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陋屋
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ろうおく
ふりがな文庫
“
陋屋
(
ろうおく
)” の例文
堂屋敷は、来てみると意外にも空家ばかりで、ただ一人老いた鳥刺しが軒も傾いた
陋屋
(
ろうおく
)
にぽつねんと囮の餌をすっているだけであった。
春の遠山入り:(易老岳から悪沢岳への縦走)
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
れいの、北さんと中畑さんとが、そろって三鷹の
陋屋
(
ろうおく
)
へ訪ねて来られた。そうして、故郷の母が重態だという事を言って聞かせた。
故郷
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その面影は再び、この影の中に、この
屋根部屋
(
やねべや
)
の中に、この醜い
陋屋
(
ろうおく
)
の中に、この恐ろしい醜悪の中に、現われきたったのである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
台石の蓮花の中に、延宝八庚申正月八日とあるのは、この碑を建てた日である、と
筠庭
(
いんてい
)
雑録に載っている。戸崎町は、私の
陋屋
(
ろうおく
)
から遠くはない。
酒渇記
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
小箱のような
陋屋
(
ろうおく
)
からは赤児の泣き声や女の喚き声や竹の棒切れで撲る音などが、巷に群れている野良犬の声と、殺気立った
合唱
(
コーラス
)
を作っている。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
「
簑
(
みの
)
と傘とがもの語り行く」道のほとりに、或は「人住みて煙壁を漏る」
陋屋
(
ろうおく
)
の内に、「春雨や暮れなんとしてけふもあり」という情景も床しく
雨の日
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
あまりに日本化している。日本化したといえ、それは日本の乞食の住居のような
陋屋
(
ろうおく
)
がいかにも多く見られたのである。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
あの東大泉の雑木林の中の博士の
陋屋
(
ろうおく
)
へ、はるばると東武電車に乗って東大理学部長寺沢寛一先生の代理なる者が、博士に面会にやって来たんだよ。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
君子がものごころのつく頃には祖母と二人で、ある
山端
(
やまばた
)
の掘っ立て小屋のような
陋屋
(
ろうおく
)
に住んでいた。どこか遠い国から、そこに流れてきたものらしい。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
しかれども赤貧洗うがごとく常に
陋屋
(
ろうおく
)
の中に住んで世と
容
(
い
)
れず。
古書
(
こしょ
)
堆裏
(
たいり
)
独
(
ひとり
)
破几
(
はき
)
に
凭
(
よ
)
りて
古
(
いにしえ
)
を
稽
(
かんが
)
え道を
楽
(
たのし
)
む。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
阿部麻鳥
(
あべのあさとり
)
(もと朝廷の
伶人
(
れいじん
)
)崇徳天皇に愛され、天皇退位の後も、御所の柳ノ水の水守を勤め、
讃岐
(
さぬき
)
の配所までお慕いして、今は都の
陋屋
(
ろうおく
)
に住んでいる
若人
(
わこうど
)
。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
併
(
しか
)
したまたまわが
陋屋
(
ろうおく
)
の庭に枇杷の
核
(
み
)
の生育して巨木となったのを目前に見る時、歳月の経過を顧み、いかに
甚
(
はなはだ
)
しく時勢の変転したかを思わずには居られない。
枇杷の花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
貧しき者が縁日の草花に九尺の
陋屋
(
ろうおく
)
を飾るのも、自然を楽しみ自己の生命を楽しまんとする所以であって
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
太陽の光線は存外公平なもので屋根にペンペン草の目標のある
陋屋
(
ろうおく
)
でも、金田君の客間のごとく陽気に暖かそうであるが、気の毒な事には
毛布
(
けっと
)
だけが春らしくない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あのドルセット街の
陋屋
(
ろうおく
)
におけるケリイ別名ワッツ殺しの場合のような徹底した狂暴ぶりは、野獣か狂者でないかぎり、いかに残忍な、無神経な、血に餓えた人間であっても
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
あさくさ瓦町の
陋屋
(
ろうおく
)
にぐるぐる巻きでつっかぶっていたお艶ではなく江戸でも粋と意気の本場、辰巳の里は櫓下の夢八姐さん……夜の室内で見た時よりは一段と立ちまさって
