伴天連ばてれん)” の例文
沢野忠庵というころ伴天連ばてれんが踏み絵を発明したことも事実であり、アントニオ・ルビノというばてれんが、殺されたことも事実である。
裏切れない信徒。寛永の邪宗門狩じゃしゅうもんがり以来、山のなかに逃げこんで山の会堂に子孫をつくっている伴天連ばてれんの血脈。そういうものの一団だ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さうして、その悪魔なるものは、天主教の伴天連ばてれんか(恐らくは、フランシス上人しやうにん)がはるばる日本へつれて来たのださうである。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
でなくば自身冥土めいどまで聞きに行ってくる切支丹きりしたん伴天連ばてれんの秘法でも心得ていないかぎり、推断に苦しむのは当然なことというべきでありました。
第一の童子 此御寺おてらの名を知るものは京中にはおぢやらぬわ。たつて知りたくば中の伴天連ばてれんに聞いて来やれ。ははははは。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「この間は浜松で、その伴天連ばてれんの一人が来て、傍に遊んでいる小供の頭をでると、それが犬になったと云いますよ」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
序文じよのぶん間々まゝ欧文を直訳したかのやうな語法を交へ、一見して伴天連ばてれんたる西人せいじんの手になつたものだらうと思はれるやうな所があると断り書まで添へたものだ。
それは、今から二十六年前(といへば、家康の切支丹禁令のことであらう)天草郡三津浦に居住の伴天連ばてれんを追放のとき、末鑑すえかがみといふ一巻の書物を残して行つた。
島原の乱雑記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
父はたちまち胸に動悸どうきをさせながら、これは、きりしたん伴天連ばてれん為業しわざであるから念力で片付けようと思つた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
慶長の頃天草上津浦かみつうらの一伴天連ばてれんが、国禁によって国外へ追放された時の遺言に、今より後二十六年、天帝天をして東西の雲を焦さしめ、地をして不時の花を咲かしめるであろう。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
恐ろしいのは外国とつくにだ! 恐ろしいのは異教徒だ! 憎むべきは吉利支丹きりしたんだ! ザビエル、ガゴー、フロエー、オルガンチノこれら切支丹の伴天連ばてれん共、教法に藉口しゃこうし耳目を眩し、人心を誘い邪法を用い
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いざさらばわれらにたまへ、幻惑げんわく伴天連ばてれん尊者そんじや
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まるで切支丹伴天連ばてれんじゃあねえか
円朝花火 (新字新仮名) / 正岡容(著)
伴天連ばてれんの師ののたまはく
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
伴天連ばてれんズボンだヨ
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
伴天連ばてれん様。どうかわたしの懺悔ざんげを御聞き下さい。御承知でも御座いましょうが、この頃世上に噂の高い、阿媽港甚内あまかわじんないと云う盗人ぬすびとがございます。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
寺院も増築しているし、また、さきに許可を得たオルガンチノ一派の伴天連ばてれんも、地を選んで、南蛮寺の建立こんりゅうにかかっていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又拷問の仕方や、始めの歴史叙説は無論、沢野忠庵と云ふ転び伴天連ばてれんが踏絵を発明した事も事実であり、アントニオ・ルビノと云ふばてれんが殺された事も事実である。
西坂にしざか伴天連ばてれん不浄ふじやうといひて言継いひつぎにけり悲しくもあるか
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
第一の人 あれ伴天連ばてれんが妖術を始めたぞ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
護摩ごまき修し、伴天連ばてれんすくひよぶとも
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
現在、切支丹屋敷の牢獄に、たッた一人いる異国人とは、すなわち伊太利イタリヤローマの人、伴天連ばてれんヨハンのことであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伴天連ばてれん、さあ、婚礼はわたしがさせてもいが、——何しろ阿蘭陀オランダ生れだけに、あの女の横柄わうへいなのは評判だからね。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
