ぼね)” の例文
「鯨ん鼻んぼねですたい。輪切がえらかもんな。そりゃ珍らしか。いとんなはるなら送らせまっしう。うむむ、後で連れてう。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
この男は村一番の強者つわもので、ある時村の一番強い牛と喧嘩けんかをして、その牛の角をへしり、あばらぼね蹴破けやぶって見事みごとたおしてしまったことのある男であった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ほおぼねのとがりかたから察して、多分、過度な勉学のため、神経病にでもかかったか、あるいは、酒の飲みすぎのためか、——などとひとり答えをつけていたものである。
何年なんねんまえにも、どこかでたことがあるような記憶きおくがしました。やせこけた、あばらぼねうまが、全身ぜんしんみずをあびたようにあせにぬれて、おもくるまをひきかねているのでした。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
打水うちみづのあとかろ庭下駄にはげたにふんで、もすそとる片手かたてはすかしぼね塗柄ぬりえ團扇うちわはらひつ、ながれにのぞんでたつたる姿すがたに、そらつきはぢらひてか不圖ふとかゝるくもすゑあたりにわかくらくなるをりしも
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
護摩壇ごまだんむかつて、ひげかみおどろに、はりごと逆立さかだち、あばらぼねしろく、いき黒煙くろけむりなかに、夜叉やしや羅刹らせつんで、逆法ぎやくはふしゆする呪詛のろひそう挙動ふるまいにはべくもない、が、われながらぎんなべで、ものを
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、おかみさんはいいながら、漁師りょうしのあばらぼねをひじでつつきました。
とおどろいたような声が、泉の亭のなかからもれ、池に面したぼね障子しょうじがスッといた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)