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耳許
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みゝもと
「え、え、」と、
小さな
咳を、
彼方の
其の
二階でしたのが、
何故か
耳許へ
朗らかに
高く
響いた。
道々も一
分の
絶間もなく
喋り
續けて、カフカズ、ポーランドを
旅行したことなどを
話す。
而して
大聲で
眼を
剥出し、
夢中になつてドクトルの
顏へはふツ/\と
息を
吐掛ける、
耳許で
高笑する。
春の
夜ながら
冴えるまで、
影は
草を
透くのである。
其の
明が
目を
射すので、
笠を
取つて
引被つて、
足を
踏伸ばして、
眠りかける、とニヤゴと
鳴いた、
直きそれが、
耳許で、
小笹の
根。
春の
夜ながら
冴えるまで、
影は
草葉の
裏を
透く。
其の
光が
目へ
射すので
笠を
取つて
引被つて、
足を
踏伸ばして、
眠りかけるとニヤゴー、
直きそれが
耳許で、
小笹の
根で
鳴くのが
聞えた。
口の
端むず/\するまで
言出だしたさに
堪ざれども、怪しき婦人が予を
戒め、人に
勿謂ひそと謂へりしが
耳許に残り
居りて、
語出でむと欲する
都度、おのれ忘れしか、秘密を漏らさば
それかあらぬか、
昨夜は
耳許でニヤゴ/\
啼いて、
其のために
可厭な
夢を
見た。
旅僧は
年紀四十二三、
全身黒く
痩せて、
鼻隆く、
眉濃く、
耳許より
頤、
頤より
鼻の
下まで、
短き
髭は
斑に
生ひたり。
懸けたる
袈裟の
色は
褪せて、
法衣の
袖も
破れたるが、
服裝を
見れば
法華宗なり。