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儚
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はか
ふりがな文庫
“
儚
(
はか
)” の例文
古新聞を焚いて茶をわかしていると、
暗澹
(
あんたん
)
とした気持ちになってきて、一切合切が、うたかたの
泡
(
あわ
)
より
儚
(
はか
)
なく、めんどくさく思えて来る。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私が
儚
(
はか
)
ない期待を抱いて東京から九州へ参りましてから今はもう十年になりますがその間の私の生活はただ
遣瀬
(
やるせ
)
ない涙を以ておおわれました。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
亡霊
(
ぼうれい
)
のような
儚
(
はか
)
なさで、あなたはまた誰にか
罵
(
ののし
)
られたのか、
両掌
(
りょうて
)
で顔をおおい、泣きじゃくりながら近づいて来るのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
儚
(
はか
)
ない夢はある同窓の学友の助言から破れて行った。彼は自分と繁子との間に立てられている浮名というものを初めて知った。あられもない浮名。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
フランス人の
儚
(
はか
)
ない言葉は軽佻な洒落となってパッと輝くと、そのまま雲散霧消してしまい、また、ドイツ人の知的ではあるがぎこちない言葉は
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
▼ もっと見る
一方天高く遙かに仰ぎ見る如き
額
(
ぬか
)
づいた心で居ながら、而もその人が世にも不幸な
儚
(
はか
)
ない者に思はれて、慈悲の眼で、陰から見守つてやりたくなる。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
私がもう清浄な
身体
(
からだ
)
でないこと……自分でもそうは思われないくらいの
儚
(
はか
)
ない一刹那の出来事……それがタッタ一滴の血液の検査でわかるとは……。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「歩きますわ、御覧なさいな。」と沈んだ声でいいながら、お雪は打動かす団扇の蔭から、
儚
(
はか
)
ない一点の青い
灯
(
ともし
)
で、しばしば男の顔を透かして
差覗
(
さしのぞ
)
く。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大体人間というものは、空想と実際との食い違いの中に気息
奄々
(
えんえん
)
として(拙者なぞは白熱的に熱狂して——)暮すところの
儚
(
はか
)
ない生物にすぎないものだ。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その音のうちには人生の
儚
(
はか
)
なさだの、
煩悩
(
ぼんのう
)
だの、
愚痴
(
ぐち
)
だの、歎きだのが、
纒綿
(
てんめん
)
とこぐらかっているように聞えた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
泉原は住馴れた倫敦の下宿へ帰ってからも、その当座は頻りにグヰンの
儚
(
はか
)
ない一生が思出されてならなかった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
安値
(
あんちよく
)
の
報酬
(
はうしう
)
で
學科
(
がくくわ
)
を
教授
(
けうじゆ
)
するとか、
筆耕
(
ひつかう
)
をするとかと、
奔走
(
ほんそう
)
をしたが、
其
(
そ
)
れでも
食
(
く
)
ふや
食
(
く
)
はずの
儚
(
はか
)
なき
境涯
(
きやうがい
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
その校長の子は今日その遊び仲間を振り切つて帰つて来た。何となしに起る
儚
(
はか
)
ない
気鬱
(
きうつ
)
と、下腹に感ずる鈍い
疼痛
(
とうつう
)
とがやむを得ずその決心に到らしめたのである。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
が、日を経るにつれて、この、考えてみると
根拠
(
よりどころ
)
のない期待は、薄らぐ一方だった。
万一
(
もしや
)
の
儚
(
はか
)
ない希望が、しんしんと心を刻む痛さ、寒さに、置き代えられて来た。
釘抜藤吉捕物覚書:12 悲願百両
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
とうとうこの自分の建てた塔のてっぺんから地上へ身を投げて
儚
(
はか
)
ない最期をとげたとのこと。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
真佐子はますます非現実的な美女に気化して行くようで
儚
(
はか
)
ない哀感が沁々と湧くのであった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
楽壇にデビューしてからたった一年、それは華々しくはあったが、短く
儚
(
はか
)
ない人気でした。
奇談クラブ〔戦後版〕:16 結婚ラプソディ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いかなる権力も恋愛を奪うことは出来ない。そして自由とは本質的に孤独なものだ。自由が与えられた故に、何事でも自由に表現出来ると思うのは、人間の
儚
(
はか
)
ない空想であろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
浮気なうかれ
女
(
め
)
や、はしたない町のむすめが、ほんの一夜、ふた夜、ねむられぬ枕の上で描いて見る、まぼろしの恋よりも、もっともっと
儚
(
はか
)
ない、つまらない、いやしい恋としか
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
つまり人は誰でも死ななければならないという事が
儚
(
はか
)
ないことのようにも思われる。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
銀子の横顔に写る陽射しは
儚
(
はか
)
なき男の血潮であろうか、その
接吻
(
せっぷん
)
に
腫
(
ふく
)
れた唇
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
で解剖される人に向ツて、格別
儚
(
はか
)
ないと思ふやうなことも無ければ、死の不幸を悲しむといふやうなことも無かツた。彼の人の死滅に對する感想は、木の葉の