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
吉屋さんは、玄関の前に井戸のある私の
陋屋
(
ろうおく
)
に時々おとずれて面白い話をしてゆかれた。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
歌人
松
(
まつ
)
の
門
(
と
)
三艸子
(
みさこ
)
も数奇な運命をもっていた。八十歳近く、半身不随になって、妹の
陋屋
(
ろうおく
)
でみまかった。その年まで、不思議と弟子をもっていて人に忘れられなかった女である。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかし、ぼくは今日、ロスアンゼルスで買った記念の
財布
(
さいふ
)
のなかから、あのとき大洋丸で、あなたに貰った、
杏
(
あんず
)
の実を、とりだし、ここ
京城
(
けいじょう
)
の
陋屋
(
ろうおく
)
の
陽
(
ひ
)
もささぬ裏庭に
棄
(
す
)
てました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
ただその
陋屋
(
ろうおく
)
に立派な物は、表の格子戸と二階の物置へあがる大
階子
(
はしご
)
とであった。その格子戸は
葭町
(
よしちょう
)
の芸妓屋の払うたものを二
分
(
ぶ
)
で買ったもので、階子はある料理屋の古であった。
死体の匂い
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私が或る特殊な縁故を
辿
(
たど
)
りつつ、
雑司
(
ぞうし
)
ヶ
谷
(
や
)
鬼子母神
(
きしもじん
)
裏
陋屋
(
ろうおく
)
の放浪詩人
樹庵次郎蔵
(
じゅあんじろぞう
)
の間借部屋を訪れたのは、
恰
(
あたか
)
も秋は
酣
(
たけなわ
)
、鬼子母神の祭礼で、平常は真暗な境内にさまざまの見世物小屋が立ち並び
放浪作家の冒険
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
九尺二間の豚小屋にも劣る
陋屋
(
ろうおく
)
に、病人の兄と二人住む妹の美しさ。
銭形平次捕物控:076 竹光の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わが
陋屋
(
ろうおく
)
には、六坪ほどの庭があるのだ。愚妻は、ここに、秩序も無く何やらかやら一ぱい植えたが、一見するに、すべて失敗の様子である。
失敗園
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼の幸福はごく大きかったので、ジョンドレットの
陋屋
(
ろうおく
)
でテナルディエ一家の者らとの意外な恐ろしい遭遇も、心にあまり打撃を与えなかった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは根岸
御行
(
おぎょう
)
の松に住んでいた頃の物語であるが、ある日立派な侍が沢山の進物を供に持たせ北斎の
陋屋
(
ろうおく
)
を訪ずれた。
北斎と幽霊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
眼の下には
遮
(
さえぎ
)
るものもなく、今歩いて来た道と空地と新開の町とが低く見渡されるが、土手の向側は、トタン
葺
(
ぶき
)
の
陋屋
(
ろうおく
)
が秩序もなく、
端
(
はて
)
しもなく、ごたごたに建て込んだ間から湯屋の
烟突
(
えんとつ
)
が
屹立
(
きつりつ
)
して
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それは
曙
(
あけぼの
)
と幼年と青春と喜悦との作用である。そして新たな土地と生活も多少それを助ける。
陋屋
(
ろうおく
)
の上に映ずる美しき幸福の影ほど快いものはない。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
先方の
宛名
(
あてな
)
は、小坂吉之助氏というのであった。
翌
(
あく
)
る日、眼光鋭く、気品の高い老紳士が私の
陋屋
(
ろうおく
)
を訪れた。
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すなわち、ジョンドレットの
陋屋
(
ろうおく
)
のこと、
防寨
(
ぼうさい
)
のこと、ジャヴェルのこと。それらの疑問からはいかなる事実が現われてくるか見当がつかなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私の家は
三鷹
(
みたか
)
の奥の、ずっと奥の、畑の中に在るのであるが、ほとんど一日がかりで私の
陋屋
(
ろうおく
)
を捜しまわり、やあ、ずいぶん遠いのですね、と汗を拭きながら訪ねて来る。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その恐ろしい
陋屋
(
ろうおく
)
のうちの怪物どもの間に、神聖なる彼女を見いだそうとは、夢にも思いがけないことだった。彼は
蟇
(
がま
)
の間に
蜂雀
(
ほうじゃく
)
を見るような気がした。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そうして私の
