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逼塞
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ひっそく
ふりがな文庫
“
逼塞
(
ひっそく
)” の例文
考えてみると、足利家の門の繁昌も、赤橋守時が執権中だけのことで、そのごは守時の
逼塞
(
ひっそく
)
と共に、高氏も不遇な方にちがいなかった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たしかに、綱宗が
逼塞
(
ひっそく
)
を命ぜられたときは、酒井忠清と一ノ関との密約を知って、事を荒立てず「未然に防ごう」という方針をとった。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは重吉の持つ得意先の三軒の醤油屋のうち二軒までが関西の商人にかけ倒され、ほとんど同時に
逼塞
(
ひっそく
)
していったのであった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
自分は六条に住んでいる
与兵衛
(
よへえ
)
という米屋の娘で、商売の手違いから父母はことし十五の妹娘を連れて、
裏家
(
うらや
)
へ
逼塞
(
ひっそく
)
するようになり下がった。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は、苦々しい憤りに胸が
逼塞
(
ひっそく
)
して、廊下に籠めた静かな薄闇を大きな息で吸ひ込み乍ら、部屋へ戻つて来るのであつた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
天理教の踊りがピッタリ
逼塞
(
ひっそく
)
してしまうと、勝川おばさんの逼塞も本ものになって、手も足も出なくなってしまった。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
翌三十日朝、霧社駐在隊は兇蕃をマヘボ、ボアルンの奥地に
逼塞
(
ひっそく
)
させるために、能高越え、ビヤナン越え方面の討伐隊と連絡をとりながら前進した。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
先頃銀行の方が不首尾になってから
逼塞
(
ひっそく
)
していたが、父親の成功が
略〻
(
ほぼ
)
確定すると共に料簡は再び軌道を脱していた。
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
なるほどいずれも相当にしたい
三昧
(
ざんまい
)
をし尽した報いで、こんな狭い天地に
逼塞
(
ひっそく
)
はしているけれど、以前を言えば駒井の上に出でるものはいくらもある。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
食うや食わずで
逼塞
(
ひっそく
)
している俺の両親は、俺の成業を首を長くして待っているのだ。ここを追われると、俺のこの身体で食っていくことさえ
覚束
(
おぼつか
)
ない。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
浅井は商業に失敗して、深川の方に
逼塞
(
ひっそく
)
しているその伯父と一度会見すると、こっちから
逆捻
(
さかね
)
じを喰わして、少しの金で、事件の片がぴたりついてしまった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いよいよ彼を
逼塞
(
ひっそく
)
させるべく、積極的にやり出されたそうで、田沼が盛り返すか失脚するかは、ここ数日、長くて一、二ヵ月、そこまでせり詰まっているそうじゃ
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「すき好んで
逼塞
(
ひっそく
)
しているわけじゃないが、先立つものは金でな、やむを得ず、苔を生している」
顎十郎捕物帳:03 都鳥
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
住まいはつい向こう横町の
裏店
(
うらだな
)
でござりまするが、働き盛りの
父御
(
ててご
)
がこの春ぽっくりと他界いたしましてからというもの、見る目もきのどくなほどのご
逼塞
(
ひっそく
)
でござりましてな
右門捕物帖:25 卒塔婆を祭った米びつ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
老中水野忠邦の罷免せらるると共に、簡堂もまた罪を得て小普請に入り
逼塞
(
ひっそく
)
せしめられた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうしなければ、その土地の住民は胸を割ってみせないであろうし、むろん事あれかしと
覗
(
うかが
)
っていたオロシャは
逼塞
(
ひっそく
)
しないであろう。——そして、これは彼の予想の通りであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
大酒
(
たいしゅ
)
のために一家分散して昨今は博多瓦町の町外れ、万延寺境内に
逼塞
(
ひっそく
)
し、福岡博多の町々を徘徊して物を貰い、又は
掃溜
(
はきだめ
)
を
漁
(
あさ
)
りながら行く先々の妙齢の娘の名前、年齢、容色、行状
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ふだんの繁劇な都会の
濠川
(
ほりかわ
)
の人為的生活が、雪という天然の威力に押えつけられ、
逼塞
(
ひっそく
)
した
隙間
(
すきま
)
から、ふだんは聞取れない人間の哀切な
囁
(
ささや
)
きがかすかに漏れるのを感ずるからであった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
このごろ田舎に
逼塞
(
ひっそく
)
しているからですよ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
玄察は重おもしく首を振った、「いや、そうではない、三月の出来事は万治の大変につながっている、綱宗さまに対する
逼塞
(
ひっそく
)
の沙汰が、 ...
