三保みほ)” の例文
後でその説明を聞いたら、三保みほ松原まつばらだの天女てんにょ羽衣はごろもだのが出て来る所はきらいだと云うのです。兄さんは妙な頭をもった人にちがいありません。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうど、いまから二千ねんばかりまえのことでありました。三保みほ松原まつばらちかくに、一人ひとりわか舟乗ふなのりがすんでいました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれには樗牛が月夜か何かに、三保みほの松原の羽衣はごろもの松の下へ行って、大いに感慨悲慟ひどうするところがあった。
樗牛の事 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
未明に鉄舟寺を辞すると、まず竜華寺りゅうげじの日の出の富士ふじあおぎ、三保みほ松原まつばらで海気を吸い、清水駅から汽車で御殿場ごてんばに出て、富士の裾野すそのを山中湖畔こはんまでバスを走らせた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
興津おきつを過ぐる頃は雨となりたれば富士も三保みほも見えず、真青なる海に白浪風に騒ぎすなどる船の影も見えず、磯辺の砂雨にぬれてうるわしく、先手の隧道ずいどうもまた画中のものなり。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なるかなさら一時間いちじかんいくらとふ……三保みほ天女てんによ羽衣はごろもならねど、におたからのかゝるねえさんが、世話せわになつたれいかた/″\、親類しんるゐようたしもしたいから、お差支さしつかへなくば御一所ごいつしよ
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三保みほの松原とか、久能山くのうさんだとか……あれ何ていうの樗牛ちょぎゅうという人のお墓のあるところ……龍華寺りゅうげじ? 方々見せてもらって、静岡に滞在していたの。そして土地のも呼んで、浮月に流連いつづけしていたの。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
三保みほの入江にけぶり立ち、有渡うどの山かげおぼろにして見えわかず、袖師そでし、清水の長汀ちやうてい夢の如くかすみたり。世にもうるはしきけしきかな。われは磯邊いそべの石に打ちよりてこしかた遠く思ひかへしぬ。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
三保みほ松原まつばら漁夫いさりを
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
翌日も約束通り一人で三保みほ竜華寺りゅうげじを見物して、京都へ行ってから安井に話す材料をできるだけこしらえた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
靜岡しづをかから、すぐに江尻えじり引返ひきかへして、三保みほ松原まつばら飛込とびこんで、天人てんにん見參けんざんし、きものをしがるつれをんなに、羽衣はごろも瓔珞えうらくをがませて、小濱こはま金紗きんしやのだらしなさを思知おもひしらさう、ついでに萬葉まんえふいんむすんで
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
興津おきつあたりでとまつて、清見寺せいけんじ三保みほ松原まつばらや、久能山くのうざんでもながらゆつくりあそんでかうとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてなるべくならいっしょの汽車で京都へくだろう、もし時間が許すなら、興津おきつあたりで泊って、清見寺せいけんじ三保みほの松原や、久能山くのうざんでも見ながらゆっくり遊んで行こうと云った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翌日よくじつ約束やくそくどほ一人ひとり三保みほ龍華寺りゆうげじ見物けんぶつして、京都きやうとつてから安井やすゐはな材料ざいれう出來できだけこしらえた。しか天氣てんき所爲せゐか、あてにしたつれのないためか、うみても、やまのぼつても夫程それほど面白おもしろくなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)