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襟付
医者とも見える眼鏡の紳士が一人。汚れた
襟付の
袷に
半纏を重ねた
遣手婆のようなのが一人——いずれにしても
赤坂麹町あたりの電車には、あまり見掛けない人物である。
肩のいかった
身体付のがっしりした女であるが、長年
新富町の何とやらいう
待合の女中をしていたとかいうので
襟付の
紡績縞に
双子の
鯉口半纏を重ねた襟元に新しい
沢瀉屋の
手拭を掛け
南向の小窓に雀の子の母鳥呼ぶ声
頻なり。梯子段に
誰れやら昇り
来る足音聞付け
目覚むれば老婆の蒟蒻取換へに
来りしにはあらで、
唐桟縞のお
召の
半纏に
襟付の
袷前掛締めたる八重なりけり。