ちよつ)” の例文
『え。渡辺さんといふお友達の家に参りましたが、その方の兄さんとお親い方だとかで……アノ、ちよつとお目に懸つたんで御座います。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『ぢや、エウゲニイ、フエオドロヰチでも此處こゝんでい、ちよつおれれツてつてるとへ……ちよつとでいからツて!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「蒲田は如才ないね。つらまづいがあの呼吸で行くから、往々拾ひ物を為るのだ。ああいはれて見るとたれでもちよつと憎くないからね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
板橋がよひのがたくり馬車がつじを曲りかけてけたゝましくべるを鳴らしてゐた。俥、荷車、荷馬車、其が三方から集ツて來て、此處でちよつと停滞する。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
奇妙々々きめう/\!』とあいちやんがさけびました(非常ひじやうおどろいたためなんつていかちよつわからず)『いまわたしは一ばんおほきい望遠鏡ばうゑんきやうのやうに、何時いつそといたッきりだわ!左樣さやうなら、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
男はちよつ足淀あしよどみして、直ぐまた私の立つてゐる前を医者の方へ駈け出した。其何秒時の間に、藤野さんの変つた態が、よく私の目に映つた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ええ、解つてゐらつしやりながらちよつともお解りにならないのですから、私もますます解らなくなりますですから、さう思つてゐらつしやいまし」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「何ツて、もう晝寢ひるねをする時節でもないでせう。」と皮肉に謂ツて、「私、ちよつと本郷まで行ツて來ますよ。」
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
はいはうから病人びやうにんなのですがな。』とハヾトフは小聲こごゑふた。『や、わたし聽診器ちやうしんきわすれてた、つてますから、ちよつ貴方あなた此處こゝでおください。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
門を出て右へ曲ると、智恵子はちよつと学校を振返つて見て、『気障きざひとだ。』と心に言つた。故もない微笑ほほゑみがチラリと口元に漂ふ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「さあ唯今ちよつと手が放せませんので、御殿の方に居りますから、どうか彼方あちらへお出なすつて。ぢき其処そこですよ。婢に案内を為せます。あのとよや!」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
由三は何か此う別天地の空氣にでも觸れたやうな感じがして、ちよつと氣がうはついた。またウソ/\と引返して電車みちに出る。ヤンワリと風が吹出した。埃が輕く立つ。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わたくし中食後ちゆうじきご散歩さんぽ出掛でかけましたので、ちよつ立寄たちよりましたのです。もう全然まるではるです。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
主婦おかみの奴が玉子酒をこしらへてくれたもんですから、それ飲んで寝たら少し汗が出ましたねす。まだ底の方がちよつと痛みますどもねす。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
だ/\有るがちよつと胸にうかばない、這麼こんなふう業躰げふていが違つてるのです、さうして、後〻のち/\硯友社員けんいうしやいんとして文壇ぶんだんに立つた川上眉山かはかみびさん巌谷小波いはやせうは江見水蔭えみすゐいん中村花痩なかむらくわさう広津柳浪ひろつりうらう渡部乙羽わたなべおとは
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
二人は勝手へのへだての敷居に両手を突いて、『お早エなつす。』を口の中だけに言つて挨拶をすると、お吉は可笑しさにちよつと横向いて笑つたが
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二人は勝手へのへだての敷居に兩手を突いて、『お早エなつす。』を口の中だけに言つて、挨拶をすると、お吉は可笑しさにちよつと横向いて笑つたが
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、他所行よそゆきの衣服を着たお吉が勝手口から入つて来たので、お定は懐かしさに我を忘れて、『やあ』と声を出した。お吉はちよつと笑顔を作つたが
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『まあうですか。ちよつとお手紙にも其麽そんな事があつたつて、新太郎が言つてましたがね。お前さん達、まあ遠い所をよくお出になつたことねえ。ほんとに。』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『まあ然うですか。ちよつとお手紙にも其麽そんな事があつたつて、新太郎が言つてましたがね。お前さん達、まあ遠い所をよくお出になつたことねえ。ほんとに。』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『え、ちよつと歩いて見ませう。』と、酒臭い息を涼しい空に吹く。月の無い頃で、其処此処に星がチラついた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、私が水を注いでやつた時、ちよつ叩頭おじぎをするのは藤野さん一人であつた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして狹い床の間にちよつと腰掛けて、三言四言お愛想を言つて降りて行つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
で、何處までも末頼母しい情人の樣に、態度をくづさず女の傍に密接くつついて歩きながら滿心の得意が、それだけで足らず、ちよつ流盻ながしめを使つて洋裝の二人連を見た。其麼どんな顏をしてけつかるだらうと思つて。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と言つて、ちよつと校長に流盻よこめれた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)