黄髪わうはつ伴天連ばてれん信徒しんと蹌踉さうらう
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わがまなこより見れば、尊げに「さんた・まりあ」などと念じ玉う、伴天連ばてれんの数は多けれど、悪魔「るしへる」ほどの議論者は、一人いちにんもあるまじく存ずるなり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
オルガンチノは伊太利イタリア生れの伴天連ばてれんだった。平戸ひらど長崎ながさきあたりはいうまでもなく、さかい安土あづち、京都、畿内きないのいたる処にも無数の宣教師が日本に渡っていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長は、いま、この伴天連ばてれんを、もっとも適切な局面に用いようとしている。そのため手許へ呼んだのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その後京の「ぐれごり屋」と申す伴天連ばてれんへも何やら横文字のお書置きをなされ、これはわたくしへお渡し遊ばされ候、この横文字のお書置きは五六行には候へども
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしはもう今日けふ限り、あなたとも御つきあひは御免ごめんかうむりませう。古伊万里こいまり甲比丹かぴたん小柄こづか伴天連ばてれん亀山焼かめやまやき南蛮女なんばんをんな、——いえ、いえ、それどころではありません。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ともあれ、お前は夜光の短刀の秘密をひらく一つの鍵だ。おまえという羅馬ローマ王家の血すじを伝えている人間があればこそ、死んでは渡り、絶えては代り、この日本へ海を越えて来る伴天連ばてれんがある」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでこの伴天連ばてれんは、輿こしの側へ近づくと、たちまち尊い十字架くるすの力によつて難なく悪魔を捕へてしまつた。さうしてそれを南蛮寺の内陣ないじんへ、襟がみをつかみながらつれて来た。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私宅を立ち出で候所、篠宅の前へ来かかり候へば、村方の人々大勢たたずみ居り、伴天連ばてれんよ、切支丹きりしたんよなど、罵り交し候うて、馬を進め候事さへ叶ひ申さず、依つて、私馬上より
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたは日本にほんにいる伴天連ばてれんの中でも、道徳の高い人だと聞いています。して見れば盗人と名のついたものと、しばらくでも一しょにいると云う事は、愉快ではないかも知れません。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
われ、即ち匇惶そうこうとして伴天連ばてれんの許に走り、「るしへる」が言を以てこれに語りたれど、無智の伴天連、かえってわれを信ぜず。宗門の内証にそむくものとして、呵責かせきを加うる事数日なり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右紅毛の伴天連ばてれんろどりげ儀、今朝こんてう伊留満いるまん共相従へ、隣村より篠宅へ参り、同人懺悔こひさん聞き届け候上、一同宗門仏に加持致し、或は異香をくゆらし、或は神水を振りそそぎなど致し候所
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(微笑)伴天連ばてれんのあなたを疑うのは、盗人ぬすびとのわたしには僭上せんじょうでしょう。しかしこの約束を守らなければ、(突然真面目まじめに)「いんへるの」の猛火に焼かれずとも、現世げんぜばちくだる筈です。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
伴天連ばてれんうるがんの眼には、ほかの人の見えないものまでも見えたさうである。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
参詣の奉教人衆ほうけうにんしゆうが介抱し、それより伴天連ばてれんの憐みにて、寺中に養はれる事となつたげでござるが、何故かその身の素性すじやうを問へば、故郷ふるさとは「はらいそ」(天国)父の名は「でうす」(天主)などと
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なほしの及娘さと当日伴天連ばてれんろどりげ同道にて、隣村へ引移り候次第、並に慈元寺じげんじ住職日寛殿計らひにて同人宅焼き棄て候次第は、既に名主塚越弥左衛門殿より、言上ごんじやう仕り候へば、私見聞致し候仔細は
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
金象嵌きんざうがん小柄こづか伴天連ばてれんに)どうしたものでせう? パアドレ!
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
伴天連ばてれんめきたる人影ひとかげあり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)