
)
きながら飛び出して来た。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
黒の
前掛
(
まえかけ
)
、毛繻子か、セルか
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「
難有
(
ありがと
)
う様で、へい、」と
前掛
(
まえかけ
)
の腰を
屈
(
かが
)
める、
揉手
(
もみで
)
の
肱
(
ひじ
)
に、ピンと
刎
(
は
)
ねた、
博多帯
(
はかたおび
)
の
結目
(
むすびめ
)
は、赤坂
奴
(
やっこ
)
の
髯
(
ひげ
)
と見た。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
南向の小窓に雀の子の母鳥呼ぶ声
頻
(
しきり
)
なり。梯子段に
誰
(
た
)
れやら昇り
来
(
きた
)
る足音聞付け
目覚
(
めさ
)
むれば老婆の蒟蒻取換へに
来
(
きた
)
りしにはあらで、
唐桟縞
(
とうざんじま
)
のお
召
(
めし
)
の
半纏
(
はんてん
)
に
襟付
(
えりつき
)
の
袷
(
あわせ
)
前掛
(
まえかけ
)
締めたる八重なりけり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「一度なんか、
阿母
(
おっか
)
さんにねだってやっとやって貰うと、満員で横の隅の所にしか、はいれないんでしょう。そうすると、折角その人の顔が映っても、妙に平べったくしか見えないんでしょう。私、かなしくって、かなしくって。」——
前掛
(
まえかけ
)
を
片恋
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
どォれも
緞子
(
どんす
)
の
前掛
(
まえかけ
)
で
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
……洋服屋の
宰取
(
さいとり
)
の、あのセルの
前掛
(
まえかけ
)
で、頭の
禿
(
は
)
げたのが、ぬかろうものか、春暖相催し申候や否や、結構なお外套、ほこり落しは今のうち、と
引剥
(
ひきは
)
いで持って
行
(
ゆ
)
くと、今度は蝉の方で
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
髯
(
ひげ
)
のある
親仁
(
おやじ
)
が、紺の筒袖を、
斑々
(
むらむら
)
の
胡粉
(
ごふん
)
だらけ。腰衣のような幅広の
前掛
(
まえかけ
)
したのが、泥絵具だらけ、青や、
紅
(
あか
)
や、そのまま転がったら、
楽書
(
らくがき
)
の
獅子
(
しし
)
になりそうで、
牡丹
(
ぼたん
)
をこってりと
刷毛
(
はけ
)
で
彩
(
えど
)
る。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「誰か、おい、
前掛
(
まえかけ
)
を貸してくんな、」と見物を左右に呼んだ。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
掛
常用漢字
中学
部首:⼿
11画
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