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ぼね
何年か
前にも、どこかで
見たことがあるような
記憶がしました。やせこけた、あばら
骨の
出た
馬が、
全身に
水をあびたようにあせにぬれて、
重い
車をひきかねているのでした。
打水のあと
輕く
庭下駄にふんで、
裳とる
片手はすかし
骨の
塗柄の
團扇に
蚊を
拂ひつ、
流れに
臨んで
立たる
姿に、
空の
月恥らひてか
不圖かゝる
行く
雲の
末あたり
俄に
暗くなる
折しも
護摩壇に
向つて、
髯髪も
蓬に、
針の
如く
逆立ち、あばら
骨白く、
吐く
息も
黒煙の
中に、
夜叉羅刹を
呼んで、
逆法を
修する
呪詛の
僧の
挙動には
似べくもない、が、
我ながら
銀の
鍋で、ものを
煮る