追分おひわけ)” の例文
もつと小石川こいしかは白山はくさんうへ追分おひわけのあたりより、一圓いちゑん高臺たかだいなれども、ひかりうすければ小雨こさめのあともみちかわかず。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二人ふたり追分おひわけの通りを細い露路ろぢに折れた。折れるとなかいへが沢山ある。くらみち戸毎こごとの軒燈が照らしてゐる。其軒燈のひとつの前にとまつた。野々宮は此奥にゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
輕井澤から中山道を自動車で沓掛くつかけ古宿ふるじゆく借宿かりやど、それから追分おひわけと、私の滯在してゐる村まで歸つてきたが
高原にて (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
ちなみに言ふ、追分おひわけには「吹き飛ばす石は浅間あさま野分のわきかな」の句碑あるよし。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
近江の追分おひわけなどが我我われわれ二等客の選手のいうなるものであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
お專にはなし早々御駕籠かごすぐに願はんといふにお專はいた打喜悦うちよろこび天へも登る心にてそんなら是より些少ちつともはやくとすぐに與惣次と同道なし中仙道の追分おひわけへ出て聞けば明日は當驛たうえき晝御膳ひるごぜんなりと言ふゆゑ與惣次お專は漸々やう/\むね落付おちつけねがひ書を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あはれ、その追分おひわけのふし。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それだから追分おひわけ何時いつでもあはれにかんじらるゝ。つまるところ卑怯ひけふな、臆病おくびやう老人らうじん念佛ねんぶつとなへるのと大差たいさはないので、へてへば、不殘のこらずふしをつけた不平ふへい獨言つぶやきである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
い具合に三四郎は追分おひわけまがるべき横町のかどに立つてゐた。かねはとう/\かへさずにわかれた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
じやからかさ脊筋せすぢさがりにひつかつぎたるほどこそよけれ、たかひくのみちの、ともすれば、ぬかるみのはねひやりとして、らぬだにこゝろ覺束おぼつかなきを、やがて追分おひわけかたいでんとして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
然し敢て買はなかつた。杉垣に羽織の肩がさわる程に、赤い提燈をけて通した。しばらくして、暗い所をはすに抜けると、追分おひわけとほりた。かど蕎麦そば屋がある。三四郎は今度は思ひ切つて暖簾のれんくゞつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
料理屋れうりや萬金まんきんまへひだりれて眞直まつすぐに、追分おひわけみぎて、むかうへ千駄木せんだぎいたる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)