)” の例文
旧字:
自分の家からは、職人たちの金物を彫っている metallique な音にじって、ときおり若い娘たちの笑い声が聞えてくる。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
甲州小判大判取りぜ、数万両、他に、刀剣、名画等を幾何いくばくともなく強奪したのを最後に、世の中から姿を消してしまったそうじゃ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あてに来た書状も、一通り目を通すのが、彼女の役だった。その朝は、父宛の書留が一通じっていた。それは内容証明の書留だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人々の間に立ちじると、この病気に対して撃退しようとする積極的な気持に帰れるのであるが、近頃ではそれがヒドくなり
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
楽音の旋律更に激越想壮の度を加へ、之に諧和せざる梵音はた三絃の声も、囂々がうがうとして亦その中にじる。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
そうしたらネ、アノなんですッて、私の言葉には漢語がざるから全然まるっきり何を言ッたのだか解りませんて……真個ほんとに教育のないという者は仕様のないもんですネー
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
生絹はその僅かな留守居のあいだにも、何度か聞耳ききみみを立て、何度か往来の道ばたに出て行った。きゅうに春めいた田や畠はえた青い粉をぜた、かさねの色に見えた。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
また柳田君の『山島民譚集』にあつめた、河童かっぱが接骨方を伝えた諸説の原話らしい、『幽明録』の河伯女かはくのむすめが夫とせし人に薬方三巻を授けた話などを取りぜた作と見ゆ。
めたりと云うには余りおぼろにて、眠ると評せんには少しく生気せいきあます。起臥きがの二界を同瓶裏どうへいりに盛りて、詩歌しいか彩管さいかんをもって、ひたすらにぜたるがごとき状態を云うのである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その深い幾条いくすぢかの泥濘の轍の中にも、かれはその美しい幻影イリユウジヨンぜることが出来た。
赤い鳥居 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
あの嗚咽おえつする琵琶の音が巷の軒から軒へと漂うて勇ましげな売り声や、かしましい鉄砧かなしきの音とざって、別に一どうの清泉が濁波だくはの間をくぐって流れるようなのを聞いていると、うれしそうな
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
貴方の本当のお顔を、この幹の中ではじめて見た時には、今度はまるで性質のちがった涙が、私の心をうまく掻きぜてくれました。私はどうしても、そうせずにはいられなかったのです。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
馬鹿野郎、余計なことを口走るな、と云うような調子でぜ返して仕舞しまう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
附景気つけげいきで面白さうに騒がれるだけ騒ぎ、毒と知りながら、麦酒ビールに酒ぜてのぐいのみ、いまだに頭痛がしてなりませぬとの事なり、兼吉がこの話の内、半熟の卵に焼塩添へて女の持ち運びし杯盤はいばん
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
真面目にとり扱っているような風ではあるが、そこには狡猾にひやかしがぜられている。劇中劇などと逃げを打って、イヤに比喩めかして、あり得べからざる安易さで革命をこねあげて見せている。
その朝は、父宛の書留が一通じつてゐた。それは内容証明の書留だつた。裏を返すと、見覚えのある川上万吉と云ふ金貸業者の名前だつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そうしてそんな中にじって、一すじだけ、誰かの足跡がかすかについている。それは僕自身のだか、立原のだか……。
雪の上の足跡 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
と、その時、何んたる怪異であろう! 坐っている道了塚の下から、大岩を貫き、銀の一本の線のような、恐怖と悲哀とをぜにした男の声が
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
リヤカーに白米を積んだのや、天秤てんびんでつっかけたざるに、味噌とか野菜とかを入れた百姓女達、中には赤いネルの腰巻をたらした娘なぞもじって、毎朝のように群をなして通る。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
「少し無理なつもりだが表題だからまず負けておくとしよう。それから早々そうそう本文を読むさ、君は声が善いからなかなか面白い」「ぜかえしてはいかんよ」とあらかじめ念を押してまた読み始める。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちぢれてうすい黄みをぜてゐる
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
みんな五つ六つぐらいの男の子や女の子が入れじって、笑ったり、わめいたりしながら、遊戯なんぞをしていた。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
編笠を冠ったままの、みすぼらしい扮装みなりの浪人であったが、小判小粒とりぜ、目紙めがみの三へ張ったところ、それが二回まで受け、五両が百二十五両になった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何処かの領事館らしいやしきの前で、外人の子供もじって、数人の少年少女が二組に分かれて雪を投げ合っていた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
憎悪にくしみ憐愍あわれみとをこきぜた——怒と悲との声であった。そうしてその声は水を渡り、濛気の壁を貫いて、纐纈城まで届きそうな大きい高い声でもあった。しかし返辞は来なかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
只なんという事なしに女房たちの中にじって、もとの朋輩ほうばいたちと気やすく語らってさえいれば好かった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
彼等は男女取りぜて三十人余りの人数であった。それに馬が二頭いた。それから白という猛犬がいた。それから例の鼬がいた。これらのものが一斉に、役人達に敵対した。彼等は武器を持っていた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仔馬は、しまいには親馬の背中から草をすこしばかりむしりとって、何という事もなしにそれを横にくわえている。その中には、草の花のようなものまでじっているのが見える。……
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)