踏臺ふみだい)” の例文
新字:踏台
「念のためだ、お勝手から踏臺ふみだいを持つて來て、欄間をよく調べて見てくれ。其處は大抵ほこりの多いところだ、子供でも猿公でも、這ひ出せばあとが殘る筈だ」
半分はんぶんたあとが、にしてざつ一斤入いつきんいれちやくわんほどのかさがあつたのに、何處どこさがしても、一片ひときれもないどころか、はて踏臺ふみだいつてて、押入おしいれすみのぞ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宿の下足番が足場のいゝやうに置いてくれた木の踏臺ふみだいを下りた時、私は、氣づかはしく四邊あたりを見まはした。
面白おもしろ床屋とこやがそこへ出來できました。腰掛こしかけはおうち踏臺ふみだいひ、むねけるきれおほきな風呂敷ふろしきひました。床屋とこやをつとめる伯父をぢさんのはさみは、祖母おばあさんたち針仕事はりしごとをするとき平常ふだん使つかはさみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いま一個いつこひとあり、車臺しやだいして、右手ゆんで柄子とりでにぎつて旋廻輪せんくわいりんまわしつゝ、徐々じよ/\足下そくか踏臺ふみだいむとたちまかたはらそなへられたる號鈴器がうれいきはリン/\として、下方かほう軸盤じゆくばんしづかに回轉くわいてんはじむるととも
傅次郎は背が低いから、踏臺ふみだいでもしなきやあの節穴へ眼は屆かない、——それに塀の下は直ぐどぶだ。
床几しやうぎ——といふところだが、(——親類しんるゐいへで——)用意よういがないから、踏臺ふみだい嵬然くわいぜんとしてこしけた……んぢや、とわらつて、當人たうにんわたしはなした。夫人ふじんおよ學生がくせいさんがたには内證ないしようらしい。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
部屋の中には何んにもありませんが、たつた三尺の押入を開けると、何時持込んだか踏臺ふみだいが一つ。
平次はそんな事を言ひ乍ら、念入りに四方を見廻して居りましたが、小型の天水桶の上へヒヨイと登ると、それを踏臺ふみだいに、二階の庇の上へ、何んの苦もなく飛移りました。
「大概見當は付いたつもりだ。——その踏臺ふみだいを持つて來て、春松の寢て居た二階の下の部屋の、押入寄りの隅へ置いてくれ。そして、お前は其邊を見張つて居るのだ、宜いか」
踏臺ふみだいをして覗いて見ると、高い鴨居には、如何いか樣扱帶を通したらしくほこりを拭き取つた跡もありますが、中氣の老人が、危なつかしい踏臺をして、此處へ扱帶を通すといふことは
二人は裏口の側の天水桶てんすゐをけ踏臺ふみだいにして、あまり苦勞もせずに塀を乘り越えました。
そこで喜助は自分の身體を踏臺ふみだいにして金之進に塀を乘越すやうにすゝめた。
平次は二本燈心の行燈を引寄せて、踏臺ふみだいの上に腰を掛けました。廣々としたお勝手は念入りにみがき拔かれて、ちり一つない有樣、十七年間忠勤をぬきんでたといふ、お越の働き振りが思ひやられます。
「成程そいつは少し變だな。踏臺ふみだいでもなかつたのか」
「ガラツ八、其踏臺ふみだいを持つて來てくれ」
踏臺ふみだいは元から此處にあつたのか」
「それに、伊太郎の傷は前から突いた傷だが、照吉は後ろから大袈裟おほげさに斬られてゐる。背の方が深く斬下げられて居るし、前は刄先が淺いから、こいつは間違ひはない。こんな具合に前から斬るためには、踏臺ふみだいでもしなきやなるまい」