陋屋
(
ろうおく
)
を、焼き払い、私たち一家のみなごろしを企てるかもわからない。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
読者の知るとおり、彼はジョンドレットの
陋屋
(
ろうおく
)
の中で、他の悪漢らとともに捕縛された。ところが、悪徳も時には役に立つもので、泥酔のために助かった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
数日後、大隅忠太郎君は
折鞄
(
おりかばん
)
一つかかえて、三鷹の私の
陋屋
(
ろうおく
)
の玄関に、のっそりと現われた。お嫁さんを迎えに、はるばる北京からやって来たのだ。日焼けした
精悍
(
せいかん
)
な顔になっていた。
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ジョンドレットの
陋屋
(
ろうおく
)
におけるあの事件は果たしてどういうことであったろうか。警官がきた時、なぜあの男は訴えることをせずに逃げ出してしまったのか。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
昨年の九月、僕の
陋屋
(
ろうおく
)
の玄関に意外の客人が立っていた。草田惣兵衛氏である。
水仙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そしてどこかの
陋屋
(
ろうおく
)
のうちにも、まだ世に知られないが将来忘れらるることのないあるフーリエがいた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
夜、戸石君と二人で、三鷹の
陋屋
(
ろうおく
)
に訪ねて来たのが、最初であったような気がする。戸石君に聞き合せると更にはっきりするのであるが、戸石君も
已
(
すで
)
に立派な兵隊さんになっていて、こないだも
散華
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
森林にあっては、身を隠す者は、獰猛で粗野で偉大で、一言にして言えば美しい。両者の巣窟を比ぶれば、野獣の方が人間よりもまさっている。洞窟は
陋屋
(
ろうおく
)
よりも上である。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私は、それを真剣に読む。よくないのである。その紙に書かれてある戦地風景は、私が
陋屋
(
ろうおく
)
の机に頬杖ついて空想する風景を一歩も出ていない。新しい感動の発見が、その原稿の、どこにも無い。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その
陋屋
(
ろうおく
)
は土蔵造りであって、一八四五年にはなお残っていたが、読者の既に知るとおり、三つの
室
(
へや
)
から成っていて、どの室もみな裸のままの
露
(
あら
)
わな壁があるばかりだった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
おとといの晩はめずらしいお客が三人、この
三鷹
(
みたか
)
の
陋屋
(
ろうおく
)
にやって来ることになっていたので、私は、その二三日まえからそわそわして落ちつかなかった。一人は、W君といって、初対面の人である。
酒ぎらい
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ところがある日、一の
噂
(
うわさ
)
が町にひろがった。その
陋屋
(
ろうおく
)
の中で民約議会員
G
(
ゼー
)
に仕えていた牧者らしい若者が、医者をさがしにきたそうである。年老いた悪漢はまさに死にかかっている。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
すみません、と軽い口調で一言そっと、おわびをなさい。君は、無智だ。歴史を知らぬ。芸術の花うかびたる小川の流れの起伏を知らない。
陋屋
(
ろうおく
)
の半坪の台所で、ちくわの夕食に馴れたる盲目の鼠だ。
HUMAN LOST
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ふたりがジョンドレットの
陋屋
(
ろうおく
)
を見舞ったのは、ちょうどそういう時だった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
恋人らのすべては無にすぎない。そして、父親のこと、現実のこと、あの
陋屋
(
ろうおく
)
、あの盗賊ら、あの事変、それらが何の役に立つか。またその悪夢が実際起こったことであるとどうして確言できよう。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼はそこに少しの畑地と、一つの
陋屋
(
ろうおく
)
、
巣窟
(
そうくつ
)
を持っていると言われていた。隣人もなく通りすぎる人もなかった。彼がその谷合いに住んでいらい、そこに通ずる一筋の小道は草におおわれてしまった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
陋
漢検1級
部首:⾩
9画
屋
常用漢字
小3
部首:⼫
9画
“陋”で始まる語句
陋巷
陋
陋劣
陋習
陋態
陋居
陋醜
陋劣漢
陋室
陋策