凋落
(
てうらく
)
する以上の意味は無かツたので。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
明け放れた空に浸みとおった朝日の黄色っぽい色と、これもまた、
愈々
(
いよいよ
)
あかるい色になった砂の山々であった。その砂に生えた
儚
(
はか
)
なげなハマナスが、彼女の膝の下で赤い茎をおしつぶされていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
と、
儚
(
はか
)
ない夢を追うのであった。
現代語訳 平家物語:12 第十二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
儚
(
はか
)
なげの
息
(
いき
)
絶えざまや
しやうりの歌
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
異境に
培
(
つちか
)
われた一輪の花の、やはり、実を結びがたい
悩
(
なや
)
みと
儚
(
はか
)
なさが
露
(
あら
)
わにあらわれていて、ぼくには
如何
(
いか
)
にも哀れに、悲しい夢だとおもわれたのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その深い罪のお詫びは、
仮令
(
たとえ
)
、この
儚
(
はか
)
ない玉の
緒
(
お
)
が絶えましてもキットお側に付添うて致します。……お別れしたくない……子供の事を
呉々
(
くれぐれ
)
もお願いします。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
安値
(
あんちょく
)
の
報酬
(
ほうしゅう
)
で
学科
(
がっか
)
を
教授
(
きょうじゅ
)
するとか、
筆耕
(
ひっこう
)
をするとかと、
奔走
(
ほんそう
)
をしたが、それでも
食
(
く
)
うや
食
(
く
)
わずの
儚
(
はか
)
なき
境涯
(
きょうがい
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
が、世界で一ばん古い独立国からの旅人の眼に、この世界で一番あたらしい独立国は、ただ雪解けの荒野を当てもなくさまようようにへんに
儚
(
はか
)
なく映ったのは仕方ないのだろう。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
儚
(
はか
)
ない生死の約束なんかに支配されて、人間なんか下らないみじめな生物なんだ。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何と云ふ
儚
(
はか
)
ない、いぢらしい感じでせう。泡のやうに生じてはすぐ消えて行く此の儚ない人間と云ふもののいかにも点け相な明りではありませんか。人間は本当に可哀相なものですね。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
開演しさえすればとの
儚
(
はか
)
ないたのみに無理算段を重ねていた一行は、直に
糊口
(
ここう
)
にも差支えるようになり、ホテルからも追出されるみじめさ、行きどころない身は公園のベンチに眠り、さまよい
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
退路を断たれ、
追捕
(
ついほ
)
の軍は迫ってきた。押勝はやむなく我が子、
辛加知
(
からかち
)
の任地越前に逃げ、塩焼王をたてて天皇と称し、党類に叙位して士気を
煽
(
あお
)
り、その
儚
(
はか
)
なさに哀れを覚えるいとまもなかった。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
今度ッくらい、自分の身の上が
儚
(
はか
)
なく思われたことはないんですよ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
消えてあとなき
儚
(
はか
)
なさよ
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
それとも、もしやお若い心の
遣
(
や
)
る瀬なさにこの世を
儚
(
はか
)
なみ思い詰めて、あられぬ御最期をなされはせまいか。これはこの身の
自惚
(
うぬぼ
)
れか。思い過ごしか。罪の深さよ。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
あしたに生れて夕に死んで行く
儚
(
はか
)
ない運命の人間には
厖大
(
ばうだい
)
な宇宙の力に対して、先天的に一種宗教的な性質を与へられてゐる事は事実です。それなしには人間は自然に対抗出来ないのです。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
人間の
交友
(
まじわり
)
のはてはみな
儚
(
はか
)
な桜見つつし行きがてぬかなし
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
げに、一刻千金
春宵
(
しゅんしょう
)
のながめよりも
儚
(
はか
)
なき青春よ!
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
は
儚
(
はか
)
なや実が一ツ
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
マユミを中心として描きつづける幸福な幻想に附随した
儚
(
はか
)
ない興味みたようなものに外ならなかったが、それでも一知は何喰わぬ顔をして明け暮れ器械イジリに熱中して
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
歌うを聴けば、
儚
(
はか
)
なげに——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
同時に彼女の
儚
(
はか
)
ない空想を現実に満足させようとしたのと同じ心理から出た作り事で、彼女がK大耳鼻科、助教授の要職にいる人から如何に信頼を受けておったかと言う事を
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうした
儚
(
はか
)
ない追憶に
耽
(
ふけ
)
るのは、お前のために
取残
(
とりのこ
)
されているタッタ一つの悲しい特権なのだ。お前以外に、お前のそうした痛々しい追憶を冷笑し
得
(
う
)
る者がどこに居るのだ……。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
……
妾
(
わたし
)
はねえ。失恋の結果世を
儚
(
はか
)
なみて、何度も何度も自殺しかけたんですってさあ。
狂人は笑う
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
儚
漢検1級
部首:⼈
15画