もよ)” の例文
時としては目下の富貴ふうきに安んじて安楽あんらく豪奢ごうしゃ余念よねんなき折柄おりから、また時としては旧時の惨状さんじょうおもうて慙愧ざんきの念をもよおし、一喜一憂一哀一楽
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「うまくは書いてあるかも知れないが、なん意味いみもない。」——彼はいつも、クリストフの家でもよおされる小演奏会しょうえんそうかい出席しゅっせきしたがらなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
きわ世間がしんと致し、水の流れも止り、草木も眠るというくらいで、壁にすだく蟋蟀こおろぎの声もかすかにあわれもよおし、物凄く
右の方を見ると、山の上に何かありさうだけれど、たゞ歩いてゐても汗をもよほしさうな日に、坂道を登るのはと、お光が先づ首を振りさうであつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
戦争が済んでからの半年ばかりは、いろんな凱旋を祝するもよおしがあった。私は父にれられて瓶詰びんづめの酒や、折詰おりづめを貰ってかえることがよくあった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「まだなにもよふしがあるのかい」とすこ迷惑めいわくさうなまゆをした。坂井さかゐ下女げぢよいてると、べつ來客らいきやくもなければ、なん支度したくもないといふことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もよひてさぶ馬士まごの道々語りて云ふ此宿も今は旅人りよじんを當にもなさず先づ養蠶一方なり田を作るも割に合はぬゆゑ皆な斯樣かやうに潰して畑となし豆を作るか桑を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
夕立ちもよいの曇天ではあったが、そんなことには驚かない。宗三郎スタスタ歩いて行く。神代原を通り抜け、螢ヶ丘の裾の辺を、木場の屯所の方へ歩いて行った。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
虚無党首領クロパトキン自伝の愛読者菱川硬次郎ひしかはかうじらうなり、其の頓才に満座にはかに和楽の快感をもよほせり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これにれるひとみづから睡眠ねむりもよふすほどの、だらりとした心地こゝち土地柄とちがらせいでもあらう。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
クララは即興詩でも聞くように興味をもよおして、窓から上体を乗出しながらそれに眺め入った。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
裏道傳うらみちづた二町にちやう三町さんちやう町名ちやうめいなにれねどすこりし二階建にかいだて掛行燈かけあんどんひか朧々ろう/\としてぬしはありやなしや入口いりぐちならべし下駄げた二三足にさんぞく料理番れうりばん欠伸あくびもよすべき見世みせがゝりの割烹店かつぽうてんあり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もよ
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
に離別の旧妻に対して多少の眷恋けんれんもよほすなからんやと、誠に然り、余が弁護士の職務をなげうつてよりすでに八星霜、居常きよじやう法律を学びしことにむかつ遺憾ゐかんの念なきに非ざりしなり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
すると四時十五分前頃から、今まで何とも無かったのに、急に嘔気はきけもよおして来た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)