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かれは高い山の
頂
(
いただき
)
へついた時のような呼吸の
逼塞
(
ひっそく
)
をおぼえだした。指をやらなくても感じられるくらい、乱れた脈を
搏
(
う
)
っていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その以前の浪花節は専ら場末の寄席に
逼塞
(
ひっそく
)
して、聴衆も下層の人々が多かったのであるが、次第に勢力を増して来て
寄席と芝居と
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お庄らが
母子
(
おやこ
)
の仕事として、ひっそりした下宿を出そうと思いついたのは、この事務所を畳んでから、一家が丸山の隣の小さい借家へ
逼塞
(
ひっそく
)
してからであった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
時々
下職
(
したじょく
)
が註文をうけに来ていた。連合は開港場の横浜で手びろくやっていた、派手な商館相手の商人だったが、おしょさんのために
逼塞
(
ひっそく
)
したということだった。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
これは、本来の目的がはずれて、まぐれ当りに神尾にぶっつかり、神尾の方でも、また
逼塞
(
ひっそく
)
の生活にいいかげん退屈しているのを
機会
(
しお
)
に、がんりきを頼んだものと見える。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
爾来
(
じらい
)
徳大寺大納言様には、ご
逼塞
(
ひっそく
)
のごようすでございますなあ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逼塞
(
ひっそく
)
をゆるされて、源七郎がひさかたぶりに屋敷の門をひらいた日のことである、まえぶれもなく、竹岡兵庫がおとずれて来た。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ああ敗辱か! ついに武名隆々であった松平忠房の誇りも、玄蕃が三尺の木剣のために
逼塞
(
ひっそく
)
せしめられたのであろうか?
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
踊りや
長唄
(
ながうた
)
を、そのころ愛人の
鹿島
(
かしま
)
と一緒に、本郷の講釈場の路次に
逼塞
(
ひっそく
)
し、辛うじて芸で口を
凌
(
しの
)
いでいた、かつての新橋の
名妓
(
めいぎ
)
ぽん太についてみっちり仕込まれたものだったが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
栃木の大中寺に
逼塞
(
ひっそく
)
の神尾主膳は、このごろは昔と打って変った謹慎の
体
(
てい
)
であります。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
経済方面にて忽ち
逼塞
(
ひっそく
)
。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「伊達むつの守、かねがね不作法の儀、上聞に達し、不届におぼしめさる、よってまず
逼塞
(
ひっそく
)
まかりあるべく、
跡式
(
あとしき
)
の儀はかさねて仰せいださるべし」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼のために
左遷
(
させん
)
させられたり
逼塞
(
ひっそく
)
したものもずいぶんあったが、すべて彼の「私なき心」には怨む声もなく、かえって孔明の死後には、そうした人々までが
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寺へ、
逼塞
(
ひっそく
)
して、ひとたび心の洗濯もしてみたけれど、額に残る淫眼の傷は拭えども去らず、消せども消えず、それを見るたびに神尾が、怒りつ、
焦
(
じ
)
れつするのもまた無残なるものであります。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
以前はかなりの船持ちであったという磯野の叔父はもと妾であった女と一緒に、そのころそこに
逼塞
(
ひっそく
)
していた。下谷で
営
(
や
)
っていた待合も
潰
(
つぶ
)
れて、人手に渡ってから、することもなく暮していた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さらにさかのぼって、陸奥守綱宗を、ほとんどこじつけに等しい理由で
譴責
(
けんせき
)
し、これに
逼塞
(
ひっそく
)
を命じたのはなぜか。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし、すでに寸断され、また
逼塞
(
ひっそく
)
した宮方の残党勢力とは、どうにも連絡のとりようがない。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
株屋の某はそれからそれへと
棄
(
す
)
てがたい女が出来、そっちこっちに家をもたせておいたが、転落して裏長屋に
逼塞
(
ひっそく
)
する身になっても、思い切って清算することができず、身の皮を
剥
(
は
)
ぎ
酷工面
(
ひどくめん
)
しても
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
公儀から
逼塞
(
ひっそく
)
を命ぜられているので、現職の老臣が会うことは、違法に問われはしないか、というのであった。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
盟主はもちろん西園寺ノ
公宗
(
きんむね
)
卿で、
卿
(
きょう
)
の手から持明院殿(花園上皇)の
院宣
(
いんぜん
)
を申しうけ、おなじ
逼塞
(
ひっそく
)
なかまの公卿どもをもかたらって、事はもう寸前の機までに熟している。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「井伊家で逃がすとは思わなかった、白川侯の
睨
(
にら
)
みが利いている、田沼との関係で
逼塞
(
ひっそく
)
している状態だから、よもやそんな勇気はないだろうと思ったのだ」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
曹操の専横はやまず、魏臣の無礼、朝臣の
逼塞
(
ひっそく
)
、
朝
(
ちょう
)
はあってなきが如きものだった。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逼塞
(
ひっそく
)
になった綱宗は、亡き忠宗の六男であった。長男の虎千代は七歳で
夭折
(
ようせつ
)
、二男の光宗は十九歳で死んだ。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もう
矢弾
(
やだま
)
も来ない。まさに城兵は
逼塞
(
ひっそく
)
したとみえる。光秀はかたわらを顧みて
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
立花飛騨守の室は、綱宗の姉のなべ姫で、伊達家とは近い親族に当っており、綱宗の
逼塞
(
ひっそく
)
このかた、殆んど絶えまのない紛争に、いつもわずらわされて来た。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
四境の武門は、
風
(
ふう
)
を
望
(
のぞ
)
んで、われがちのように船上山の御所へのぼって随身の誓いをささげた。——いわゆるものの勢い——これを見ては寄手の弓矢が
逼塞
(
ひっそく
)
してしまったのもむりではない。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いちどは、さきの
陸奥守
(
むつのかみ
)
に
逼塞
(
ひっそく
)
のお沙汰のあったとき、次は亀千代家督の礼に、献上の使者を勤めたとき、前後二度、
大城
(
たいじょう
)
において、おめどおり致しました」
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何しろ、これまでは、いわゆる大覚寺統の——後醍醐方の公卿と
忌
(
い
)
まれて——
逼塞
(
ひっそく
)
していた公卿ばらも、みな旧衣冠を新たに着けて、どこからともなく、ぞくぞくここに参集していた。よくいう
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軍令にそむいた罪は重い、かれはその場で帯刀をとられたうえ、ただちに彦根へ
逼塞
(
ひっそく
)
を命ぜられた。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
尊氏はさらに、都のすみに
逼塞
(
ひっそく
)
していた
前
(
さき
)
の左大臣近衛経忠をさがし出させて、なにかと、
輔弼
(
ほひつ
)
の任を、このひとに嘱した。すべてそろそろ次代の朝廷づくりのしたくであった。——これをである。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“逼塞”の解説
逼塞(ひっそく)は、江戸時代に武士または僧侶に科せられた刑罰。門を閉ざし昼間の出入りを許さないもの。閉門より軽く50日間と30日間の2種類があった。
普通名詞としては、世間から隠れてひっそりと暮らすことを意味する。
蟄居>閉門>逼塞>差控
(出典:Wikipedia)
逼
漢検準1級
部首:⾡
13画
塞
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“逼”で始まる語句
逼
逼迫
逼息
逼仄
逼真